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新たな声

 目の前に広がるのは白の瀑布だ。

 水蒸気の爆発。

 隙を作るため、敢えて攻撃の中心に身を晒してその場で堪える。

 それを成す為に利用した2つの力だ。


 1つはこれまでに繋がった世界を束ねたベースの力。

 その全てを纏い赤のオーラで身体全体をガードする。

 

 そして、2つは私の内に目覚めつつあるマキナの力。

 機械人形の残骸にあるコードを複数束ねて身体に巻き付ける。

 地面に縫い付ける様に大地に固定させるためだ。


 私の代わりに空へと舞い上がった機械人形を見る。

 マキナの力を使い残骸を集めて作り上げたデコイ。

 白い霧の合間の向こうでは空を見上げる敵の姿があった。

 

 狙い通りだ。

 ならば行け。

 衝撃に耐えたことにより全身ガタガタ、出血も多数見られる。

 フラつく身体。

 一歩を踏みしめると同時に身体に治癒魔法を施す。

 少しだけ活力が戻るのを感じる。

 機械人形が落とした弾薬を狙うかのように二歩目を前へ。


 ブースト。

 マキナで爆発力を増幅させた弾薬に破裂するよう指示を出す。

 

 足裏で爆発させることにより一気に得た加速力。

 視界が狭まる。

 変態と私、刹那の邂逅。

 繰り出すのはナナリーが得意とする暗殺技術。

 相手の技をパクるのは手癖が悪いっていうのかな。

 その技は女王蜘蛛から容易く心臓を抜き取った技だ。

 一度見た技は密かに朝に練習していたりする。


 奪わせてもらうわ。


 交差した瞬間、掌に握られた確かな感触。

 白の欠片に纏わりつく神経群。

 脊椎の破壊。


「やるわね」

「そっちも変態の癖にね」


 変態の背中から噴き出す赤い鮮血。

 私の肩からも同時に血の霧が噴き出す。


 変態の一撃は私の攻撃が決まった後に繰り出されたモノだ。

 不意を突かなければ相手の攻撃が先に決まり、此方の敗北が決定していた。


「相変わらずハラハラさせる戦い方ですね」

「いいでしょ? ギリギリでも勝てれば」


 背後を振り返れば倒れ伏した変態が此方を見ながらほくそ笑んでいた。

 脊髄を損傷させた影響で少なくとも下半身は動かせない筈だ。


「参ったわね。レベル差は歴然だった筈という読みだったのだけど」

「マキナの力を使わなければやられてたけどね」

「それも含めて貴方の力……。けど甘いわね」

「何が?」

「何故殺さなかったの?」

「相手を無力化すればそれでいいでしょ? 少なくとも貴方はもう戦えない」


 色々と聞きたいことがあるのよね。

 まあ、それを切り出せば大体の悪党は何らかの自爆行為をするのだけど……。

 どうしたものかと考えていると、


「聞きたいことがあるなら早くしなさい。もう私に残された時間は少ないわ」

「え? マジで? あと時間が少ないってのは?」

「敗北は死。ダーリンに刻まれた呪いが発動するのよ。私は愛だと思ってるけど」

「そんな愛はいらねぇよ……。ま、貴方が満足しているならそれでいいけどさ」


 さて、何を聞こうかな……。

 ぶっちゃけ知りたいことは山ほどある。

 

「あと、30秒ね」

「少なっ!! えっ、元の世界でアンタ達は何をしてきたの!」


 私に助けを求めて来た世界。

 咄嗟に出たのはマーシナリーの現状だ。


「マーシナリーは私達の遊び場よ……。無垢な人達を殺してね」

「っ!?」

「フフフッ、いい顔ね……。私達を倒さないとアルファも遊び場となるわよ」

「マーシナリーに生き残りは?」

「微かにいるんじゃない? 生き残ったとしても……ぐふっ!」

『肝心な所で死にましたね。お約束にも程がありますが』

「何だろう……。あんまり悲しくないのは何でだろう……」

『変態だからでは? 多少の情報は引き出せたので良しとしましょう』

「いいのか、それ……。やるべき事は決まったけどさ……」

『幼馴染と生徒の皆さんを早く追うのですね』

「その前にガイル達を村まで引率しないと……。怪我人も多いしさ」


 幼馴染は心配だが、私が来るまであの手この手耐えてくれるだろう。

 それよりも唯一、生き残ったゴブリン達を村に引率する必要がある。

 怪我人も沢山いるし、ガイル達も満身創痍だ。


『その時間も計算に入れると王国到着に要する時間は約36時間の見積もりです』

「それって全力で走った計算?」

『死の物狂いで走った結果ですね。是非とも頑張って下さい』

「走りながらマキナの修行しようと思ってたんですけど……」

『おやおやマゾの極みですね。しょうがないのでレベルアップしましょう』

「しねぇよ馬鹿! 無闇にレベル上げようとすんなし」


 確かにレベルアップすれば走る速度上がるかもだけどさ。

 相手の推定レベルは異常なのも知っている。

 魔王化すればもっと強くなるだろう。

 勇者に関しては今の私がどうあがいても傷一つ付けられないだろうな。

 けれど、


「何とかするでしょ。クリスとソフィアならさ」

『楽観的な……。頭、お花畑なんですか? 死ぬかもしれないのですよ』

「正義の味方はどんな苦境も乗り越えるのよ!!」

『えー……。根拠のない馬鹿理論じゃないですか……』

「ヒーローは一人じゃない。私は子供達のヒーローだけどさ、あの子は誰に向けてのヒーローになるんだろうね」

『それはどういう……』

「さてさて、私達も王国に向かうために準備しないとね!」

 

 鬼ごっこの時に感じた力。

 あれは異質なモノだ。

 最初はそう思っていた。

 けれど今なら分かる気がするんだよね。

 声が聞こえる。


――貴方のように直向きに夢へと向かうにはどうすればいい?


 "貴方"は私に向けられた言葉ではない。

 この物語の主人公に向けられた声だ。

 腕を失っても明るく努力し続けた少女がいた。

 今、開かれようとしているのは新たな舞台。

 たまには私も演者としてヒーローに協力してもいいかもね。

 そう思いながら私は村へと歩を進めるのだった。


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