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でたとこクエスト チュートリアル①

サブタイトルつけるのが苦手

「おいおい。ショタ神様。チュートリアル戦で、コレは幾らなんでもキツ過ぎるだろ?」


 思わず俺は、そう呻かずにはいられなかった。



 それは人の形を歪に模していた。

 ピンクがかった、妙に血色の良い肌色に、3メートルに迫ろうかという巨躯。

 歪に肥大化した両腕は、力なくだらりと下げられており、直立した状態で地面に届きそうだ。

 顔はまるで、子供が戯れに捏ねた粘土みたいで、大きな口が1つだけ、まるで傷口のように、しかも縦に付いていた。


「きおっきおっきおっ、ぜばはっ」


 文字に起こせば、多分こんなカンジになるだろう。意味不明の声を上げる度、唾液を垂れ流し、深海魚を思わせる細く長い牙が口から出入りする。


「うっわー。気持ちワルぅぅぅ。コレはないってー。つーか、なんだコレー?」


 俺のすぐそこ、それこそ15メートルぐらいしか離れていない場所を、その化け物はノイローゼのライオンみたく、意味もなくフラついている。武器は何も持っておらず、身に纏うのもボロ切れのみだ。


「ん? これか。これはアレじゃ。下級妖魔じゃ。草原を徘徊しておったのを我が捕まえたのじゃ。力を試すには丁度、良かろうと思ってな」


「まさか、妖魔ってのは、みんなこんななのか? 精神衛生上、全く持って好ましくないんですけど?」


「ふむ。そうとも言えるし、そうとも言えん。なにせ妖魔は冥界の住人じゃ。こことは理を別にしておるからの。

 ヤツらはアストラル体のみの存在であり、ここ人界は、いわば物質の世界。妖魔が人界に存在し続けるのには、物質の体が必要不可欠なのじゃ。

 大方ソイツは行き倒れた旅人の骸にでも憑依したのじゃろう。骸に妖魔が憑いた場合、見た目がグロくなることが多い。理由は判っとらんがの」


「へー、じゃ。他の連中もだいたいこんなカンジのグロいのと戦ってんのか?」


 ここにはいない、3人の様子がちょっとだけ気になって、尋ねてみる。

 というのも、この広大無辺な『白の空間』にいるのは、俺とショタと、あのクチビルお化けだけなのだ。

 ショタ野郎「まずは個々の技量が見たい」とか、言って、俺たちを1人づつ、この訳の分からない空間に隔離しやがったのだ。


「んにゃ。イチルとユキノは見た目は黒いだけのゴブリンが相手じゃ。ケンゴは、狼タイプの妖魔じゃな」


「オオカミィ? なんかチョロそうじゃね? 見た目もエグくなさそうだし」


 こっちは良く分からん、体長3メートルはある、筋肉ゴリゴリの化け物なんですが?


「いや。そうでもないぞ? 強さこそ、そこのと似たようなもんじゃが、見た目はなかなかにグロいぞ? 全身の皮がズル剥けておって、顔の位置にイソギンチャクを思わせる触手がウネッとる」


 何じゃったら、替えてやろうか? と、意地の悪い笑みを浮かべるショタに、俺は、コレでいいです。と、丁重にお断りした。




 それにしても、何なんだろうな。コイツ? さっきから同じ場所をウロウロしてるだけで、全っ然、襲って来る気配がねぇんだが? 目とか悪いのか?

 疑問に思ったので、さっそくショタに確認する。


「おい。コイツは何で、俺を襲って来ない? 何か俺の存在に気付いてないみたいだが?」


「うむ。その通りじゃ。我がヤツの認識をズラしておるのじゃよ。ギーから仕掛けぬ限り、ヤツがお主の存在に気付くことはないわい」


 へー。何それ? 便利な術だな。俺にも使えんのか?





 ――――――――――――何をチンタラしてやがるっ!!


 突然。声無き声が俺の脳へと直接響き、俺の頭が「ぐわん」と大きく揺れる。


 俺の脳裏へと鮮明に浮かび上がったのは、1人の女の姿だった。

 病的にまでガリガリに痩せこけ、血の気の失せた青白い肌。

 長く伸びた朱い髪の間から覗くのは、凶悪なまでの双眸。

 その女が怒りを顕にする度、蒼白い炎が噴炎となって、迸る。



 これが、俺の能力チカラの具現化した姿であるらしい。

 因子を受け入れた(と言っても、ショタに渡されたイクラみたいなオレンジ色の粒を噛まずに飲み込んだだけだが)その時に、発現したチカラである。


 因子を受け入れて、しばらくすると、体の奥底から力が溢れ、気付けば俺は、蒼い炎へと包まれていた。

 不思議とその炎は熱を持たず、そのまま、徐々に収縮して消えたかと思うと、それと入れ違うようにして、いつの間にか、俺の中にコイツが現れたのだ。


 その凄まじいまでの圧に、俺自身の存在が掻き消されそうになる。

 額に脂汗を滲ませ、体をくの字に折り曲げると、噛み締めた歯の奥から、我知らず「ぅぐあっ!」と苦鳴が漏れる。


 ショタは俺の中のコイツが視えるのか、興奮した面持ちで「それこそが、本来お主に備わっておったはずの『神なる威』よ!」とか、言ってたっけ。


 その時も、俺はあの声を聞いていた。


 ―――――――我が名は紅蓮グレン阿鼻姫アビヒメ伽倶土カグツチが系譜に連なりし、炎の化身なり。力を求めるなら、我が名を呼ぶがいい! 貴様に仇なす全てを灰としてくれよう。



 声が消えると同時、それまでの、呼吸すらままならない、凄まじい圧迫感がウソのように霧散した。


 その声に俺は、ごっそりと気力を持っていかれ、しばらく動けなくなったのだが、どういうわけか、今はなんともない。


 力が必要な時に呼べって言ったのは、お前だろうに。それが呼ばれもしねぇうちから、しゃしゃり出てくんじゃねーよ!



 ―――――――ふん。小さいことをいちいち気にするな。ハゲるぞ? こちとら気が短けぇんだ。獲物を目の前にブラ下げられて、いつまでも『待て』が出来るほど躾はなってねぇんだよ。分かったら、さっさと暴れさせろ。


 解った。解った。そうガッつくんじゃねぇよ。 ・・・・・・いいだろう阿鼻姫。俺に力を貸せ!



ちょいグロ?

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