表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/61

シンクロ:ソフィアの視点

 払い、殴り、掴み、叩き、突き刺し。

 頭、左腕、脚、尻尾による全身を用いた多重攻撃。

 数秒にも満たない間に一連の動作が連続で繰り出される。

 結果として怪物の周囲に生まれるのは暴風の渦だ。

 それらを掻い潜り、私達は攻撃を重ねていく。

 敵の防御は硬く、突き崩すまでには至らない。


 最初は平面での戦いだった。

 つまり、地上戦。

 赤と青、黄と緑。

 対となる二組のナイフが怪物を中心として幾重もの軌跡を描く。

 互いにナイフを投げ合い、必要とあれば相手の位置に転移する。

 だが、それだけでは足りなかった。

 敵の反応速度が僅かに私達の連携を上回る。


 ならばと多重の浮遊剣を展開。

 攻撃には使用しない。

 足場として利用し、戦いを三次元の場、空中戦へと段階を引き上げる。

 地を、剣を、敵を。

 全てを攻撃、回避、移動の場として利用する。

 アスカが事前に右腕を奪ってくれたお陰ね。

 そこで初めて互いの実力が拮抗し始めたのだ。


 生死を掛けた戦いで不謹慎な考えかもしれない。

 けど、私……今、すっごく楽しいと感じている。

 250という怪物との戦闘がではない。

 私と同じ実力を持つ少女が現れたことにだ。

 幼馴染も人外の力を持つがタイプが違う。

 クリスは基本後衛。

 リルアはワンパンで頭がおかしい。

 互いに戦場を駆け、前線を共にする者と出会ったことがなかったのだ。

 これまでに体験し得なかった感覚。

 眼前の敵を倒すために、目の前の少女と心を同調させていく。

 

 深く繋がる中で幾度となく抱く称賛。

 凄い。

 ナナリーが敵の攻撃を誘う位置。

 それが、私の望む攻撃の導線に重なるのだ。

 つまり、カウンターで攻撃が直撃する。

 よろめいたところに、不可避の暗殺技を叩き込むナナリー。

 女王蜘蛛の心臓を奪った抜き手と加速を得るための歩法。

 怪物の身体に無数の傷を刻むが、それでも致命には至らない。


 地上と空中。

 縦横無尽に駆け回る私達を髑髏が徐々に捉え始めた。

 二人の衣服が裂け、擦り傷から赤の線が中空へと引かれる。

 学習能力が高い。

 行動パターンを変えるか。

 視覚から隠す様に怪物の背後へ黄のナイフを地面へと投げた。

 成功すれば背後から急襲できる絶好の位置。

 だが、それを許す敵ではない。

 待っていたと言わんばかりに黄のナイフを踏み砕いたのだ。


「馬鹿が! 勝機を焦って、切り札のひとつを失ったな」


 魔物使いが高笑いを上げる。

 切り札が踏み砕かれた。

 私はその事実に笑みを浮かる。

 そうね、切り札を踏み抜いてくれてありがとう。


 突如、怪物の足元から五色の炎が舞い上がる。

 姿を現したのは巨大な神鳥。

 アスカが蜘蛛と対峙した際に、使用した幻獣"ゴホウ"。

 転移ナイフと同じ造形で召喚ナイフを作成した甲斐がここに生じたのだ。


「幻獣だと!? 錬金術師、貴様そこまで……」


 瞬間、急激な痛みに小さく舌打ちを打つ。

 幻獣召喚。

 アスカの幻獣憑依とは少し異なる。

 彼女は基本、ノーリスクで幻獣を憑依させる。

 自身の肉体が幻獣のレベルに追いついていれば身体を痛めることはない。

 

 それに対し、私は代償を支払い召喚としなければならない。

 代償は魔力や体力、血液や五感などだ。

 錬成した召喚ナイフに術者の血を混ぜ込み、祈りを捧げることで可能となる。

 それに効果もかなり違う。

 召喚は幻獣の技を一度借りるのに対し、憑依は一定時間幻獣そのものとなる。

 高レベル技を使えることを利点とするかよね。


 魔力と血をごっそり持っていかれたわね、けれど……。

 怪物に纏わりつく五色の炎。

 レベル100の幻獣技だが、どんなに暴れようとも、炎が枯れることはない。

 その攻撃に対し、


「アホ! こんな炎が纏わりついては、近接主体の私じゃ近付けないだろう!」

「じゃあ、これでも投げればいいじゃない」


 ナナリーの周囲に無数の剣群が集結する。

 メモピ三枚分で底上げした膂力による魔剣投擲。

 一発ではなく、同じ箇所へと無数に叩き込めばどうなるか。

 敵は幻獣の炎により、動きを縛られている。

 当たる筈よね。


 私の意図を読み取り、ナナリーが剣を投げつける。

 左腕の付け根。

 そこ目掛けて、1発、2発と快音が重なり、硬質な肌に亀裂が生じ始める。

 回避は許さない。

 何故なら、魔剣の行く先は全て魔物使いと重なるように設定されているから。

 魔物は炎に焼かれながらも、最善として主を守る行動を取る。

 結構、えげつない戦法ね。

 けれど、……ステータスアップの薬が切れるまで残り30秒。


 私も攻撃に参加するつもりだったが、幻獣召喚の代償が思ったよりも大きい。

 後はナナリーに全てを託すのみ。

 私は魔剣の維持のみに意識を集中する。

 

 そして、ドーピングが切れる時間と同時に、それは起こった。

 髑髏の左腕が宙を待ったのだ。

 レベル差、150以上の相手。

 右腕をアスカが、左腕を私とナナリーで奪い取る。

 

 転移ナイフのエネルギー残量はゼロ。

 全力で動き続け、身体中に受けた裂傷の数も存外多い。 


 私達の仕事はおしまい。

 後は任せたわよ。

 大賢者様。


 私の視線の先、大空間の入口で極大魔法を構えるクリスの姿が映った。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ