第18話 呪われた古城(前編)
【報告】鍋直しの件 Part16
1:魔王 ◆VaLgRaVe
報告する。
前スレの案に従い、旅の鍋直しに化けて、例の方の野営地を訪ねた。
例の方の鍋は、ぴかぴかで、直すところがなかった。
2:名無しさん
第一声それかよwww
3:名無しさん
鍋直し失業してて草
4:名無しさん
てか鍋直しに化けたのか
5:名無しさん
どうだった!? 喋れた!?
6:魔王 ◆VaLgRaVe
>>5
喋った。焚き火を囲んで。
胃に効くという薬草茶をもらった。うまかった。
例の方は、魔王について、こう言っていた。
「不器用で、優しい人なんだと思う」と。
会ったら、まず、結界を拭いてしまったことを謝りたい、と。
それから、ありがとうと言いたい、と。
7:名無しさん
うっ
8:名無しさん
本人の前で本人の話されてるの最高すぎる
9:名無しさん
魔王さん、その時どんな顔してたの
10:魔王 ◆VaLgRaVe
>>9
幻術師いわく、一瞬、幻が揺らいだそうだ。
11:名無しさん
動揺しすぎて変装解けかけてるの草
12:名無しさん
かわいいかよ
13:名無しさん
で、指輪は?
14:魔王 ◆VaLgRaVe
>>13
騎士団長が、期限を待たずに来た。
神託で、我が例の方の傍にいると知ったらしい。
例の方を、指輪で苦しめた。
砕いた。素手で。
15:名無しさん
かっけええええ
16:名無しさん
素手で!?
17:名無しさん
鍋直しのおっさんが騎士団長の指輪握りつぶすの、絵面最高
18:名無しさん
アニメ化したらここ絶対神作画
19:魔王 ◆VaLgRaVe
だが、騎士団長は去り際に言った。
「指輪は道具に過ぎない。紋は神のもの。
神が望めば、いつでも■■の命は神のもとへ還る」と。
それと、我は、例の方の紋に、直接触れた。
あれは、システムの板と、同じ気配がした。
20:名無しさん
え
21:名無しさん
つまり、紋の持ち主はシステム……?
22:◆PDCAおじさん
>>19
重要な情報、ありがとうございます。
整理します。
・システムは、魔王さんに板で指示を出している
・システムは、聖王国の大神官に、神託として指示を出している
・システムは、魔王軍の兵の額に印をつけて、直接操った
・例の方の紋も、システムのもの
つまり、システムは、魔王と勇者の両方を、最初から握っていた、ということになります。
23:名無しさん
やばすぎる
24:名無しさん
黒幕確定じゃん
25:◆PDCAおじさん
そしてもう一つ、気になることがあります。
魔王さん、例の方は、召喚された時、どんな様子だったのでしょう。
知らない世界に、突然呼ばれて。
魔王を倒せと言われて。
普通なら、混乱したり、拒んだりするはずです。
でも、例の方は、剣一本で、素直に城を出ている。
26:名無しさん
あ、確かに
27:名無しさん
言われてみれば、最初はなんの疑問もなく出発してたよな
28:名無しさん
例の方がのんびりした性格なだけかと思ってた
29:魔王 ◆VaLgRaVe
>>25
……考えたこともなかった。
歴代の勇者も、皆そうだった。
誰一人、召喚を拒んだ者はいない。
勇者とは、そういうものだと思っていた。
30:◆PDCAおじさん
>>29
十二人が十二人とも、ですか。
魔王さん。その紋が、例の方の命だけでなく、心まで握っているとしたら。
31:名無しさん
こわ
32:名無しさん
課長の推理が冴えすぎてて怖い
33:魔王 ◆VaLgRaVe
――すまん。来客だ。
◆ ◆ ◆
執務室の温度が、目に見えて下がった。
床を這うように、白い冷気が広がっていく。
燭台の火が、青く縮んだ。
「――魔王」
扉の前に、襤褸の外套をまとった骸骨が立っていた。
屍霊のモルド。
古戦場の夜以来、モルドは自室にこもり、誰とも口をきいていなかった。
千の亡者を失い、勇者に「拭われるわけにはいかぬ」と言い残して。
「モルド。どうした」
「異界の者どもとの、やりとりを聞いていた」
モルドの眼窩の炎が、ゆらりと揺れた。
「紋が、心まで握っているか、と。……あの者たちは、鋭いな」
ヴァルグレイヴは、骸骨を見つめた。
三百年の付き合いだった。
それなのに、ヴァルグレイヴは、この男のことを、何も知らなかった。
「お前は、何を知っている」
モルドは、すぐには答えなかった。
骨の指にはまった、錆びた指輪を、もう片方の骨の指で、ゆっくりと撫でた。
聖騎士団の紋章が刻まれた、指輪を。
「勇者は、もうすぐ城に着く」
「ああ」
「その前に、話しておかねばならぬことがある。魔王、貴様にではない」
モルドの眼窩の炎が、北の窓の外、城の手前に見える、崩れかけた古城の方へ向けられた。
「あの勇者に、だ」
「……なぜ、勇者に」
モルドは、背を向けた。
外套の裾が、冷気をまとって翻る。
「三百年前、誰も、我に教えてはくれなかったからだ」
それだけ言うと、骸骨は、執務室を出ていった。
ヴァルグレイヴは、閉じた扉を、長いこと見つめていた。
それから、掲示板に、一行だけ書き込んだ。
34:魔王 ◆VaLgRaVe
四天王の一人が、例の方に会いに行った。
三百年、何も語らなかった者だ。
我は、見届ける。




