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学園

 村を見て周りたいというナナリーを玄関先で見送る。

 手を振るのは私と義理の父、通称エロハゲ。

 親子が並ぶ姿を苦笑しながら、ナナリーは扉を閉めた。

 村長は私を見ると、


「ぶっちゃけ、色々聞きたいことあるよね」

「ソルとルナの件?」

「そこから行こうか……。あの二人が習得したスキルって何?」

「ソルが勇者で、ルナが魔王。流石に親には剣士と魔法使いって言わせてるけど」

「これまた面倒なスキルだね。ある意味、世界は救われたわけだ」

「それは、ルナが魔王としてどう成長していくか次第だと思う」

「手綱は俺達が握っているんでしょ。先生的には今のところどうなのよ?」


 村長は私の見解を求めている。

 確かに彼等は私の生徒だ。

 特にルナは今後の世界を左右しかねないスキルを有している。

 

「いつも通りかな。痛い発言はするし、ソルと喧嘩はするしで」

「今は安心ってわけだ。でも、各国は魔王に対して過敏になってるからねぇ」

「ダンジョン攻略の件とソルとルナを見た時に、何となくは察しましたけど」

「流石だね。いつも、めんどくさがってる割に見る時は見てるよねっと」


 村長から封書を手渡される。

 御大層に四大国の印が押された立派なモノだ。

 中身は私と幼馴染二人の学園への誘い。

 優秀な人物を集めて、魔王対策でもするのだろう。


「で、どうするのさ?」

「学園にも行きませんし、勇者と魔王の件も伏せて置くつもりですけど」

「そうかぁ、村の方針もリルアちゃんに合わせるかな」

「私の案に従うんですか?」

「もう、立派な大人でしょ? 君は転生者なんだからさ、それとも自信無い?」


 それを言われるとグゥの音も出ない。

 私が転生者と知っているのは村長とサクラだけだ。

 村長については見抜かれていたので打ち明けたといった方が正しい。

 勘が鋭い人だ。

 隠し事は大体バレるので、正直に話す様にしている。

 色々と便宜も図ってくれるので伝えた方が間違いが無くて済む。


「二人の事は私がちゃんと面倒見ます」

「俺的には君だけじゃなくて、ナナリーちゃんも見て欲しいんだよね」

「急にナナリーを推すのは何故ですか?」

「立ち振る舞いから、良家のお嬢様かなって……」


 冒険者としての修羅場も潜ってるみたいだしさ、と村長が付け加える。

 何故、村長がナナリーを誘ったのかを理解した。

 経験豊かなナナリーを教師役に任命しようとしているのだ。

 ダンジョンで最初に会った時と比較すると別人なんだけどね。

 あれも一種の中二病と思えばいいのかな。


「最近、色々な人を増やし過ぎな気がするけど」

「俺にも目指す所があるのよ」

「えー、初耳。何か嫌な予感しかしないなぁ」

「そこは、お父さんに協力するよ! じゃないの?」

「はいはい。おっさんの夢は何でちゅかねー?」

「くっ、聞いて驚くなよ。俺の夢はさ……」


 村に最強の学園を作りたいんだよね。


 はあ。

 馬鹿なんだな。

 何の脈絡も無く、この発言である。

 僕が考えた最強の〇〇シリーズを思い出す。

 私も学生の頃は最強のヒーローを妄想してたけどさ。

 この地を切り開いた時も、ここに村作りたい、とか言ったんだろうな。

 変人の言う事は理解不能だ。


「何で急にそんなことを……」

「人も魔物も老若男女問わずさ、学べる場所を作りたいわけよ」

「年齢関係ないの?」

「そうそう。夢ある奴等を集めてさ、この世界の謎を解き明かしたいんだよね」


 異世界アルファには未踏領域と呼ばれる三大陸がある。

 リムルムントは優秀な冒険家だ。

 皆で学んだ知見を束ねて、未知に挑む。

 そう考えているのかもしれない。

 聞こえは良いけど、村の皆は了承してくれるのだろうか。


「皆、許してくれないと思うけどなぁ……」

「え? リルアちゃん、おっくれてるー! 皆の署名なら全部集めたからさ」

「はあ?」

「残りはリルアちゃんだけ! オーケーなら、明日から最強学園を作ります!」

「えっ? この村の皆は馬鹿なの?」

「仲間を馬鹿にしたらいけないな! 俺が集めた村人は大馬鹿野郎のみだからね」


 ちょっと待て!

 何を言ってるんだ、このハゲは。

 私は普通の村人を目指してんのに、急に海賊王を目指すノリで何か言い始めた。


「勇者魔王も仲間なワケだし、各国から有能なヤツを引き抜きまくろうぜ!」

「理解が追い付かないんですけど……」

「話の脈絡ってさ、途切れた方が面白いでしょ?」

「全然、カッコよく正当化出来てないからね!」

「えー、じゃあさ。僕も女神様の使いって言えば、納得してくれるの?」

「はい?」

「俺も女神様の使いなんだよね。この世界のさ、強者を集める担当って感じ?」


 ニヤリと村長が微笑む。

 この感じ、私のよく知っている雰囲気に似ている。

 鑑定スキルであるサクラ。

 女神と繋がりし者。


「楽しく行こうぜ。異世界アルファは全ての異世界と繋がる始祖たる地だからさ」

「どういうこと?」

「異世界はこの地から多元に広がっているってことだよ」

「まさか、義理の親が世界の秘密を知っているなんてね」

「ヒーローモノの一話目でよくあるじゃん。親が変身スーツ作ってたとかさ」

「巨大ロボとかもね」

「そうそう。それが9話目で来たノリと思ってくれれば助かるなー」

「ハッキリ言いなさい。貴方は何者なの?」

「君が普段、安心して村人となれるように遣わされた使者だよ」

「答えになってないけど」

「君の力を引き出すこと。そして、アルファの全てを結集させるのが僕の役目さ」


 その時だった。

 助けを求める声が聞こえる。

 異世界アルファ、ユウナ、ヴォイドに続く四つ目の世界。

 多元スキル《HERO》が私の心に新たな異世界の名を刻んでいく。


 その世界の名はマーシナリー。

 ベース"マキナ"によって育まれた『機械』を司る異世界だ。


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