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第3話 千の罠回廊(後編)

【悲報】勇者が殺せない件 Part3


1:魔王 ◆VaLgRaVe

報告する。

前スレの案に従い、我が軍の工兵隊長が百五十年の技術を注ぎ込んだ罠の街道を用意した。

落とし穴、落石、爆裂のルーン、粘着床、毒矢千本。

一つも発動しなかった。


2:名無しさん

ですよね


3:名無しさん

フラグ回収はやすぎ


4:名無しさん

一つもは草


5:名無しさん

なんで? 罠解除スキル?


6:魔王 ◆VaLgRaVe

>>5

分からん。斥候の報告では、勇者は街道にしゃがみ込み、枝を束ねたもので地面を払いながら、

ゆっくり歩いていたそうだ。

それだけで、落とし穴の覆いは取り払われ、魔蜘蛛の糸は消え、石の奥まで刻んだルーンも消えた。


7:名無しさん

枝を束ねたやつ? 魔法の杖みたいなもん?


8:名無しさん

ドルイド系じゃね。自然魔法で罠を無効化するやつ


9:名無しさん

しゃがんで地面見てるの想像したらシュールで草


10:名無しさん

ただの潔癖説

入院中で暇だから毎晩読んでるけど、この勇者、うちの後輩にちょっと似てる。

気になるとこ見つけると、頼まれてなくても手が動くタイプ


11:名無しさん

>>10

潔癖でルーン消えるかよ


12:魔王 ◆VaLgRaVe

>>8

その線はあり得る。異世界には、我々の知らぬ自然魔法の体系があるのかもしれん。

あと一つ報告がある。勇者が通った後、街道が新品のように綺麗になり、

行商人の間で評判になって、通行税の収入が倍になった。


13:名無しさん

www


14:名無しさん

税収上がってて草


15:名無しさん

勇者、魔王領のインフラ整備してくれてるじゃん


16:名無しさん

もう勇者を公共事業で雇えよ


17:魔王 ◆VaLgRaVe

>>16

笑い事ではない。我は勇者を倒したいのだ。道を綺麗にしてほしいわけではない。

いや、綺麗なのは助かるが。


18:名無しさん

本音出てて草


19:名無しさん

この魔王ちょいちょい善政の香りするんだよな


20:名無しさん

まじめな話していい?

毒→内側から攻めたけど効かない

魔獣→直接攻めたら取り込まれた

罠→間接的に攻めたら無効化

ってことは、勇者に「何か」させたら負けなんだよ。

しゃがんで何かする暇を与えるな


21:名無しさん

>>20

じゃあ油断してる時に一撃だな

仲間のふりして近づいて、寝首をかく


22:名無しさん

ハニトラ一択


23:名無しさん

美人スパイを仲間に潜り込ませて、デレたところでブスリ


24:名無しさん

古典的だけど一番効くやつ


25:名無しさん

勇者って基本女に弱いしな


26:魔王 ◆VaLgRaVe

>>21、>>23

実は歴代勇者のうち三人は、その方法で退けている。

我が軍の諜報部に、うってつけの者がいる。


27:名無しさん

実績あるのかよ


28:名無しさん

歴代勇者チョロすぎない?


29:名無しさん

今回は勇者が一人旅で寂しいはずだし、効きそう


30:名無しさん

いや犬いるだろ。白いの


31:名無しさん

犬は数に入れてやるなよ


32:魔王 ◆VaLgRaVe

この案を採用する。


33:名無しさん

どうせまた失敗するんだろうなあ(期待)


34:名無しさん

次スレも待ってる


◆ ◆ ◆


翌朝、魔王の執務室に一人の女が現れた。


「お呼びでしょうかぁ、陛下」


艶やかな紫の髪。背中には小さな蝙蝠の翼。夢魔族特有の、甘く絡みつくような声。

魔王軍諜報部の工作員、ネフィ。

歴代勇者のうち二人を、彼女一人で骨抜きにした実績を持つ。


「ネフィ。勇者の仲間として潜り込め。信頼を得たところで、寝首をかけ」

「はぁい、承知しましたぁ」


ネフィは指先で髪をくるくると弄びながら、くすりと笑った。


「今回の勇者さん、ずぅっと一人旅なんですよねぇ? 寂しい男の子なんて、一番ちょろいんですよぉ」

「油断するな。毒も、魔獣も、罠も通じなかった相手だ」

「大丈夫ですってぇ。毒や罠は効かなくても、恋は効きますからぁ」


ネフィは片目をつむってみせた。


「三日で落としてきますねぇ、陛下」


執務室を出ていくネフィの背中を見送り、ヴァルグレイヴは小さく息をついた。

頼もしい。歴代勇者の誰もが、彼女の前では赤子同然だった。

今度こそ。


「……陛下」


書類を抱えたリリエラが、ぽつりと言った。


「何だ」

「いえ。ただ、勇者の情報が『小柄』『声がこもってよく聞き取れない』

『兜を絶対に外さない』しかないまま送り出すのは、少々心許ないかと」

「男であることに変わりはあるまい」

「……はい。報告書には、そう書いてあります」


リリエラは、それ以上何も言わなかった。


――――――――――


【報告】勇者の進行度:15%


――――――――――

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