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繋がる世界:鑑定スキルの視点

――リルアが来た!

――リルアって誰?


 観測される沢山の声。

 世界は徐々に繋がりつつあるようですね。


 即座に周囲の状況をトレース。

 リルア様の幼馴染や冒険者達は静かに状況を見守っている。

 全てを託すというような視線。

 この場でまともに戦える者はリルア様ともうひとり。

 大幅なレベルアップを果たした大盾を持つ大男。


 折角、レベルを上げるチャンスでしたが、寸前で阻止されましたか。

 私とリルア様は、転移陣で複雑に入り組む迷宮区に飛ばされていた。

 皆を探す過程で発見した、複数壁の先で待機していたダンジョンボス。

 私はある命令をリルア様に下す。

 皆がピンチだと唆し、迷宮区を抜けるために壁抜けパンチを繰り出せと。

 慌てたリルア様は一撃で幾枚もの壁をブチ抜くという大技に出た。

 狙い通りボスを巻き込み、大打撃を与えたまでは良かったのです。

 タンクにラストアタックを奪われてしまうとは……。

 結果として、幼馴染の皆さんを発見できたので良しとしますか。

 ダンジョンボスの横で茫然と立ち尽くすタンクは言う。


「この私が70レベルの領域に踏み込めるなんて」

「盾持ちのおじさんは皆を守ってよ。折角、レベルが上がったんだからさ」

「リルア君、キミは一体?」


 リルア様はタンクに対して、笑顔で下がれとジャスチャーを送る。

 答えは簡単だ。

 人知を超えた存在を示す反応。

 周囲に警戒網を張るとそれはすぐに発見された。

 フアナという名でしたか。

 私達を転移陣に押し込み、パーティーから強制離脱させた張本人。


 だが今は、人を逸脱した存在。

 解析を試みましたが、かなり時間を要するようです。

 阻害されているのではない。

 多くの生体情報が複雑に絡み合い、解析を困難にしている。

 明らかとなっているのは魔物と人の遺伝子情報を含むこと。

 そして、圧倒的なまでの戦力を備えており、


『リルア様。敵のレベルが判明しました。565、過去最高の数値です』

(分かってる。コイツが皆をやったのね)


 リルア様のレベルは106。

 敵とのレベル差に驚く素振りは無し。

 それより、周囲で疲弊しきった冒険者達を気に掛けている様子。

 であればと、リルア様に周囲の状況を伝える。


『命に関わる負傷を抱えた者は皆無です』

(良かった。てことは、存分に魔物使いの相手が出来るってことね)

『固有スキル発動の条件を満たしていますが、どうしますか?』

(リンク率はどの位?)

『3個中、2個までの連結を確認。全てと繋がるにはもう少し時間を要します』

(分かった。全部と繋がったら教えてね)

『それは危険と判断します。今の状態ではレベル差が開きすぎかと……』

(それでも待つの。いい?)

『了解しました』


 そう言ってリルア様が敵に向かって歩を進める。

 距離にして、10メートル。

 その位置で静止すると、


「結構、姿が変わったね。一応、喋れるでいいのかな?」

「随分と余裕のある発言だ。お前は感じないのか? 強大な力の奔流を」

「はいはい。そんなことより、もう止めにしない?」

「何だと?」

「もう二度と人殺しとか、悪さをしないなら見逃してもいいかなって」

「貴様、自分の立場が分かっているのか?」

「分かっているよ。全ての力を捨てて、ここから立ち去れと言っている」

「アハハハハ!! 愚物が! よかろう、一撃だけ貴様の攻撃をただで受けてやる」

「いいの?」

「全力を尽くすことだ。そして、絶望しろ。圧倒的な力量差の前にな」

「それじゃ、遠慮なく……、はあ!」


 リルア様が敵へと肉薄する。

 本当に避けるつもりはないのですね。

 仁王立ちのまま、不敵な笑みを見せるフアナの顔面に渾身の一撃が突き刺さる。

 衝撃が部屋中を突き抜け、快音が静寂を打ち破る。

 しかし、やはりそうなりますか。

 拳を額に受け全く微動だにしない敵を見据えながら、クレア様は笑みを浮かべ、


「あちゃあーー……。やっぱ、流石にレベル400差はキツイよね」

「今のが全力か? 今度は此方の番だな」

「お手柔らかにお願いしたいっ…」


 クレア様の腹部に強力な一撃が叩き込まれる。

 瞬間、世界が高速に流れていく。

 何故という疑問が浮かぶ。

 壁に叩きつけられた結果、生じるのは大崩壊。

 人知を超えたというのはあながち嘘ではないようです。

 100メートル四方の壁、全てが陥没する程の巨大なクレーター。

 落ちゆく瓦礫の中、ふらふらと立ち上がるクレア様。

 頭部の裂傷と内臓器官の損傷により、血が零れている。


(いてて。少しくらい手加減しなさいよ、もう!)

『何故、避けられた攻撃をワザと受けたのですか?』

(時々、痛みも必要なのよ。人として生きていくためにはさ)

『理解不能です』

(力に溺れるな。目の前の怪物みたいに痛みを理解出来ない奴になるなってね)

『だから、貴方は普通の村人で良いと願うのですか?』

(それもある。皆を守る時、ほんの一瞬だけ力があれば良いかなって)


 その時だった。

 今この瞬間、全てが繋がったことを確認する。

 現在、私達が関係を持っているのは3つの異世界。

 リルア様の固有スキルはある者達を媒介として、異世界への扉を開く。

 何らかの理由により、心や身体に傷を抱えた子供達。

 リルア様のスキルは世界を越えて、悲しみを抱く彼等を繋ぐ力を秘めている。


 転生前、地球と呼ばれる世界で児童養護施設?の職員であったリルア様。

 特異な固有スキルは転生前より育まれたモノと聞いているが、過去は知らない。


 その効果は真なる悪が出現した時のみ発動する。

 人々を苦しめる存在を討ち滅ぼす力。

 悪を討伐する過程はデフォルメされた物語として異世界の子供達に送信される。

 絶望の末、誰も信じずに、全てを諦めていた子供達は夢を見るのだ。

 正義の味方が悪に立ち向かう夢を。

 夢は物語に参加する演者にも共有され、子供達の声を聞くことができる。

 時には幼子の声に励まされ、奮い立った者もいる筈だ。

 演者と子供達が紡いだ物語はやがて主人公へとリンクしていく。

 

『観測可能な全異世界への接続が完了しました』

「子供達全員に繋がったんだね。それじゃあ、いっちょ行きますか!」


 私達は唱える。

 そして、重なるのは幾度となく物語を共有した子供達の声だ。


「『多元へと繋がり、正義を成せ!』」

――多元へと繋がり、正義を成せ!

 

 多元世界に干渉し、新たな可能性へと導く異能。

 子供達の祈りにより開かれた扉は更なる力を呼ぶ。

 リンクした異世界に存在するスキルは、私を介することで全て使用可能となる。

 女神達が与えし数多の"転生スキル"を超える力を私はこう名付けた。


「『多元スキル《HERO》!!』」

――多元スキル《HERO》!!


 普通の村人でありたいと願うリルア様は悪と戦う時だけ、全能の力を手にする。

 市井の中に潜み、悪が現れた時、新なる姿を現す者。

 幼き頃、誰もが憧れたであろう"ヒーロー"の力を。


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