左ルート攻略組:熊っさんの視点
――盾のおっさん使えなー。
――なー。
また声がする。
出発してから暫くというもの頭に時折、響く声が止まらない。
どうやら、私以外にもその声が聞こえている者は皆、顔に疲労を浮かべている。
最初は私だけ変だと思ったがどうやら違うようだ。
意を決して皆に問い掛けてみるか。
「すまない、話を聞いてくれ」
「何だよ、俺さっきから頭が痛いんだよ。天から声が聞こえるっつーかさ」
「君もか! どんな声だ!」
「弓矢のおっさん使えねー……。悪かったよ! 使えなくてな!」
「アハハ! 私も同じことを言われたよ」
おっさん二人で指を差し合いアンタもかと高笑いを上げる。
なんと、空しいことか。
すると、一際疲れた顔のナナリーが、
「あー、アンタ等も聞こえるのか……」
「君もか。だが、私達よりは良き声が聞こえるのでは?」
「告白しろ、意気地無し、ちび、全部悪口だ。全部な……」
「えっ、告白ってナナリーさん好きな人いるの?」
「い、いる、いるわけないだろ! 馬鹿、アッチ行け!」
顔を真っ赤に犬歯を剥いて、クリス様を追い返す。
なんと分かり易い。
ナナリー、君はやっぱり大賢者様が好きなのだな。
恐らく目が見えていれば、すぐに気付いて貰えただろうに。
念のため残りのソフィアと賢者様にも聞いてみるか。
「君達二人にも謎の声が聞こえるかい?」
「聞こえるよ。多分、リルアのスキルが発動してるんだと思う」
赤毛の少女がさも当たり前だと言うように答える。
皆に謎の声が聞こえるスキル?
そんな、能力は見聞きしたことがない。
クリス様が拝みたくなる程の笑顔で答える。
「物語が始まったんだね。これから、もっと色々な声が増えるよ」
「物語とは?」
さらにその先を聞こうとした時だった。
息を盛大に切らせた金髪の少女が飛び込んでくる。
続いて魔法使いの男も倒れ込みながら、
「ハアハア、魔物使いに襲わ、てる。幻獣使いの嬢ちゃんが、ひと、りで……ハアハア」
【私達を逃がして時間稼ぎを】
魔物使いという言葉に一同硬直する。
ここに駆け込んできたのは二人。
時間を稼いでるという幻獣使いのアスカ。
残りの二人はどうしたのだ?
ソフィアが二人に水を差し出しながら、ゆっくり問い掛ける。
「二人とも頑張ったね。リルアはどうしたの?」
【転移陣で何処かに。場所は不明】
「あの馬鹿は肝心な時に。ということは、フアナが魔物使いね?」
大きく頷くセーラを見たと同時に駆け出す二人の姿。
私もその後を追う。
「私も行く! ソフィア、ナナリー」
「おっちゃんは二人が落ち着くまで待ってなって!」
「声が聞こえるのだ! 必死に助けてと叫ぶ声が!」
「……分かった。無茶はしないこと。声の皆を泣かせることになるよ」
「承知!」
――お願い、ひとりで頑張るお姉ちゃんを助けて。
――使えない盾のおっさん頑張れ!
使えないは余計だ!
だが、頑張るとも。
私はタンクだ。
受けることが仕事。
いざという時、老いぼれの私が若者を守らないでどうするのだ。
戦いは刹那、私が一撃を防ぐことで生み出せる隙もあるやもしれん。
今までも、そういった場面は幾度もあった。
実力では劣るだろう。
だが、その刹那に私の盾が必要であるなら、
「間に合ってくれよ!」




