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大賢者

 私らしくないなと思う。

 普段はのらりくらりな人生。

 面倒事に関わるまいと日々を過ごしていた。

 

「ほら、リルアらしくないよ」

「痛っ!」


 いつの間にか、私の後ろに回り込んでいた盲目の魔術師。

 白杖でコツンと軽く後頭部を叩かれる。

 振り返ると、相変わらずいつもの柔和な笑みがあって、なんか心が落ち着く。

 凄く気になるのはいつの間にか背後を取られていたということ。


「また、変な魔法を覚えたでしょ」

「バレた? 空間転移魔法だよ。距離はまだ15メートルくらいなんだけどね」


 軽いノリだけど、ヤバイ魔法名をさらりと言われた。

 クリスが握っているのは、村の広場でソフィアが錬成したリボンと同じ柄だ。

 最近、覚えた新しい術式ってコレのこと。

 結構、軽めに言ってたから、ちょっとした攻撃魔法かと思っていた。

 転移魔法なんて、この世界ではお伽話級の魔法なのだ。

 この遺跡にある転移陣のように、飛ばす先が固定されていてギリギリ可能。

 それも、何十年、数多の術師が時間を掛けて作り出す代物である。

 自分で任意の場所に飛べるとか、規格外なんだってば。

  

 クリスが覚えた魔法はコレだけでは無かった。

 私の拳で真っ新にした大空間に五光が舞い降り、清浄していく。

 亡くなった魂を癒して天界に送る、僧侶のみが使用できる浄化魔法。


「それって僧侶が使う魔法じゃない? 何でクリスが使えるわけ?」

「理由って必要かな? いつも、リルアが魔物に花を捧げるのを見て覚えたんだ」

「私のためってこと?」

「散った命のためかな。使いたい魔法があるなら死に物狂いで努力すればいいし」


 クリスの修業は常軌を逸している。

 10本の点字リボンと10本の指。

 そして、言葉を合わせた計11個の並列詠唱による修業を何千と繰り返す。

 この時点で常人が行う修業と比べ、10倍程度の経験値差が生じている。

 朝が明け、昼が終わり、夜が闇を作る。

 一日のサイクルの中、心を乱さず、一つの魔法を詠唱し続けるのだ。

 ここまで来ると魔法バカである。


 武道に対する感謝の突きを連日繰り返す某漫画を思い出す。

 気付いたら突きの速度が音を超えていた、とかいう話。

 あれに近いものがクリスにはある。


 人には魔法適正があり、攻撃、回復、サポートなど系統に分かれることが多い。

 得意属性もまた然り。

 地風火水、聖なのか魔よりなのか、それによって自らの道を決めるのだ。


 けど、クリスは違う。

 暴力的な試行回数と集中力でそれらを全てねじ伏せる。

 努力の天才ってクリスのような人に捧げられる言葉なんだと思う。

 その結果、とある伝説級のスキルにまで成長しちゃうんだけど。

 騎士の一人が声を震わせながらクリスに問い掛ける。


「まさか、君のスキルは全知全能の魔法使いに与えられる《賢者》なのでは……」


 そう、かつて魔王を討伐した勇者の片腕。

 彼が持っていたとされる全魔法に精通した魔法系最強スキル《賢者》。

 

「ちょっと違うかな……。僕の場合、賢者の前に大が付くし」

「上位互換かよ!!」


 え、えーっと。

 それは知らなかった。

 いつの間に大が付いたんだよ、流石に引くわ。

 その大賢者様が言うには喧嘩するなということ。

 皆、素直に言うこと聞くよね。

 伝説のスキル持ちだもん。


 民族がキラキラした瞳でクリスを見つめている。

 おい、お前。

 さっきまで殺伐としたオーラ放ちまくりだったじゃねぇか。

 年相応にアイドルグループを応援する少女の顔になるんじゃねぇよ。


 そして、スケッチ。

 顔赤らめすぎ、恋する顔だよね、それ。

 ちょっと、私の幼馴染なんだからね。

 君が独占するには、時期尚早。

 盲目だし、ちょっとひ弱なところとかあるし、まだ婿には出せません。


 急遽、大賢者様が降臨してくれたお陰でパーティーはまとまりつつあった。

 パーティー崩壊を気にして、わざとクリスがスキル公開したのだと思ってる。

 昔から目が見えない分、一歩引く性格なのは知ってる。

 だからこそ、彼にしか見えない景色がある。

 それが見えた時、クリスはすっと前に出て皆のために頑張る子なのだ。


 それでね、ふと思ったんだけどさ、私の大空間を殴った殺伐パンチいる?

 無意味じゃん、魂はクリスが浄化しちゃうし。

 空気読めずに一人でキレちゃった、痛い子じゃないですか。

 いいよ、いいよ。

 この奥にある秘薬を手に入れれば、痛い子ともおさらば。

 改めて誓おう。

 私は、ぜーーったいに普通の村人になってやるんだから。


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