保護:リムルムントの視点
「これまた大所帯だね」
リルアちゃん達が連れて来たゴブリン達。
身体も心にも傷を負っているのか一様に表情は暗い。
そこに寄り添うのは村の者達だ。
傷の手当てや炊き出しなど世話しなく動く様子を見て一つ頷く。
「魔物と人の共存……。この村を作って良かったと思っていいのかな」
事の経緯はガイルから聞いている。
そしてリルアちゃんの見解も。
異世界からの使者か……。
面倒なことになったよね。
女神ちゃんが考えるより早く他世界からの侵略者が来た。
それもかなり手練れの者達だ。
一つ溜息をついた時だった。
「リルアちゃん行くの?」
「一通り準備は整ったからね」
村に駆け込んできた時にはボロボロだった服も着替え終わっている。
「幼馴染ちゃん達は大丈夫かな。大分強い奴等なんだろう?」
「いつも通りなんとかするでしょ」
「そんな楽天的な……」
「ほら。私っていつも遅れて行くことが殆どだけど二人とも生きてるし」
「そこは最初からいようよ。ヒーローのお約束なんていらないからさ」
「最初からいても多世界にリンクしないと変身できないしね」
「今はどうなんだい?」
「二つくらいは繋がってるかな」
「変身条件は満たしてるみたいだね」
「今回は新しい世界にリンクするまでは変身しないつもりだけどね」
半目でリルアちゃんを見る。
枷を作るのはいいけど早めに片付けることも覚えて欲しい。
大人の考え方をもってさ。
「今回の犯人と新しい世界って繋がりがありそうなんだよね」
「だから新規リンクを掴むまでは変身しないと?」
「多分だけど敵討ちみたいなことになりそうだから……」
「敵討ち?」
「存在が微弱なのよ。滅亡しかけている感じ?」
「侵略者達がその要因だと?」
「原因特定を含めてマキナを習得しないとね」
「だけど今から移動するんでしょ?」
「移動しながら修行する」
「えー……。何、そのマゾ行為。準備とかはどうするのさ」
「ミャンが作った大量の部品と機械兵達の残骸を使うつもり」
「それでも大量に運ぶ必要があるでしょ?」
「汎用スキルで異空間収納を覚えてから大丈夫かな。気乗りはしなかったけど」
異空間収納って汎用スキルなんだ……。
大分チートよりだと思うんだけどな。
「お陰でスキルポイントはガッツリ減ったけどね」
「では、レベルを上げましょう」
「上げません、絶対に!」
リルアちゃんの背後から小さな妖精がスッと出てくる。
俺と同じサクラと名付けられた女神からの使者。
「サクラっちの見解はどうなのさ。勝てそうなの?」
「サクラっちに対する追及は置いておくとして、勝敗については不明ですね」
「えっ、そうなの?」
「相手も変身スキル持ちのようで……。それを見るまでは何とも言えないかと」
「いつも通りよ。誰であろうと真っ向勝負で成敗する」
「相変わらずリルアちゃんは脳筋だよね。戦略とか戦術とか使えなそう」
「だ、大丈夫よ。強敵が現れたらちゃんと考えるから」
強敵が現れたらって……。
今までピンチになった経験がないから言える台詞だ。
味方としては心強いけどさ。
それも幼馴染で参謀役が居れば問題ないか。
該当者がクリスしかいないけども。
いや、ナナリーも増えたし適材適所で人材は集めて行けばいいか。
「それじゃ、村長としてゴブリン達のことお願いね」
「アスガルドの到着まで約一日ってところかな?」
「丁度、大会期間中らしいし、強者達は結構いるのが救いだと思う」
「成程。今回は一般市民が巻き込まれる確率が高そうだよね」
「ちょっとした護衛役くらいはやってくれそうだし、敵に集中したいしさ」
それとなく覚悟を秘めた感じが伝わってくる。
一応、育ての親だしね。
何を考えてるかはそれとなく分かる、ような気がする。
「無事に帰って来なよ。勿論、全員」
「任せて。ちゃんと皆、連れて帰ってくるよ」
満面の笑みで誓いを口にすると少しの風と共にリルアちゃんが消える。
どうやら出発したみだいね。
改めてゴブリンと村の皆を見る。
目に付いたのは子供達が集まる風景だ。
中心にはミャンがおり、機械仕掛けのおもちゃを持って子供達と戯れていた。
「リルアちゃんが新しい力で作ったおもちゃか……まったく」
村に到着してゴブリンの引き渡しをして、三時間弱。
休むでもなく子供達のために動いてたようだ。
子供達のために戦うヒーロー。
「今回も子供達のためにスカッと勝って欲しいもんだよね」




