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鬼ごっこ(北地区)

 リムルムント村の北地区。

 高目の柵がチラホラと散見され、他の場所とは毛色が違う。

 柵を超えて見えてくるのは、人と魔物の営み。


 私と幼馴染は過去に、色々な事件に巻き込まれた経歴があるんだよね。

 その過程において拳で語り合った結果、懐いてしまった魔物達が複数匹いる。

 

 最初は片言しか喋れなかった魔物も人と暮らすことで言語を学んだり。

 魔物が主食とする食物を栽培してみたり。

 

 色々、実験的な試みがされている場所なのです。

 研究者気質な人とか魔物と人の共存を目指す和平主義者の人達も暮らしている。

 ここにいる人達は変態が多いことで有名だ。

 魔物については村の人達も受け入れていて、今では普通に仲間なんだけどね。


 住まう地区を分けたり、高い柵を用意しているのは来訪者に配慮しているから。

 これらの施策は人からではなく、魔物達から提案された案だ。

 ちょっと村にお邪魔して魔物がいたら面喰らうでしょ。

 ナナリーもやはり、そういった反応をするわけで。

 

「おい! 村に魔物がいるぞ!」

「気にしなくていいよ。彼等は仲間だからさ」

「エロハゲがいる!」

「本当だエロハゲだ!」

「エロ言うな、チビ共!」


 エロハゲ。

 我が村の村長。

 子供達からは親しみを込めてエロハゲと呼ばれている。

 容姿を簡単に説明するとザビエル。

 地球に存在する歴史上の人物だ。


 エロハゲと盤上ゲームを挟むのは洗練された容姿がカッコいいリザードマン。

 どうやら、村長と談笑しつつゲームをしているらしい。

 そして、二人の中立の位置に幼馴染ソフィアが盤面を険しい表情で眺めていた。

 ソフィア……、他の皆は鬼ごっこしてたのに一人だけ遊んでいるとは。

 私達の来訪に気付くと、


「やっと来たわね。待ちくたびれたわ」


 不意にソフィアとリザードマンの姿が忽然と消失する。

 気配を辿り、転移ナイフで飛んだであろう先を見た。


 北地区の見張り台で腕組みをする緑のローブを纏った少女。

 右手には既に義手が装着されおり、準備万端のようだ。

 そして、彼女の左右には四匹の魔物がいる。

 右にリザードマンが二匹、左にオークが二匹の構成。

 全員、戦う気満々に見えるのは気のせいだよね……。


「ちょっと、1対5の戦いじゃなかったの!」

「私が全員操っている、という設定だから」

「久々ですな。リルア様と戦うのは」

「拙僧、この時の為に鍛錬を重ねて参りました」

「ズルいよ! 完全に同意の元に戦おうとしているじゃないか!」


 北に向かう私を挟む様に鬼が行動を開始する。

 前にソフィア率いる魔物部隊。

 後ろにクリス率いる人族部隊。

 9対1の戦い。

 

 まずは、最も接敵している魔物四匹を相手にする。

 先頭は北区で魔物達の長を務めるリザードマン、名をガイル。

 一人称が拙僧呼びで超生真面目な性格だ。

 そのガイルを筆頭に魔物達のレベルは全員100を超えている。

 幼馴染と訓練しているらしく、出会った頃と比べかなり強くなっているようだ。

 

 先行する魔物達に対して、横並びに居たソフィアに動く気配は無い。

 何故だ、と同時に彼女の右手に握られた複数枚のカードが目に映る。

 嫌な予感がする、そう思った瞬間にそれが的中した。

 ソフィアは声高らかに一枚のカードを開示し、


「融合を発動させるわ!」


 端的に言おう。

 目の前の魔物達四体が融合して、強力な何かに生まれ変わった。 

 魔物使いとの戦いでヒントでも得たのかな。

 使い方が地球にある有名なカードゲームを連想してしまうけど。

 

 それに、合体した魔物達を何と呼んだものか。

 ガイルが長なので合体イルでいいや。

 戦隊モノにある合体ロボ的なヤツと勝手に解釈する。


 ベースはガイルのようで、彼が得意とする槍を基本とした戦いを仕掛けて来る。

 腰部にある鈴を狙った一閃。

 今日一番の速度が私に襲い掛かる。

 綺麗に右側へと攻撃を逸らすが、それは布石。

 突くと同時に身体の捻りを加えていたらしく、横薙ぎへと変化する。

 

 リザードマン特有の器用な体捌きと、オークの膂力。

 それらが合わさり、周囲一帯を轟音が切り裂いていく。

 身を屈め、その攻撃を回避すると、


「悪いけど一撃で終わらせるから!」


 確実に相手を沈めるための右ストレートを放つ。

 直撃する。

 その刹那、魔物達が再び四体に分裂した。

 同時に聞こえるのはソフィアの声で、


「甘いわ! 融合解除を発動!」

「右手が異世界で漫画でも入手したんでしょ! 戦い方が露骨するぎる!」


 まあ、融合解除は私が魔物使いに使った異世界のスキルだ。

 模倣して錬金したんだろうけどさ。

 

 それにしてもだ。

 右ストレートを空振った挙句、周囲には魔物が四人。

 そのチャンスを逃すわけも無く、空間転移でチビ二人とナナリーが出現する。

 隙間を埋める様に、ソフィアが得意とする魔剣の群れを召喚。


「逃がす気ないってことね」


 意識を集中する。

 "オーラ"を、"スピリット"を、異世界アルファのベース、"マジック"を束ねる。

 干渉可能な世界の力を融合し、身体全身に纏っていく。

 体中がカッと熱くなる。

 

「紅い、闘気……だと!」


 聞こえたのはナナリーの声。

 周囲から見れば紅の波動を放ち、私の髪色も赤みを帯びて見えている筈だ。

 村人の状態で辿り着ける最大の力。

 鑑定スキルであるサクラの見立てだと、この状態の私のレベルは……。


 ステータス換算で約500レベル、らしい。


 多元スキル《HERO》よりかは、数段劣る。

 けど、ここにいるメンバーなら無力化出来る筈だ。


「大体、皆の実力は理解出来たからね。少し、眠って貰おうかな」


 紅い闘気で周囲を束縛する。

 危ない魔剣は全て粉々に打ち砕いておきましょう。

 まるで、時が停まったかのように皆が静止状態となり、


「くっ、身体が動かせない……」

「リルア姉ちゃん、ズ、ズルすぎる……」

「それじゃ、少しだけお休み!」


 スピリットの力を強め、皆の霊体を強制的に休眠状態にする。

 バタリと地面に倒れ伏す面々。

 降り注ぐのは、同時に砕かれた剣群の粒子だ。


「さて、ソフィアとクリスはどうする?」


 二人に対して継続の有無を聞いた時だった。

 彼等二人の方から聞こえる鈴の音。

 何故ッと思った瞬間、私の周囲にあった世界がガラガラと崩れる。

 崩れ落ちた世界の後に現れたのは、いつもの日常。

 つまり、気絶した者も居なければ、戦いの形跡も無い。


 鬼達の戦果として、ソルの手には左足首に付けていた鈴が握られている。

 いつからという疑問もあったが、それより、


「二人共、ここ数日で成長し過ぎじゃない?」


 ソフィアとクリスは笑っているが大量に汗を掻き、大分疲弊している。

 恐らく、大分無茶をしたのだろう。

 クリスは額の汗を拭いながら、


「強力な相手と戦うには概念世界に取り込んだ方が早いと思ってね」

「えっ? 概念世界って何?」


 新ワードが大賢者様より生まれました。

 自分の望んだ世界を作って、相手を取り込めるってこと?

 謎技術すぎる。

 クリスの新魔法は何らかの力を持つフィールドを生み出すらしい。

 今回であれば幻影になるのか、 私にはよく分からない。

 クリスが謎空間を作成したなら、ソフィアが遂行した任務は鈴の奪取だと推測。


「私が周囲を束縛してたのは確か……。それに飛び込んだってこと?」

「そうよ、一瞬だけヒーローに匹敵するくらいの力を身に付けて突貫したわけ」


 多元スキル《HERO》に一瞬だけ匹敵。

 5000レベル級に70レベルが匹敵するとはどういうことなのか。

 村人の私が到達限界可能なレベルは500から600相当。

 それを、普通の状態で追い付くとか常軌を逸している。


 今まで言っちゃ悪いけど、そこまで幼馴染に苦戦するイメージは無かった。

 こと戦闘を含んだ勝負に関しては初めて敗北したことになる。

 二人に心服した視線を送っていると、後ろでニヤリと微笑む小さい何かがいた。

 分かっちゃったわ、私。

 後ろにいるサクラが何かしら知恵を授けたのだ

 それを、実行できる幼馴染二人も十分異常なんだけどさ。


 しかしである。

 これは、何となく心に芽生えた確信。

 近い将来、幼馴染は多元スキル《HERO》級まで昇りつめるのではないか。

 それに、将来的に有望株筆頭である勇者ソルと魔王ルナもいる。


 村人状態の私がリムルムント村で一番の実力者。

 そういった時代が終わりを告げる日がいよいよやってくるのかもしれない。


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