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鬼ごっこ(中央区その1)

 リムルムント村中央区。

 一番に目が行くのは、いつも通うカフェ"サンタマルガ"。

 それ以外にも、商いの準備をしている人達がちらほら目立つ。

 中心部は商業区であり、村の経済を動かすための大事な場所だ。


「なるべく、迷惑の掛からない場所がいいかな」


 私達が村中を舞台に暴れるのは風物詩となっている感はあるけどね。

 なんだかんだ村全体として、ノリが良い。

 だけど、少しでも被害を出した場合は罵詈雑言の嵐である。

 物凄い煽っておいて、それは無いだろと思ったことあるけど。

 それも、含めて私達の村ではお約束だったりする。

 今回もそれは変わらないようで、


「おう、朝から元気だな! これでも食っていきな!」

「あらあら、朝の賄いだけど良かったら、どうぞ」

「ノド乾いたろ、ノド! どんどん飲みねぇ!」


 ポイポイ投げられる、果物やらドリンクを手に朝食を取りながら街を進む。

 クリスやソル、ルナもいつもの日常という感じでお礼をし、受け取っていく。

 食品関係でない店の人達は軒先で開店準備をしながら声を上げて、


「今日こそ、リルアを倒してくれよ!」

「悪の権化リルアを今日こそ打つのじゃ、ワハハ」

「よっしゃ! 今日は誰に掛けますかね!」


 今まで鬼が勝利したことないので、大体の村人は私の敵となります。

 その様子に最初はナナリーも戸惑っていたけど、


「可愛らしい嬢ちゃんじゃないか! ほら、ウチの新作パンだよ!」

「す、すまない。有難く頂く」

「頑張りな! リルアは手強いよ!」


 満面の笑顔で拳を突き出すパン屋のおばちゃん。

 ナナリーもそれに答えるように拳を突き出す。

 街の人達が彼女をすんなりと迎えてくれた光景に笑みが零れる。

 その横で、お前のパン寄こせ、とか喧嘩している勇者×魔王コンビ。

 後で自分でお金を払って買いに行きなさい。

 

 皆が朝食を済ませた頃に行き着くのは噴水広場。

 街の真なる中心部に辺り、かなり開けた場所だ。

 ダンジョン攻略時に待ち合わせしたところでもある。

 朝方は人も少なめだし、暴れるには丁度いい。


 仕掛けるならそろそろだよね。

 街の人にも迷惑が掛からず、動きやすい場所。

 敢えて、このルートを選択しているんだけどさ。

 噴水広場は東西南北にある木漏れ日の道を通過して、辿り着くことができる。

 村の新緑化の一環として作られたモノだ。

 幅はとてつもなく広く、かつ巨大な木々が影を落とす涼やかな道。


 道に入るとこれまでとは違い、高速で近付いてくる二つの影があった。

 ナナリーとルナ、意外なコンビで鈴奪取を狙ってくる。

 

 取り敢えず、分かったのはナナリーがヤバい。

 気配が読みづらいのだ。

 さっきの影移動が健在で、木漏れ日の暗がりを利用して近付いて来る。

 術式と体術の組み合わせ、かつ相手の視覚系統を騙すような動き。

 闇の中とか最強じゃない? と思った時だ。


 辺りが闇に包まれていく。

 術者の正体はルナ。


「我が創造せし、闇の道に溺れるがよい!」


 魔王の力の片鱗か、痛い言葉と共に木漏れ日の道全てが闇に覆われていく。

 瞬く間に、闇のトンネルが完成する。


 そして、闇の支配と同時にルナの気配も消えた。

 天才か?

 消え方がナナリーのそれと大差ない。

 違う方法で消えたとかじゃないな。

 ナナリーの動きを一度見ただけで、スキルをコピーしたのだ。


 意識を集中させる。

 暗闇の中、朧げだが挟む様に移動する二人を捉える。

 挟撃を狙うか。

 転移による追加増援も頭に入れつつ、"オーラ"を霧状に発散する。

 感知フィールド。

 誰かが霧に触れれば、すぐに気付くことができる。


 対峙は刹那。

 私の左右に同時に出現した鬼二人。

 攻撃を交えながら、鈴奪取の機会を淡々と狙っている。


 厄介だな。

 ルナの成長がトンでもなく早い。

 ナナリーの動きを見て学んでいるのか、戦闘技術がドンドン向上していく。

 移動法も去ることながら、高速の抜き手が非常に面倒。

 これは、女王蜘蛛の心臓を抜き取った際にナナリーが使用したスキルである。


 暗殺スキル。

 無音かつ暗闇の中で相手を瞬時に殺すための技術か。

 先生として、教え子が暗殺技を覚えていく過程は如何なモノかと思ってしまう。

 ちゃんと倫理面とかも教育していかないとなあ、と思いつつ、


「大分、慣れてきたかな」


 鈴を狙った高速の手刀を二人同時に叩き落す。

 そして、作り出された闇空間に対してワンパンを喰らわせて差し上げた。

 ガラスを割るような破砕音。

 ルナは崩れゆく闇を見ながら、


「な、我が闇が破られるだと! かくなる上は!」


 右手で左目をさっと隠しながら必殺技らしき構えを取る。

 隙あり過ぎだから、お馬鹿さん。

 脳天直撃のデコピンを放つと、きゃん、とか犬みたいに転がっていく。

 私のデコピンはそんじょそこらのデコピンとは違うのだよ、デコピンとは。

 それを見ていたナナリーが、


「相変わらず、非常識ね。アンタ、何レベルくらいあるわけ?」

「今は100ちょいくらい」

「私はメモピ強化で250レベル想定の実力。力の差がありすぎじゃない?」

「オーラとスピリットで能動的に強化しているからさ」

「知らない言葉ね。ヒーローの謎技術か……。少し、興味あるかも、ねっ!!」


 ナナリーが背負っていた鞄の中身を宙に放り投げる。

 ナイフ、ボウル、スプーン、すり卸ろし板。

 宙に舞う沢山の調理器具達。


 それらが意思を持つようにナナリーの背後に集結する。

 ちょっと待て、料理スキルって戦闘に不向きな感じだと思ってたんだけど。

 不敵に微笑むナナリー。


 同時に空から沢山の食材が降って来る。

 それらをぶち撒けた張本人。

 チビ勇者ソルが声を上げながら、食材と共にナナリーと合流する。


「姉ちゃん! 言われた通り揃えて来たよ!」

「有難う。さて、ヒーロー。私の料理教室に付き合ってくれるかしら?」


 何か知らないけど、少し興味あるかも。

 私 vs ナナリー&ソル。

 さてさて、中央区の追い掛けっこ第二ラウンドを始めましょうか。


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