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第20話 黒騎士の諫言(後編)


【作戦会議】例の方救出作戦 Part19


1:魔王 ◆VaLgRaVe

報告する。

止めに来た四天王の話を、最後まで聞いた。

懸念は三つあった。

一、罠。システムが処理の日をわざわざ告げたのは、我を聖王国の召喚陣の前に誘い出すため。

二、戦。軍を率いて聖王国に入れば、三百年ぶりの戦になり、民が死ぬ。

三、我の命。我が倒れれば、国が終わる。


全て、正しかった。我には、見えていなかった。

この三つを潰す作戦を立てたい。

それと、その四天王は、三百年前、元・最初の勇者が剣を下ろした、あの少年兵だった。


2:名無しさん

え


3:名無しさん

まじかよ……


4:名無しさん

三百年越しの再会


5:名無しさん

この物語、伏線回収のたびに泣かせにくるのずるい


6:◆PDCAおじさん

>>1

魔王さん、素晴らしいです。

反対意見を聞いて、それを作戦の条件にする。

それができる上司は、なかなかいません。

では、一つずつ、いきましょう。


7:名無しさん

課長モード入った


8:◆PDCAおじさん

まず、二番目の「戦」から。

軍は動かさない。

少数精鋭で、密かに入る。

これは決定でいいと思います。

問題は、どうやって入るか。


9:名無しさん

幻術師さんの出番だろ


10:名無しさん

聖騎士団に化けて堂々と入るとか


11:魔王 ◆VaLgRaVe

>>9、>>10

幻術師は、行くと言っている。

我の変装を支えた時のように、部隊全員を、聖王国の巡礼者の一団に見せかけることはできるそうだ。


12:名無しさん

いいじゃん


13:名無しさん

でも魔王さん、また魔力切れになるんじゃ……


14:◆PDCAおじさん

>>13

そこが、三番目の「魔王さんの命」に関わりますね。

魔王さん。正直にお答えください。今、魔力と体力は、どのくらい残っていますか。


15:魔王 ◆VaLgRaVe

>>14

……半分も、ない。


16:名無しさん

だめじゃん!


17:名無しさん

脇腹も刺されてるしな


18:◆PDCAおじさん

でしたら、魔王さんは、戦わないでください。

戦うのは、四天王の方々にお任せする。

魔王さんの役目は、例の方の前に立つこと。

それだけです。

例の方を、最後に呼び戻せるのは、魔王さんの声だけでしたから。


19:名無しさん

>>18

それな。「茶は、うまかった」で正気に戻ったんだもんな


20:名無しさん

魔王さんの役目は、例の方に声をかけること


21:魔王 ◆VaLgRaVe

>>18

……分かった。我は、戦わん。


22:◆PDCAおじさん

そして、一番目の「罠」。

システムは、満月の夜に、魔王さんを召喚陣の前に立たせたい。

だったら、その筋書きに乗らなければいい。

満月の夜より前に、着いてください。


23:名無しさん

あ、そうか


24:名無しさん

相手の準備が整う前に先手を打つ


25:名無しさん

納期前倒しってやつか


26:◆PDCAおじさん

>>25

そうです。納期は、相手が決めたものに従う必要はありません。

ただし、着いた後に何が起きるかは、分かりません。

システムは、魔王さんの動きを見ています。

おそらく、前倒ししても、何かを仕掛けてくる。

ですから、もう一つ。現地の状況を、正確に知る手段が必要です。


27:名無しさん

スパイちゃんと連絡取れないの?


28:魔王 ◆VaLgRaVe

>>27

念話は、遠すぎて届かん。

聖王国に近づけば、届くかもしれんが。

だが、一つだけ、こちらから送れるものがある。

秘書官が教えてくれた。

宝物庫の目録の紋を使えば、例の方がつけている腕輪の石を、光らせることができるそうだ。

言葉は送れん。

光らせるだけだ。


29:名無しさん

モールス信号だ!


30:名無しさん

>>29

例の方、日本人だから、モールス分からなくても、何か伝わるかも


31:名無しさん

シンプルに、三回光らせたら「迎えに行く」でいいんじゃね


32:名無しさん

それ、こっちで勝手に決めても例の方には分かんないだろ


33:名無しさん

いや、分かるよ。たぶん

だって、あの腕輪を光らせられるの、魔王さんだけなんだから


34:魔王 ◆VaLgRaVe

>>33

……そうだな。


35:名無しさん

なあ、一個だけ聞いていい?

召喚陣って、例の方を日本からこっちに呼んだやつだろ。

それを逆に使ったら、例の方、日本に帰れるんじゃね?


36:名無しさん

>>35

それは……


37:◆PDCAおじさん

>>35

その可能性は、私も考えていました。

ですが、今は、一つずつにしましょう。

まず、取り戻す。

帰り道のことは、それからです。

例の方ご本人の気持ちも、聞かなければなりませんから。


38:名無しさん

そうだな


39:魔王 ◆VaLgRaVe

>>37

ああ。

……例の方は、帰りたいだろうか。


40:名無しさん

魔王さん……


41:名無しさん

それは、本人に聞こうぜ。ちゃんと会って


42:◆PDCAおじさん

作戦をまとめます。

・軍は動かさない。少数精鋭で、巡礼者に化けて入る

・満月の前夜に着く

・魔王さんは戦わない。役目は、例の方に声をかけること

・腕輪を光らせて、例の方に知らせる

・魔王さんは、生きて帰る

これで、いかがでしょう。


43:魔王 ◆VaLgRaVe

>>42

これで、行く。

皆、ありがとう。


44:名無しさん

行ってこい!


45:名無しさん

絶対連れて帰ってこいよ


46:名無しさん

魔王さんも、絶対帰ってこいよ


◆ ◆ ◆


その夜、魔王城の中庭に、小さな一団が集まった。

黒騎士ヴォルフ。

氷姫セルシア。

幻惑の魔女ミラージュ。

屍霊のモルド。

白銀の狼、シロ。

斥候のピッチ。

そして、旅装束に身を包んだ、魔王ヴァルグレイヴ。

城の守りは、リリエラと、バルドの北方守備軍が引き受けた。

炎獄のイグニスは、まだ眠り続けていた。


「陛下」


リリエラが、主の前に、小さな包みを差し出した。


「胃薬です。十包」

「……多い」

「十包です」


それから、秘書官は、主の手元に目をやった。

魔王の手には、あの日から、使い込まれて色の褪せた布が握られたままだった。

勇者の、布。


「陛下が、お持ちください。勇者に、お返しになるまで」


ヴァルグレイヴは、頷いて、布を懐の奥に、大事にしまった。


「リリエラ」

「はい」

「必ず、戻る。勇者と、ネフィを連れて」


秘書官は、深く、頭を下げた。


「お待ちしております。

……三百年、陛下が、こんなにたくさんの方と出かけられるのは、初めてですね」


ヴァルグレイヴは、自分の周りに集まった者たちを、見回した。

三百年、一人で全部を背負ってきた。

誰にも頼らず。

今は、違った。


「行くぞ」


魔王は、宝物庫の目録を広げた。

嘆きの腕輪の欄の、小さな光の点に、そっと指を触れた。

一度。二度。三度。

遥か南、聖王国の地下で、青い石が、三度、光ったはずだった。


――――――――――


【警告】魔王の外出を検知しました。

【報告】勇者の処理まで:二日と半日


――――――――――

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