第31話 光の糸(後編)
「――陛下。わたくし、もう一つ、試してみたいことがございますの」
水晶越しに報告を聞いていた魔王に、ミラージュが言った。
「この糸の先を、覗けないか、と」
【調査】光の糸について Part8
1:魔王 ◆VaLgRaVe
聖王国の召喚の間で、光の糸の調査をしている。
白石たちから、報告が届いた。
一、光の糸は、勇者の紋と同じ模様が、無数に編み込まれてできている。システムが編んだ道だ。
二、糸は、日ごとに細くなっている。十日前は指ほどの太さだったが、今は髪の毛ほど。
三、細くなっている原因は、糸の表面にこびりついた、瘴気の黒い粒。
井戸の水の道と同じで、詰まっている。
四、白石が、糸を傷つけずに、黒い粒だけを払い落とした。
糸は、少し太さを取り戻した。だが、白石の手が届くのは、根元のわずかな部分だけだ。
2:名無しさん
帰り道が詰まってる……
3:名無しさん
放っといたら切れるってこと!?
4:◆ビルメン二十年
>>1
配管の詰まりと、同じですね。
詰まりは、放っておくと、必ず悪化します。
そして、一番奥の詰まりほど、取りにくい。
白石さんが、糸を傷つけずに、汚れだけを取った。
それは、本当に、高度な技術です。
配管清掃で言えば、管を壊さずに内側だけを洗う、一番難しい仕事です。
5:◆PDCAおじさん
>>1
重要な情報です。
帰り道には、「期限」があるということですね。
そして、帰り道は、一度開けば終わりではなく、維持し続けなければならない。
6:名無しさん
メンテナンスが必要な帰り道
7:名無しさん
なんか、ゴール④の「行き来できるようにする」に繋がってる気がする
8:魔王 ◆VaLgRaVe
今、幻術師が、もう一つ試している。
糸の先を、鏡で、覗けないかと。
◆ ◆ ◆
召喚の間の真ん中で、ミラージュは、宙に浮かんでいた。
周りを回っていた手鏡が、一枚、また一枚と、光の糸に沿って、天窓の方へ、ゆっくりと昇っていく。
鏡と鏡が、光の糸を挟むように並び、互いの像を映し合う。
合わせ鏡だった。
鏡の中に、光の糸が、どこまでも、どこまでも、映り込んでいく。
「……もう少し」
ミラージュの額に、汗が浮かんでいた。
千年の幻術師の、両手が、小刻みに震えている。
「もう少しで……糸の、向こう側が……」
一番上の鏡が、ふっと、曇った。
曇りが晴れた時、鏡の中に、何かが映っていた。
夜だった。
◆ ◆ ◆
9:魔王 ◆VaLgRaVe
見えた。
幻術師の鏡に、糸の向こう側が、映った。
夜だ。
細長い、石の台のような場所。台の縁に、白い線が引いてある。
台の上に、屋根がついている。屋根の下に、明るい灯りが、等間隔に並んでいる。
昼のように明るい灯りだ。
台の横に、鉄の道が、二本、平行に伸びている。
10:名無しさん
駅のホームだ
11:名無しさん
ホームじゃん!!
12:名無しさん
白線と、屋根と、蛍光灯と、線路
13:名無しさん
まじで日本だ……
14:魔王 ◆VaLgRaVe
>>10
エキ、というのか。
白石が、鏡を見て、口を押さえている。
白石が言うには、「私が、最後にいた場所」だそうだ。
15:名無しさん
16:名無しさん
召喚された駅……
17:◆PDCAおじさん
>>14
……魔王さん。
鏡に、何か、文字のようなものは映っていませんか。
駅の名前を示す、看板のようなもの。
18:魔王 ◆VaLgRaVe
>>17
ある。台の柱に、白い板が掛かっていて、文字が書いてある。
我には読めん。幻術師が、形を写し取っている。
19:魔王 ◆VaLgRaVe
写した。形を、そのまま書く。
大きい字が、三つ。
一つ目。上に、横棒が三本。下に、何かが走っているような形。
二つ目。雨のような形の下に、何かが、うねっている。
三つ目。四角を二つ重ねて、その下に、台。
その下に、小さな、丸っこい字が、六つ並んでいる。
20:名無しさん
21:名無しさん
一つ目、「東」?
22:名無しさん
二つ目、雨かんむりの下にうねうね……「雲」!
23:名無しさん
三つ目、四角二つに台……「台」だな
24:名無しさん
東雲台?
25:名無しさん
しののめだい!
26:名無しさん
小さい丸っこい字が六つ、ひらがなで「しののめだい」だ!
27:名無しさん
異世界の魔女が写した漢字を、日本の掲示板で解読してる
28:名無しさん
この共同作業、胸熱すぎる
29:魔王 ◆VaLgRaVe
>>25
シノノメダイ。
白石が、頷いている。「合ってます」と。
30:◆PDCAおじさん
>>29
……東雲台駅。
去年の秋の、行方不明のニュース。あの駅です。
31:名無しさん
確定だ
32:名無しさん
光の糸は、東雲台駅のホームに繋がってる
33:◆ビルメン二十年
……私の職場から、電車で一時間ほどの駅です。
34:名無しさん
ビルメンさん、近い!?
35:魔王 ◆VaLgRaVe
もう一つ、映っている。
台の、柱に。灯りの下に。紙が、貼ってある。
紙の真ん中に、絵がある。いや、絵ではない。
本物そっくりの、人の姿が写し取られている。
白石の、顔だ。
36:名無しさん
37:名無しさん
え
38:名無しさん
それって
39:魔王 ◆VaLgRaVe
紙の上の方に、大きな文字。下の方に、小さな文字がたくさん。我には読めん。
白石が、読んでいる。
白石が、泣いている。
40:名無しさん
41:名無しさん
捜索の貼り紙だ
42:名無しさん
「行方不明者を探しています」ってやつ
43:名無しさん
一年経っても、貼ってあるのか……
44:◆PDCAおじさん
>>39
……ご家族が、一年間、探し続けていらっしゃる、ということです。
45:名無しさん
やめてくれ
46:名無しさん
泣くしかない
47:魔王 ◆VaLgRaVe
鏡の像が、消えた。
幻術師が、倒れた。魔力を、使い果たしたらしい。氷の四天王が、支えている。
白石は、鏡があったところを、ずっと、見上げている。
48:◆PDCAおじさん
魔王さん。
白石さんが、落ち着かれたら、伝えていただけますか。
私たちが、東雲台駅に、行ってみます。
それから、もし、白石さんが許してくださるなら。あの貼り紙に書かれている連絡先に。
49:魔王 ◆VaLgRaVe
>>48
伝える。
50:◆ビルメン二十年
私も、行きます。今週末に。
51:名無しさん
俺も行く
52:名無しさん
俺、東雲台の近くに住んでる。明日、見に行ってくる
53:名無しさん
帰り道編、本気で動き出したな




