ケットシー
ミャンに協力してもらう前に一応、魔物達の長に了承を貰っておこう。
村の北地区に到着する。
リザードマンのガイルを探すが見つからない。
日中は殆ど外に居て、誰かしらと作業をしている姿をよく目にするんだけどな。
仕方ない。
近くで遊んでいるゴブリンの子供達に話でも聞いてみるかな。
「ゴブ!」(こんにちわ)
「ゴブブ! ゴブ!」(リルアだ! こんにちわ)
小さな魔物の子は人語を喋れないので私から合わせてやる。
サクラの力により、魔物達の言語を話せるスキルは取得済み。
強くなるスキルは敬遠しているけどね。
まあ、誰かを繋ぐためのスキル取得ならいいかなと思ったりする。
レベルが上がると1ずつ増えるスキルポイント。
転生者である私のみに与えられたポイントであり、通常スキルと交換可能だ。
今、覚えているのは【魔獣語】、【木造建築技法】の二つくらい。
リムルムント村で暮らすために必要と思われるスキルしか取得していない。
後は90ポイント以上を残して放置している状態である。
「ゴブゴ!」(ありがとう)
私は礼を言ってその場を後にする。
どうやら、ガイル達は村の外へ巡回に行ってしまったようだ。
その巡回は村の安全を確保するために行うモノではない。
集落を形成する弱い魔物達の様子を見に行くための行為だ。
「弱肉強食だからね、この世は……」
弱い魔物は強き魔物に捕食される。
それを防ぐためにガイル達は周辺の調査を定期的に行っているのだ。
さらには、物資の配給もたまに行ったりする。
周囲を確認すると見慣れない農作物が育てられていることに気付く。
これは、魔物達が主食とする作物達だ。
実験段階であるため、中々にうまく行かない側面もある。
だが、収穫が成功した場合はお裾分けとして魔物の集落に持っていくらしい。
リムルムント周辺では、人族と魔物によるいざこざは殆ど発生しなくなった。
昔は物資を移動する荷車を襲う事件が多発していたが、それも無い。
人と暮らすガイル達が周囲の魔物に働き掛けているからだ。
「まずは人を理解し、いずれは共に手を取って歩んでいきたい……か」
それはガイル達の願いであり、リムルムント村は可能な限り支援を行っている。
一般的には、受け入れられない行為ではあるけどね。
王国に行けば魔物はまだまだ害獣認定されている。
今のところ、両者が歩み寄るのは難しい状況だ。
それでもいつかは……、なんて私も夢見ていたりする。
ガイルが居ないなら、しょうがない。
事後承諾になるけど、ミャンを先に見つけて手伝ってもらおうかな。
村を俯瞰出来る見張り台に登る。
猫が沢山集まる場所を探せば……、居た。
ミャンを中心に数十匹の猫が移動している。
「いたいた。相変わらずの大名行列だね」
最短の道筋を確認して、ミャンの元へ向かう。
ぶっちゃけると見張り台から、一回の大跳躍で行けるがそれはしない。
普通の村人だからね、私は。
周囲からは今更、何を言ってるんだという視線を向けられるが無視している。
日々の積み重ねが大事なんだよ。
それが、ありふれた日常へと繋がっていく。
暫く歩けばミャンの後姿が視界に映る。
「おーい、ミャーン!」
呼び掛ける私の声に猫耳をピーンと立たせたまま、少女が振り返る。
大量の煮干しっぽいモノが入った袋を抱えているけど、誰かに貰ったのかな。
ミャンは中央区に定期的に通い、店の手伝いをして報酬を得ている。
そんなことを考えつつ、私はミャンに近寄ると、
「少し協力して欲しいことがあるんだよね」
「んにゃ? リルアが私に頼み事なんて珍しい」
「実は錬金して欲しいモノが結構あるの」
「うーん、私はまだ錬金術師の卵だから厳しそうだにゃ……」
「だからだよ。修行だと思って手伝って欲しいかな。失敗してもいいし」
「うん。それなら協力するにゃし」
満面の笑みで承諾する猫耳少女の頭を撫でてやる。
気持ちよさそうにする主人を見て、周囲の猫ちゃんもにゃーにゃ―と騒ぐ。
ご主人様を少しだけ貸してね、と猫達の頭も順次撫でていってやる。
「で、何を作ればいいのにゃ?」
「うーん、言葉にすると難しいな……」
私は想定する部品を絵にしてミャンに見せる。
鉄板、ネジ、金属性の配線。
可能な限り大きさや、構造などを分かり易く描いたつもりだ。
「難しそうだにゃ……。でも、やってみる!」
「材料は私が用意するからさ。ちょっと、チャレンジしてみようよ!」
私が最初に開発を目指すモノ。
それは、モーターと電池だ。
しかも、小さい奴。
最終的に四輪駆動の電動おもちゃを作ろうと考えていた。
完成したら村の子供達にプレゼントしようと思っている。
勿論、さっきのゴブリンの子供達も例外ではない。
「じゃあ、アトリエに向かうとするにゃ」
「アトリエ?」
「外で好きに錬成できるのは師匠だけにゃ。普通は釜に材料を入れて作るにゃ」
そういえば、義手が小さな格納空間になってるんだよね。
材料の格納庫であり、錬成釜の役割を持つ義手。
いつも、好き勝手に外で錬成してるソフィアを見ていたので麻痺していた。
改めて思うと結構なチートである。
しかも、異世界から材料を勝手に採取してくるしね。
私はミャンに従い、彼女の家であるアトリエへと向かう。
錬成とマキナ。
両者共に素材から何かを組み上げる力を有している。
ミャンに協力して貰う事でマキナ習得へのヒントが得られるかもしれない。
こうして、ケットシーと人による共同おもちゃ作りがスタートするのであった。




