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始祖たる地

 村長が女神と繋がっている。

 その後、色々聞き出そうとしたがのらりくらりと躱されるだけ。

 であれば、サクラはどうなのかとその帰りを待っていた。

 最近、幼馴染の修行に付き合っているのか朝と夜しか顔を見せない。

 

 窓の外を見れば夕の色に染まり掛けている。

 夕飯の準備をしつつ、皆の帰りを待っている状態だ。

 今日は私の家で晩御飯を食べようと幼馴染やチビ達に集合をかけている。

 コトコトと煮立つ赤色のスープを眺めながら、


「今日の夜は何気に決める事とか沢山あるよね」


 ナナリーが村に移住するか否かの回答を聞くこと。

 鬼ごっこ敗北時に約束した王国への旅行の件。

 サクラと女神との繋がり、村長の存在を知っているか。


 聞くべき事を整理しているとチャイムが私を呼んだ。

 誰が先かなと玄関に向かい扉を開けると、


「クックックッ、我が僕よ……」


 ドアを閉めた。

 さて、早く皆来ないかな。

 外で、御免なさい、と叫ぶ女児の声が聞こえるが空耳だろう。

 という冗談は置いとくとして、


「皆、一緒に来たんだね」

「集団で人様の家に行く場合は、まとまって行くのが基本でしょ」

「へー、ナナリーさんって常識人なんだね」

「なんで私の方を見ながら言うかな」

「僕はソフィアの事、なんて一言も言ってないけどね」


 再びドアを開けると泣き顔のルナ、その背後を見れば既に皆揃っていた。

 家の中へ招き入れて、再び料理の準備を開始する。

 手伝ってくれるのは勿論、ナナリーだ。

 食事を準備して、簡単に雑談できるような場を作ってやる。


「早速だけど皆に発表があります」

「え? 結婚するの?」

「飛躍しすぎ、馬鹿ソフィア」


 自慢じゃないけど、転生前後で恋人が居たことなんてこれっぽっちもない。

 作るつもりとか別に無いけどさ。


「ナナリーがこの村の住人になる事が決定しました」

「若輩者だが、よろしく頼む」

「合わせてソルとルナの教師役も務める事になったからね」

「やったー! 初めての先生だ!」


 おい、先代である私の事を忘れるんじゃない。

 というか私は引退してないからな。

 新しい先生であるナナリーに群がるソルとルナ。

 上手く行きそうな感じがするし、何よりかな。

 移住と先生の件については、料理をした時にナナリーとは話済み。

 既に本人からは了承を取った上で発表している。


「親睦を深める意味でナナリーには課外学習の引率をして欲しいと思ってる」

「王国に遊びに行く、という件か」

「うん。ソフィアとクリスも一緒に行くから不便は無いと思うよ」

「リルアは行かないの?」

「皆が王国に行っている間、ナナリーの住まいを完成させる仕事があるから」

「えー、本当は行きたくないだけじゃなくて」

「資金は私から出します。村長から少し手当もあるけど、ソフィアはいらない?」

「いるいる。今言った事は謝ります、リルア先生!」


 リルア先生の言葉に辺りをきょろきょろと確認するソルとルナ。

 そんな先生いたっけ、みたいな態度を取っている。

 コイツ等、明日の授業で地獄を見せる必要がありそうだ。


 それは置いておくとして、私が同行しない理由が他にあったりする。

 新しく繋がった異世界マーシナリーの"ベース"を取得したいからだ。

 とても気掛かりな事がある。

 今までの異世界は命の息吹的なモノが感じられたが今回はそれが無い。

 まるで世界が死にかけている、そんな印象があるのだ。

 そして、世界全体で助けを求める様な声も。

 難しい顔をしていたのかサクラが私に問い掛ける。


『リルア様、少し疲れているようですね。何かあれば後で相談に乗りましょう』

「あっ、うん。大丈夫よ。少し、ボーっとしてただけだから」


 サクラも私が新しい異世界と繋がった事を察している。

 この場が滞りなく進むよう助け船を出してくれたみたい。

 サクラなりの気遣いか彼女主導で、王国旅行への計画を組み立てられていく。

 流石、情報系スキルというべきかな。

 馬車の定期便など、全ての日程を把握し、綿密な計画が組み上がる。

 一通り予定が決定するとクリスが皆に対して、


「それじゃあ、明後日出発で大丈夫? ナナリーさんも問題ない?」

「私は元々、流浪の身だ。いつでも出掛ける準備は出来ている」

「後はソルとルナが親御さんに確認するだけだね」

「大丈夫だよ、クリス。俺ん家の母ちゃんには既に言ってるからさ」


 同じ様にルナも親の同意があると言葉を重ねる。

 取り敢えず、色々と考える上で静かな環境が構築されるのは嬉しい。

 夜も深まり、チビ達もいるので割と早い段階で解散となった。

 ナナリーは今日明日はソフィアの家で世話になるらしい。

 無いとは思うけどクリスの件で喧嘩とかしないよね。


 皆が帰宅し、家の中は急に静けさを得る。

 話す準備は整っていると言わんばかりに、サクラがベットの上に腰を降ろす。


『何か話したい事があるようですね』

「単刀直入に言うわ。サクラは今、女神と繋がりがあるの?」

『誰の入れ知恵かは分かりませんが、答えはイエスです』

「何故、女神と繋がっているワケ?」

『異世界アルファは始祖たる地です。その情報を渡す役目ですかね』


 村長からの情報と被る箇所はある。

 だけど、何となく真実を言ってない気もする。


「村長が女神と繋がっていると聞いたわ。貴方は知っていたの?」

『いいえ。ですが、前々から怪しいとは感じていました』

「何故、問い詰めないの?」

『女神様からは村長の件について何も存じないと聞いています』

「ちなみに聞くけど、女神って私とサクラを転生させた人で合ってるよね」

『そうです』

「じゃあ、他にもこの世界を見ている女神が居るってことじゃない」

『アルファは始祖たる地。他の女神の干渉があっても不思議ではないです』

「その始祖たる地ってのがよく分からないのよね」

『女神達も同様です。そのための調査も兼ねているのでしょうね』


 今日、分かったのは異世界アルファが異世界における始祖にあたること。

 監視する女神が複数存在して、サクラと村長がその役割を担っていること。

 未だにアルファには解明されていない謎が多く残っていること。

 ざっくり言うとこんなところだ。


『私からも村長にアプローチを取りましょう』

「お願い。状況を把握して、村の皆が面倒事に遭遇するのは避けたいから」

『てっきり、普通の村人になるため、なんて言うと思っていました』

「一人だけ普通の人がいる村、なんて居る意味ないでしょ?」

『確かにそうですね』


 多元スキル《HERO》も始祖たる地に深い関係があるのかもしれない。

 異世界の子供達を繋ぎとめる不思議なスキル。

 その力の根源に向き合う時がいよいよ来たのかもね。

 丁度、新しく繋がった異世界もある。

 これをチャンスと考え、自身のスキルと今一度向き合ってみようと思う。


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