↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
52/64

第18話 呪われた古城(前編)


【報告】鍋直しの件 Part16


1:魔王 ◆VaLgRaVe

報告する。

前スレの案に従い、旅の鍋直しに化けて、例の方の野営地を訪ねた。

例の方の鍋は、ぴかぴかで、直すところがなかった。


2:名無しさん

第一声それかよwww


3:名無しさん

鍋直し失業してて草


4:名無しさん

てか鍋直しに化けたのか


5:名無しさん

どうだった!? 喋れた!?


6:魔王 ◆VaLgRaVe

>>5

喋った。焚き火を囲んで。

胃に効くという薬草茶をもらった。うまかった。

例の方は、魔王について、こう言っていた。

「不器用で、優しい人なんだと思う」と。

会ったら、まず、結界を拭いてしまったことを謝りたい、と。

それから、ありがとうと言いたい、と。


7:名無しさん

うっ


8:名無しさん

本人の前で本人の話されてるの最高すぎる


9:名無しさん

魔王さん、その時どんな顔してたの


10:魔王 ◆VaLgRaVe

>>9

幻術師いわく、一瞬、幻が揺らいだそうだ。


11:名無しさん

動揺しすぎて変装解けかけてるの草


12:名無しさん

かわいいかよ


13:名無しさん

で、指輪は?


14:魔王 ◆VaLgRaVe

>>13

騎士団長が、期限を待たずに来た。

神託で、我が例の方の傍にいると知ったらしい。

例の方を、指輪で苦しめた。

砕いた。素手で。


15:名無しさん

かっけええええ


16:名無しさん

素手で!?


17:名無しさん

鍋直しのおっさんが騎士団長の指輪握りつぶすの、絵面最高


18:名無しさん

アニメ化したらここ絶対神作画


19:魔王 ◆VaLgRaVe

だが、騎士団長は去り際に言った。

「指輪は道具に過ぎない。紋は神のもの。

神が望めば、いつでも■■の命は神のもとへ還る」と。

それと、我は、例の方の紋に、直接触れた。

あれは、システムの板と、同じ気配がした。


20:名無しさん

え


21:名無しさん

つまり、紋の持ち主はシステム……?


22:◆PDCAおじさん

>>19

重要な情報、ありがとうございます。

整理します。

・システムは、魔王さんに板で指示を出している

・システムは、聖王国の大神官に、神託として指示を出している

・システムは、魔王軍の兵の額に印をつけて、直接操った

・例の方の紋も、システムのもの

つまり、システムは、魔王と勇者の両方を、最初から握っていた、ということになります。


23:名無しさん

やばすぎる


24:名無しさん

黒幕確定じゃん


25:◆PDCAおじさん

そしてもう一つ、気になることがあります。

魔王さん、例の方は、召喚された時、どんな様子だったのでしょう。

知らない世界に、突然呼ばれて。

魔王を倒せと言われて。

普通なら、混乱したり、拒んだりするはずです。

でも、例の方は、剣一本で、素直に城を出ている。


26:名無しさん

あ、確かに


27:名無しさん

言われてみれば、最初はなんの疑問もなく出発してたよな


28:名無しさん

例の方がのんびりした性格なだけかと思ってた


29:魔王 ◆VaLgRaVe

>>25

……考えたこともなかった。

歴代の勇者も、皆そうだった。

誰一人、召喚を拒んだ者はいない。

勇者とは、そういうものだと思っていた。


30:◆PDCAおじさん

>>29

十二人が十二人とも、ですか。

魔王さん。その紋が、例の方の命だけでなく、心まで握っているとしたら。


31:名無しさん

こわ


32:名無しさん

課長の推理が冴えすぎてて怖い


33:魔王 ◆VaLgRaVe

――すまん。来客だ。


◆ ◆ ◆


執務室の温度が、目に見えて下がった。

床を這うように、白い冷気が広がっていく。

燭台の火が、青く縮んだ。


「――魔王」


扉の前に、襤褸の外套をまとった骸骨が立っていた。

屍霊のモルド。

古戦場の夜以来、モルドは自室にこもり、誰とも口をきいていなかった。

千の亡者を失い、勇者に「拭われるわけにはいかぬ」と言い残して。


「モルド。どうした」

「異界の者どもとの、やりとりを聞いていた」


モルドの眼窩の炎が、ゆらりと揺れた。


「紋が、心まで握っているか、と。……あの者たちは、鋭いな」


ヴァルグレイヴは、骸骨を見つめた。

三百年の付き合いだった。

それなのに、ヴァルグレイヴは、この男のことを、何も知らなかった。


「お前は、何を知っている」


モルドは、すぐには答えなかった。

骨の指にはまった、錆びた指輪を、もう片方の骨の指で、ゆっくりと撫でた。

聖騎士団の紋章が刻まれた、指輪を。


「勇者は、もうすぐ城に着く」

「ああ」

「その前に、話しておかねばならぬことがある。魔王、貴様にではない」


モルドの眼窩の炎が、北の窓の外、城の手前に見える、崩れかけた古城の方へ向けられた。


「あの勇者に、だ」

「……なぜ、勇者に」


モルドは、背を向けた。

外套の裾が、冷気をまとって翻る。


「三百年前、誰も、我に教えてはくれなかったからだ」


それだけ言うと、骸骨は、執務室を出ていった。

ヴァルグレイヴは、閉じた扉を、長いこと見つめていた。

それから、掲示板に、一行だけ書き込んだ。



34:魔王 ◆VaLgRaVe

四天王の一人が、例の方に会いに行った。

三百年、何も語らなかった者だ。

我は、見届ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。