メモリピース
さて、遺跡を進む中で少し暇ができた。
なので、レベルとスキルについて少しおさらいしようと思う。
この世界はレベル、特にスキルで他者にマウントが取れる。
それを体現するのはレベル20上昇ごとに手に入る、とある欠片――。
その名は"メモリピース"。
略してメモピ。
レベル上昇の過程を考慮し、人それぞれ固有のメモピが生成される仕組みだ。
それを使ってスキルを改良してもいいし、ステータスを上げてもいい。
パソコンのスロットにチップをはめて、性能が変わるイメージに近いかな。
けれど、人生で手に入るメモピはせいぜい1つか2つ。
それ故に効果も絶大で、人によっては戦闘方法などが一変することもある。
まず、最初の20レベル到達時に固有スキルが授けられる。
これからの人生がおおよそ決定される最も大事な時。
日本でいう成人式に近い風習かな。
村人が20レベルと20歳になるのは、ほぼ同時。
そこで、固有スキルが与えられて家族皆でお祝いするのだ。
私みたいに戦いまくり、騙されまくりだとその例に漏れるんだけどね。
それから、20レベル上昇する毎にメモリピースが生み出される。
選定の儀で見た分布が示す様に、50レベル台は超優秀な部類。
それでも、彼等が今まで手に出来たメモピは1つだけ。
メモピでスキル強化する程、チートなスキルに成長する可能性が高い。
ゴミと諦めていたスキルが全能スキルに進化した例も少なからず存在する。
それ程にメモリーピースというのはこの世界で大事なモノなのだ。
ちなみに私はメモピを一度も使用したことがない。
鑑定スキルにメモピを使うと、スキルや思考の解析も可能になるらしい。
しかし、絶対に鑑定スキルだけは成長させたくない。
私の悲願である普通の村人、それを一番に邪魔してくる存在だから。
なので私は、メモピを使わずに全て温存している。
世界に危機が迫った場合に使えばいいや的なノリである。
さて皆さん、ここであることにお気づきにならないだろうか。
この遺跡に眠る秘宝、レベルを下げるとされる秘薬。
これをレベル40になりメモピを得た者が使うとどうなるのか。
39レベルから再度、40レベルに上げればメモピがまた貰えるのでは。
皆、そう思う筈だ。
レベルを上げると必要経験値が跳ね上がる。
故に強力な魔物と戦う必要が出てくる。
命懸けの場面が増え、その過程で落命した人も少なくはない。
ならばこそ、夢見たのがレベルを下げる秘薬である。
ノーリスクでメモピを生成出来るのであれば、世界は大きく変わる。
大量の人達が遺跡に集合したのも、喉から手が出る程に秘薬が欲しいから。
そう思うと鑑定スキルは本当に化け物なんだなと改めて辟易してしまう。
経験値増大バフを使えば、レベル上げ放題になるという事実。
こいつ一台あれば、大抵は何とかなるのではなかろうか。
流石にレベルを下げるみたいなことは不可能だと思うけど。
いや、コイツの場合、知ってても絶対黙っている筈だ、うん。
そんなことを思っていると私達は分かれ道に遭遇した。
気になるのは二つの道の間に転移陣と謎の石板が存在していること。
風化しており、目を凝らすことで読み取れる石板を何とか解読すると、
「この転移陣からダンジョン脱出が可能みたい」
そこで改めて方針を検討した。
ここから先に進むのはレベル70以上と一部の冒険者のみ。
他は実力が違いすぎるため、地上待機とすると申し出があった。
地上待機すると言ったメンバーは大国のスカウトと恐怖した面々達。
蜘蛛との一戦で大方の実力が理解できたし、同行する意味は薄い。
後は実力の違いを悟った人達かな。
他に残った50レベル台は秘薬が目当ての冒険者となる。
分かり易い構図となりこちらとしてはかなり助かる。
残ったメンバーは10人。
ここからは二手に分かれて進む必要がある。
どうやって班を決めるのかなと思った矢先、クリスの両腕に掴まる者がいた。
左腕にスケッチ、右手に民族。
それを見ていたソフィアの視線がひんやりと暗く淀んでいる。
え、あ、うん。
クリスに突如として訪れたモテ気により、修羅場が到来したようだ。
ソフィアに恋愛感情はないと思うけど何となく気持ちは分かる。
私もずっと幼馴染してたし、可愛がってた弟が取られた気分なのだろう。
『それが、恋心と気付くのにあまり時間は掛からなかったのです』
暇だからって変なナレーション入れんな、鑑定スキル。
現実になったらどうすんだよ。
私に止める力なんて、ミジンコも存在しないんだぞ。
恋愛関係は苦手なんだってばよ。
それにコイツ等、全員レベル70台のトンデモ少女の集団だ。
徒党を組まれると何をするか分かったもんじゃない。
クリスによってまとまったパーティーが、クリスによって破壊される。
これから先、何気に前途多難な気がするわ。
それにやっぱり居る気がするよね。
例の魔物使い、いつ頃仕掛けてくるのだろうか。
まあ、周りの面々の能力を見て諦めた可能性も無きにしも非ずだけどさ。




