エピローグ③:リルア
リムルムント村の西側にある共同施設。
私はよく、その場所を借りて子供達に勉強を教えている。
村に暮らす住人として、"普通"に貢献するのって実に素晴らしきことだよね。
目の前にいるのは二人の男女。
今年で12歳になる彼等は私達幼馴染から年次的に一番近い。
やんちゃ盛りなのか二人ともよく喧嘩するんだよね。
何故か女の子から襲撃するんだけど、大丈夫かな?
まあ、どの年代にもいるでしょ?
悪戯が好きだったりするトラブルメーカーがさ。
私達の世代ではソフィアがそれに当たります。
戦闘では優秀だけど、村では錬金術失敗の嵐で多大な迷惑を掛けている。
特に私とクリスが被害者になるのだけど。
「はいはい。喧嘩しない! 今日はスキルについてのお勉強をしまーす!」
「スキル! やったー!」
さてさて、今回スキルの授業を行うには理由があった。
この二人、もうすぐレベル20に到達して固有スキルを覚えるんだよね。
なので、事前にお勉強しましょうということで急遽、授業を開いたのだ。
この世界には二つのスキル体系が存在する。
固有スキルと通常スキル。
通常スキルは本人の特性に依存するけど努力すれば覚えられるモノ。
炎や氷の低級魔法って練習すれば誰でも使えます。
一般的に使われる技はこの通常スキルに該当するというわけ。
続いて固有スキル。
これは説明しなくても分かるだろう。
本人しか持ち得ない特別なスキルです。
クリスの大賢者とか、幻獣憑依なんかがそれに該当します。
世の中に人は沢山いるので、被るとか似てしまうことはザラにあるんだけどさ。
その他にも転生スキル、多元スキルとかいう別系統スキルが存在します。
誰とは言わないけど、私のことを知る人は察してよね。
固有スキルは普通、20歳くらいで覚える。
この頃に20レベルに到達する人が多いのだ。
しかし、我が村の子は優秀なのか異様にレベルの上りが早い。
クリスやソフィアなんて7歳には20レベル到達していたしね。
ヤバい村ですわ、本当に。
ちなみに私は生まれた時から20レベルだったんですけどね。
さらに最初から多元スキル、転生スキル持ちというチート野郎です、はい。
教え子二人は昔からよく喧嘩するので、お互いに高め合ったんだろうと推測。
どんだけ喧嘩でレベル上げしてんだよ、って感じだけどさ。
「隙あり!」
「いだっ!?」
考えている傍からまた喧嘩である。
しようがないな、本当に。
その時だった。
二人の身体に仄かな光が宿る。
これって、固有スキル獲得時に発生する光じゃね?
お前等、授業する前に20レベルに到達しちゃったじゃないか!
スキル覚えると聞く耳持たなそうだから事前に授業しようと思ったのに。
固有スキルを得る瞬間を人によっては"啓示"とか呼ぶ。
習得する固有スキルの名前と効果が頭や心に響くんだって。
神のお告げの様に感じるみたい。
光に包まれ、啓示が行われている最中はやんちゃ坊主達も流石に静かである。
二人とも心の声に耳を傾けているのかな?
よく考えてみれば人生に一回しか訪れない、大イベントなんだよね。
取り敢えず、光が鎮まるまではそっとしておきましょう。
暫くして、光が収まると子供達は元気良く取得した固有スキルを高らかに叫ぶ。
まあ、嬉しいよね。
新しい力って何だかワクワクするもん。
私は戦々恐々としちゃうけどさ。
「俺の固有スキルは《勇者》!」
「私の固有スキルは《魔王》!」
はい?
何て言ったの君達?
かなりの確率で世界を巻き込んであーだこーだするスキル名が聞こえたんだが。
「勇者倒すべし!」
「魔王討伐だ!」
いつも通りの仲良しクロスカウンターを決め合う二人。
周囲に伝わる軽微な衝撃。
威力が上がっているせいか窓枠にヒビ入ってますけども……。
どうやら、私。
勇者と魔王の先生になったみたいです。
ちなみに、自分はヒーローのスキル持ちっていうね……。
サクラに相談する?
アイツに伝えるって、新たな悪だくみのネタを投下している様な気もするけど。
普通の村人として頑張ろうとしてるのに何でこうなるかね。
この世の中に勇者と魔王を同時に育てる教師とかいないでしょ。
勿論、職務放棄はしないよ。
でも、育成方針とか間違えるとガチで世界に関わってきそうな事案だよね。
今のところ大分、普通から遠ざかってる気がするのは気のせいかな。
普通じゃない幼馴染。
普通じゃない後輩。
普通じゃない喋るスキル。
本当にどうすんだろうね、コレ……。
一章、完了です。
ここまで、読んで頂いた皆様。
本当にありがとうございました。
次回は幼馴染三人組、ナナリー、熊っさん、ティア、チビ勇者魔王あたりを
中心とした物語とする予定です。




