村長
幼馴染が利用した謎の力。
まだ未完成だと言って、その詳細は教えてくれず。
その教師役であるサクラは勿論、語るわけも無く。
結果として、初の鬼ごっこ敗北だ。
チビ勇者魔王の二人を王都に連れていかなければならない。
私にとって色々とモヤモヤが残った一日だった。
そんな鬼ごっこから丸一日が経過。
朝のトレーニングを済ませて家に帰宅すると玄関前に人影が見える。
村長とナナリー。
珍しい組み合わせだなと思いつつ、
「リルアちゃん! チィース!」
「ハゲ……村長、何でウチの前に? まさか、若い子を連れて……」
「親に対して開口一番にハゲって酷くない? 若い子好きだけどさ」
「リルアと村長さんは親子関係だったのか?」
「義理だよ、義理。昔、森で私を拾って育ててくれたっていうかさ……」
「まさか、捨て子だったとはな」
「うーん、まあ、そんなところ……」
女神に転生させられて目覚めたら、赤子の状態で森の中に居た。
酷いなと思いつつも、初期レベルが20。
すぐに死ぬことは無いと、森の中をハイハイしてたら村長が私を見つけたのだ。
「ビックリしたよね。威風堂々とハイハイする赤ちゃんが森の中にいてさぁ……」
「はあ……」
「あんまこの話乗り気じゃない? そんじゃ本題に入ろうか、家に上がってよ」
「一応、私の家なんだけど……」
二人を居間まで招き、飲み物を出す。
取り敢えず、早めに何しに来たのか聞いとくか。
村長は放っておくと関係ない話を始めるからね。
「どうして、二人でいたわけ?」
「リルアちゃんなら分かるじゃん? 俺が欲しがりなの」
「いつものヤツね。有能な人材が居たら誰彼構わず、村に招くよね……」
「そうなのか?」
「そうそう。昨日の件、村の皆に聞いてさ、ナナリーちゃん欲しくなったわけ」
要は鬼ごっこ中だったナナリーの噂を仕入れたってこと。
ハゲのおっさんが若い子欲しいを連発するのはどうなんだろうか。
悪い人じゃないのは確か。
それなりに理由があって誘ってるとは思うんだけどね。
「どう? おじさん達と村を盛り上げる気ない?」
「いや、私は追われている身で。皆に迷惑を……」
「えっ、誰に? ちょっと、リルアちゃん懲らしめて来てよ!」
「軽いノリで言うな。誰かも分からないのに」
「全く、こんな可愛い子が悪い事するわけないって」
「それに私は無一文だ。家を借りるお金も無い……」
「じゃあ、何でこの村に来たの?」
「それは……」
顔を赤らめてモジモジするナナリー。
あー、察した。
ダンジョン攻略時に既に病に掛かってましたわ。
恋の病に。
「クリスが私のご飯を食べたいというから、作りに……」
「純情少女じゃん! おじさん、やっぱ君欲しいわ」
「いや、だからお金が……」
「そんなの要らないよ。ウチの村は今じゃなくて、未来に何をくれるかだからさ」
「未来?」
「そうそう、ぶっちゃけ思ったんだよね。初めて見た時、諦めてるなってさ」
「私が……諦めている……」
「一応、村長だし、何百人も見て来てるからさ。何となく分かんだよね」
ハゲのおっさんが満面の笑みを浮かべる。
まるで少年のような笑顔だ。
色々と眩しすぎる。
「若いのに、達観は駄目だよ。人生貪欲に生きないとさ」
「しかし……」
「過去に何かあったらとかさ、些細なことだ。若い子に限定するけどね」
好きなことをすればいい。
好きな奴がいれば、一緒にいたいと我が儘になろうよ。
村長は捲し立てるように言葉を並べる。
昔から欲望に忠実な人だ。
魔物を村に迎える時も、君達が欲しい理論で無理矢理に周囲を捻じ伏せた。
本当は深い考えがあるのだろう……と信じたい。
この村は明るいハゲの村長で半分周っている。
昨日、北地区に居たのも困った事は無いかという巡回の一環だろう。
一緒にゲームしたり、農業を手伝いながらだとかただ話すという行為はしない。
話す、話したい相手の目線にいつも降りて来てくれる。
皆、ハゲ呼ばわりしてるけど基本は大好きなんだと思う。
「結論言うとさ、楽しく生きようぜ! って感じ。ウチでそれ見つけるのが対価だ」
「対価?」
「そう、見つけなよ。そんな誰からか逃げる様な日々は止めてさ」
「有難うございます。少し考える時間を下さい」
「うん、いいよ。期間は今日一杯ね」
「えっ? 短くないですか?」
「迷ってる相手を押し切るにはどんどん懐に飛び込まないと!」
ハゲがバチンとウィンクする。
気持ち悪い。
まあ、私を助け船も出すとしよう。
「もしナナリーが村に住むなら、家造るの私だからタダでいいよ」
「本当か?」
「私が原因で連れて来て、村に住みたいって人は私が家を建築する決まりなの」
誰かに追われているという過去。
恐らくナナリーを邪魔する理由はそれだろう。
この村にとっては関係ない。
一騎当千レベルの村人が何人か隠れているしさ。
東西南北、怪しい奴が来たら誰かしら対応出来るという謎の村だ。
要塞化した城よりもタチが悪いまである。
まだ若干の迷いが見えるけど、仕方ない。
払拭してやるか。
「チビちゃん達を私の代わりに王国に遊びに行かせくれる? それがお駄賃」
「分かった。それも含めて今日の夜にでも回答をだそう」
「まあ、自分の心に従って答えを決めてよ。ウチの村は寛容、テキトーだから」
ハゲが横で小躍りしているが無視する。
恐らく村に住み着いてくれるという村長なりの直観があったのだろう。
イクスクルードダンジョン攻略組。
最初に村仲間になったのはナナリーだったか。
新しい友達が増えるのは何だかんだ嬉しい。
特に幼馴染にとっては、珍しく同い年で実力も近いモノがある。
村長が中心になり、村人はどんどん増えていく。
そういえば忘れてたな、村長の名前を伝えるの。
名前はリムルムント。
かつて、未踏領域であったこの地を切り開いた存在。
各国では伝説の冒険家とも呼ばれている。
少年のようなハゲたおっさんは、何気にこの世界の英雄だったりするのでした。




