キャンプ
今、私達はキャンプの準備をしています。
それは、何故か。
熊っさんの提案を受け入れたから。
大盾持ちの巨漢で見た目が熊っぽい、50レベルの冒険者だ。
熊のおっさん、略して熊っさんと心の中で勝手に呼んでいます。
キャンプを敢行した理由は、夜もかなり更けてきたから。
戦力を均等化した班決め、単なる休息。
以上、3点が理由だ。
明日の早朝に出発予定であり、キャンプの前には二つの道がある。
パーティーを分割して奥へと進む、そう私達は決断していた。
さてさて、私の課せられた担当は班を決めること。
参加者は私、熊っさん、以上。
他はキャンプの準備中。
おかしくね?
メンバー配分がおかしいと思います、先生!
だが、異論は認められなかった。
主な理由は70レベル軍団が極度の自己中だということ。
パーティーなんて組んだことない、個人で生き抜いてきた奴ばかり。
他の冒険者も攻略に残るだけあって傲慢な感じ。
"俺・私が入ればパーティーは安泰だぜぃ"とか思っている。
なのでメンバー構成なんて気にならない、そう言われたのだ。
ソフィアとクリスには班決め要員から意図的に外れてもらった。
仲良し同士で決めた班なんて、異論噴出な可能性があるでしょ。
そういえばスケッチと民族が殺意の視線で私を見てたな。
クリスと組ませなかったらお前のライフ削るぞみたいな。
君達の攻撃如きで私のライフは削られないのでどうでもいいが。
「リルア君とナナリー君は分かれた方がいいと思う。優秀な前衛そうだからね」
ついさっき民族がナナリーという名前であることを知った。
仲良くなるまでは、民族呼びでいいかな。
その方がしっくりくる。
前後衛のバランスも考慮しつつ、話し合いは進む。
ちょっと、懐かしい。
転生前は社会人していた私。
こういった大人っぽいまじめな話し合いがとても新鮮に感じる。
それから1時間余り。
なんだかんだ熊っさんと相談して決まったパーティーはこちら。
右ルート班
・リルア(私)
・スケッチ
・委員長
・元気
・魔法使いのおっさん
左ルート班
・熊っさん
・民族
・ソフィア
・クリス
・弓のおっさん
ごめん、スケッチ。
他人に任せたのが運の尽きだ。
班構成を眺めながら熊っさんが問い掛けてくる。
「君の目線からでいい。この中で一番強いのは誰だと思う?」
何故そんなことをと思ったが、単なる雑談だなと判断した。
誰が強いか……。
私は迷わず幼馴染の名前を口にする。
「ソフィアかな」
「君の知り合いの少女だったな。その理由はなんだい?」
「冒険者って仲間の情報を安売りする職業じゃないでしょ」
「確かにそうだ。すまない、今の話は忘れてくれて構わない」
「まあ、運が良ければ見れるよ。ドン引きするかもだけど」
熊っさんの顔が若干、強ばりを見せるがしょうがない。
私自身がそう思うのなら、他の人も当てはまると思うから。
なんて雑談をしてる間に食事が運ばれてくる。
見た目クリームシチューのそれを口に運ぶ。
適当に集まったならず者どうしなので、皆で仲良く食事なんてしない。
他の面々も勝手に食事を始めている。
二度三度とシチュー? を口に運ぶ私。
その手がいつの間にか止まらなくなっていた。
うまい。
誰が作ったんだろう。
真っ先にスケッチの顔が浮かんだが、事実は違った。
作ったのは民族。
成程、一子相伝の民族料理なんだなと決めつける失礼な私。
その料理人に話し掛ける者は皆無だけどね。
女王を討伐した時の印象が強く残っているからだと思うけど。
しかし、私はここであることを問わねばと声を大きくした。
「そういえば、ここに来る前に黒龍に襲われた人っている?」
答えはすぐ返ってくる。
民族、元気、スケッチ、委員長。
彼等も黒龍に襲撃され、それを撃退していた。
やはり、あの龍は参加者を間引くために遣わされた使者という線が濃厚だ。
そこで、スケッチが疑問を持ったのか何やら文字を書き始める。
【《眷属滅殺》?】
あー、確かに。
急に集団で湧いて来た黒龍達。
5親等内の眷属として繋がっていると考えた方が自然だ。
委員長のスキルで全滅を喰らったとしても不思議じゃない。
スケッチはおかしいと思ったんだね。
順番にもよるけど、襲われた人が多数いることに。
それを受けて委員長はコホンと咳払いを入れて、
「襲ってきたのは一体のみ。一族抹殺のスキルを使う人間を君達はどう思う?」
俺に楯突いた奴は一族諸共、滅ぶが良いぜ。
はい、ヤバい奴です。
黒龍の集団に襲われたのでなければ、使う意味は薄いよね。
失礼な質問をしたと、ぺこぺこ謝るスケッチ。
その話を聞いていた熊っさんが、
「待て、同じ時期に黒龍とかいう強力な魔物に襲われることなんてあるか?」
「可能性は低い。龍族は徒党を組む種族ではないし、地域的に見ても変だ」
「誰かが妨害を企てた? 私達の中に暗躍者が居る可能性もあるってことか」
「ゼロではないな。警戒は必要だ」
熊っさんと委員長で交わされる暗躍者同行説。
正直、迷いはあったが情報共有はしておいたほうがいい。
54人パーティーなら人数が多すぎて混乱を招く可能性があった。
今いる強者達なら、事前に情報を与えた方がいいと話を切り出したのだ。
それにしても、スキルだけ見ると犯人が見当たらないんだよね。
もう一度、おさらいをしようか。
70レベル台の固有スキルと人物の組み合わせはこうなる。
委員長
《眷属滅殺》:斬殺した者から五親等内の眷属を同時に殺す
スケッチ
《????》:色指定した魔素を隷属状態にする
元気
《????》:霊山に住む幻獣をランダム憑依させる
民族
《????》:????
今のところ最優先で怪しいのは民俗。
50レベル冒険者のおっさんズも可能性はある。
けれど、ステータスからして100レベルの黒龍の動きとか見えないでしょ。
無理なんじゃないかな、従えることが。
もう一つの可能性は固有スキル2つ持ち。
20レベル到達時に取得できるスキル以外に強力な何かを持っている奴。
私も鑑定スキルともう一つ持ってるんだけど、そのパターンは限りなく薄い。
転生時に女神からプレゼントされたのが鑑定スキル。
レベルアップで得られる固有スキルとは別枠で授かったモノだ。
『リルア様以外に転生者がいる可能性も捨てきれませんが、確率は低いでしょう』
(その心は?)
『……私の勘です』
(何か間があったけど。何か隠してない?)
『リルア様があと100レベル上げてくれれば、喜んで教えますが』
(釣り合わない取引……。まあ、転生者じゃない確信があるってことね)
『ええ。そこは信じて頂いても問題ないかと』
隠し事があるのは、仕様がない。
意志あるモノは誰しも何かしら、心に秘めて生きているのだから。
そこは、寛容に受け止める。
転生者の判別方法を問い詰めたとしても、答えが変わるわけではない。
鑑定スキルの解はここに、"転生者はいない"という事実。
つまり現状の進展にはならないことに、労力を使っても意味はない。
犯人が不明なまま時が経ち、私達は班ごとに仮眠を取ることとなった。
先程、決定した2班で見張り番を交代する。
人数が多いのは、暗躍者の襲撃にも対応するためだ。
見張りについては幼馴染二人がもう一班にいるし、問題ないかな。
今は、明日に備えてしっかり休息を取ることにしよう。




