でたとこクエスト 第一ショタ神様発見
書けた端から投稿してしまう。
そのお子様は、自分のことを神だと言った。
雪乃にお名前を尋ねられたお子様は、「フフン。知りたくば、教えてやろう!」と、なぜか偉そうにフン反り返ると、
「我は、凱旋の乙女にして勝利の女神『ペンテシレイア様』が従属神、先駆けの童神『ナハトムジーク』である!」
と、そう名乗ったのだ。
連日の猛暑で頭がどうにかなったと思われるカワイソーなお子様は「愚民共ー! 我を崇め奉れー」とか言って、フハハハハーと、どっかの悪役みたいに哄笑を上げている。
その様子を、お遊戯会を見に来ているお母さんのような眼差しで、そっと見守っているのは雪乃だった。
どうやら、彼女の深淵なる母性愛は、たとえイタイ子であっても平等に注がれるらしい。
「ショ、ショ、ショ・・・・」
そんな雪乃とは対照的に、驚愕の表情を浮かべ、何やらショショショショ言ってるのは、一縷である。
しょ? 「しょ」ってなんだ? 書か?
と、疑問に思っていたら、不意に一縷が感情を爆発させた。
「ショタ神様じゃー! ショタ神様が降臨なされたーー!」
もうテンション爆アゲである。
間近で雄叫びを上げられ、俺の耳がキーンと鳴る。
むぅ。確かに一縷のやつ、異世界転移モノのネット小説とかラノベとか、大好物だからなー。
俺も好きだけど。まー、俺としては転生ものの方が好みだが。
それは、ともかくとして、この一縷のハシャギっぷりだと、放っておいたら「勝手にチートを授かったー」とか言い出して、最初の村の周囲を角の付いたウサギやら、青い不定形生物を求めて、グルグル徘徊しだすに違いない。
俺がそんな愚にもつかない考えごとをしている内に、一縷のヤツはどうやら、次の登ってはいけないステージへと駆け上がったらしく、ちゃぶ台の上へとよじ登ると「ふおおおおお!」と、叫びつつ、どっか秘境の部族に伝わっていそうな、神とか精霊に捧げる踊りみたいな動きを始めていた。
何のつもりかは知らないが、元気なのはいいことだと思う。色々アウトだけど。
とはいえ、一縷から熱烈な祈りを捧げられているはずの、当のショタ神様も、一縷の奇行にビビッていなさるので、そろそろ止めさせた方がいいだろう。
このままだとお子様の健やかな成長に何らかの悪影響を与えるかもしれない。
もし、トラウマになってオネショとか再発したら可哀想だからな。
ちょいちょい変なスイッチの入る一縷だが、今回のは特に凄まじい。
異世界に来て舞い上がっているのか、それとも不安の表れなのか。
もし、後者の場合、一縷自身、自覚してないだろうけど。
とはいえ、いくら幼馴染でも引くわー。
一縷の奇行を止めるべく、立ち上がろうとした矢先、それよりも早く、憲吾が一縷の頭へ「ゴスッ!」と、チョップを落とした。
「一縷。うるさい、大人しくしてろ」
憲吾のゴツイ手で一撃され、一縷が「あうう」と呻き、畳の上へとへたり込む。
「ううう」と、目尻に涙を溜め、あまりの理不尽さに、恨みがましそうな目を憲吾へと向ける。
ま、今回の場合、一縷が全面的に悪いので自業自得なのだが、ここで言う理不尽とは憲吾の繰り出すチョップ、そのもののことだ。
大して力を入れているようにも見えないのに、なぜかやたらと痛いのである。
何、お前? 鉄で出来てんのってぐらい痛い。
もーお前、チョップ禁止な?
憲吾の鉄槌をくらい、テンションだだ下がって大人しくなった一縷を尻目に、憲吾がお子様へと質問を投げかける。
「で? 俺たちを召喚した、理由と目的は何だ?」
どうやら、憲吾はこのお子様の主張に乗っかるつもりらしい。
ま、ここが地球じゃないのは、一目瞭然なのだから、しばらく流れに身を任せようってことなのだろう。
このお子様が神様だろうと、ただのイタイ子だろうと、話を聞くだけ聞いてから、イロイロ判断すればいいのだ。
俺はとりあえず、口を挟まないことにした。
ちょっと中途半端かもしれませんが・・・・・・。




