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謎の少女:ソルの視点

 ナナリー先生の指示に従いながら街を巡る。


 街道を歩けば至る所に噴水や水路を見る事ができる。

 雨の後でもないのに空に掛かる七色の橋。

 それは天へと放射された水の柱が造り出したモノだ。

 事前に聞いていた水の都。

 村には無い初めての光景に心を奪われる。

 それはルナも同じ様で、


「凄く綺麗だね、ソル!」


 稀に見る眩しいくらい素直な笑顔。

 クククッ、とかいうウザい定型句が含まれていない。

 興奮しすぎて闇の眷属設定を完全に忘れているが突っ込まないでおこう。

 気付いたらまた面倒くさい性格に逆戻りだ。

 普段のままでいれば可愛いのにと思うのは俺の正直な気持ち。


 というか俺達の村にはそういう女の子が多い。

 口、いや行動さえしなければ誰れ彼も美人な部類に入ると思う。

 とんでも女子にはルナ然り、ソフィア然り、リルア然りで大分慣れている。


 その点で言えばナナリー先生はまともだと思う。

 時々、頭を抱える様にして、駄目だ私、とか呟く事を除けばだけど。


 残念女子達を思うより今は散策を楽しもう。

 そういえば武術大会が開かれるのか人通りが多い気がする。

 新参者の俺達にはよく分からないけどいつもの日常とは違う風景なのだろう。

 

 小太りのおじさんが誰が優勝するのかとクジを売り歩いている。

 本命はティアと呼ばれる女騎士らしい。

 さっき盾のおじさんが言っていたのがそうなのかな。


 予想の中に勿論ソフィア達の名前は無い。

 それを見て犬歯を剥いて歯ぎしりするソフィア。

 この人、精神的に成長しているのかな。

 俺達が幼い頃から変わってない気がする。

 

 呼び込みをしているクジ屋に忍び寄りこっそりと名前を書き換えている。

 そのクジを買った人はラッキーだろうな。

 優勝最有力候補の一人なんだから。

 先輩の大人気ない行動に半ば呆れてしまうんだけどさ。


 悪戯なのか真面目なのか小細工をするソフィアの向こうに噴水が見える。

 そこでつまらなそうに噴水の淵に腰掛ける少女が居た。

 年は俺と同じくらいだろうか。

 少し気になった俺は、


「先生、少しだけ自由行動してもいい?」

「んっ、何か行きたいところでもあるの?」

「少し街の女の子と話したいだけ」


 そう言って俺は指を指す。

 桃色の髪に少し不思議な服装をした女の子。


「意外だな。ソルって初対面の女の子に自分から話し掛けられるんだ」

「ナナリー先生とは違うし」


 先生は急に遠い目になった。

 心が何処かに飛んでいったみたいだけど、行き先も告げたし問題無いだろう。

 別に好みの女の子が居たからという理由で話し掛けるわけじゃない。


 勇者のスキルの力なのか、何かが彼女に反応している。

 危険な存在?

 そのようには見えないけど念の為だ。

 危なくなればソフィアやクリスの所に逃げ込めばいい。


 何気なさを装って少女の隣に座る。

 そして、


「き、き、き、君さ、ど、ど、ど、何処からき、来たの?」


 盛大に緊張した。

 向こうでナナリー先生がズッコケてるけどしょうがない。

 あるじゃん。

 想像では出来ると思ってたのに、本番でグダグダになるヤツ。

 冷汗を大量に滲ませる俺に少女は、


「遠い所……、以上」

「お、俺も遠い所から来たんだ」

「ふーん」

「うん」

「…………」

「…………」


 会話が途切れた。

 立ち去ろうにも、確かな痕跡を残せとちっぽけな自尊心が訴えかける。

 ポタポタと汗が滴る。

 駄目だ、ダサすぎる。

 

「貴方、強いのね」

「えぅ、わ、分かるの?」

「何となく……。警告するわ。この街から出なさい」

「どうして?」

「貴方は幼いし少しでも楽しい余生を……。この先に終末が待っていようとも」

「終末……」


 ヤバい。

 俺の幼馴染と同じ様なことを喋る残念女子だ。

 終末とか頭おかしいだろ。

 近くの屋台で買い物をするルナを見る。


「クククッ、これが最果てに存在するとされる竜の心臓か!」

「それ唯の果物だよお嬢ちゃん。しかも、最果てって何?」


 この二人を合わせてはいけない。

 ツッコミが追い付かない程に痛い言葉を連発するに違いない。

 それとなくこの場を離れる言い分を考えようとした時だった。


「あれ、居ない?」


 俺の隣に居た筈の少女が忽然と姿を消した。

 馬鹿なという思いがあったが、


「緊張しすぎて、見誤ったのかな」


 隣に居る人が離れたことにも気付かない。

 そんなことがあるのだろうか。

 それに俺は今、勇者のスキル持ちだ。

 授かった時から感覚が鋭敏になり、気配を探るなんて行為も可能となっていた。

 

「流石にそれは自惚れが過ぎるよな」


 気配を探る様なこともしていなかったし、単に気付かなかっただけだ。

 そう言い聞かせて、その場を後にする。

 取り敢えず初対面の女の子に対応は出来ない。

 それだけは胸に刻んでおこうと思う。

 

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