第11話 燃え尽きない炎(後編)
【反省会】勇者が殺せない件 Part12
1:魔王 ◆VaLgRaVe
前スレでは、実況に付き合ってくれて礼を言う。
勇者は、左腕に火傷を負ったが、命に別状はない。工作員と魔獣も無事だ。
四天王は城に戻ってきた。胸の炉の炎が、青く澄んでいた。
「三百年ぶりに、息を吸った気がする」と言って、それきり自室で眠り続けている。
次の策を、考えねばならない。
2:名無しさん
おつかれ
3:名無しさん
勇者無事でよかった
4:名無しさん
四天王まで回復してて草
5:名無しさん
次どうする? 四天王あと二人いるんだっけ
6:名無しさん
実況、お疲れさまでした。記録を残していただいて、ありがとうございます。
前スレでお約束した通り、実況の記録と、過去スレのPart1からの報告を、全部突き合わせてみました。そのうえで、一つ、申し上げたいことがあります。
魔王さん。あなたは、反省をしていません。
7:名無しさん
おっ
8:名無しさん
課長きた
9:名無しさん
待ってた
10:魔王 ◆VaLgRaVe
>>6
……反省はしている。毎回、胃が痛むほどに。
11:名無しさん
>>10
胃が痛むのは、反省ではありません。後悔です。
前スレでも申し上げましたが、私も中間管理職です。仕事柄、どうしても気になってしまいまして。
魔王さんのやり方は、PDCAで言うと、PとDしか回っていません。
Plan(計画)を立てる。Do(実行)する。失敗する。また新しいPlanを立てる。Do。失敗。この繰り返しです。
Check(評価)と、Act(改善)が、抜けています。
12:名無しさん
言われてみれば
13:名無しさん
毎回「次の作戦!」ってなってたもんな
14:名無しさん
俺らも悪い
15:魔王 ◆VaLgRaVe
>>11
ピーディーシーエー。
……続けてくれ。
16:◆PDCAおじさん
>>15
ありがとうございます。では、Checkから始めましょう。
これまでの十一回の作戦を、結果と、勇者の行動で整理しました。
・Part1 毒殺→無効。勇者は食前に皿を拭いていた。宿の部屋と鍋が綺麗になっていた
・Part2 魔獣→瘴気消失、仲間化。勇者は布で前足を拭いた。酸っぱい匂い
・Part3 罠→全無効。勇者は枝の束で地面を払い、しゃがんで何かをした。街道が綺麗になった
・Part4 魅了→無効。短剣の呪毒→消失。勇者は短剣を「手入れ」した
・Part5 呪いの腕輪→一時的に有効、半日後に消失。勇者は「くすんだ」と言って布で拭いた
・Part6 幻術→ループごとに町が綺麗になり、最後は大鏡を布で拭いて消失
・Part7 亡者→布で拭かれて成仏
・Part8 湿原→浄化され湖に
・Part9 布告→逆効果(これは魔王さんの作戦ミスです)
・Part10 勧誘→辞退(これも作戦というより、勇者の意思です)
・Part11 炎→炉を布で拭かれて、炎が澄んだ
17:名無しさん
まとめ助かる
18:名無しさん
一覧で見ると、ほぼ全部「布で拭いた」じゃん
19:名無しさん
しかも全部「綺麗になった」で終わってる
20:◆PDCAおじさん
>>18、>>19
その通りです。共通項は二つあります。
一つ。勇者が対象に触れている。布、枝の束、または手で。
二つ。触れた後、対象が「清浄」な状態になっている。
毒、瘴気、呪い、幻術、怨念、煤。悪いものだけが取り除かれて、本体は残っている。
魔獣は死なずに白くなった。亡者は暴れずに成仏した。四天王は焼かれずに、むしろ元気になった。
21:名無しさん
ほんとだ
22:名無しさん
倒してるんじゃなくて、治してるんだな
23:◆PDCAおじさん
そして、例外が一つだけあります。
Part5の腕輪です。これだけは、一時的に効いた。
勇者は、呪いが効いてから、半日後に拭いた。
つまり、勇者は呪いに気づかなかった。腕輪が「くすんだ」と目に見えて分かるまで、何もしなかった。
ここから推測できるのは、勇者の能力は「自動で全てを防ぐ」ものではないということです。
勇者が「何かがおかしい」と認識して、初めて発動する。
24:名無しさん
なるほど
25:名無しさん
めっちゃ分析的
26:名無しさん
おじさん有能すぎる
27:魔王 ◆VaLgRaVe
>>23
……我も、腕輪の件で、勇者は呪いに気づいてから消す、と考えた。
だがそれを、次の作戦に活かしていなかった。
28:◆PDCAおじさん
>>27
そうです。それがActの欠落です。気づきを得ても、それを次に反映していない。
ただ、魔王さん。私が一番申し上げたいのは、そこではありません。
PDCAのPの前に、本来はもう一つ、決めるべきことがあります。
ゴールです。
魔王さんのゴールは、何ですか。
29:魔王 ◆VaLgRaVe
>>28
……生き延びることだ。勇者に討たれないこと。
30:◆PDCAおじさん
>>29
でしたら、魔王さんは今、そのゴールに向かって進んでいますか。
勇者は、魔王さんを討つと言っていますか。
31:名無しさん
あ
32:名無しさん
言ってないな
33:名無しさん
むしろ話をしに来るって言ってる
34:魔王 ◆VaLgRaVe
>>30
……言っていない。
35:◆PDCAおじさん
でしたら、勇者を倒す作戦を立て続けることは、ゴールに対して正しい手段でしょうか。
私は、魔王さんに今必要なのは、新しい作戦ではなく、正確な情報だと思います。
勇者は何者なのか。何ができるのか。何を考えているのか。
それが分からないまま、怖いから倒す、倒せないからまた別の手で倒す、を繰り返しても、
ゴールには近づきません。
36:名無しさん
刺さる
37:名無しさん
俺の上司に聞かせたい
38:名無しさん
>>37
分かる
39:◆PDCAおじさん
ですので、私からの提案です。
次のPlanは、「勇者の情報を集める」こと。
幸い、勇者の一番近くに、魔王さんの部下がいます。
その方に、勇者の素顔、能力、考えていることを、きちんと確認してもらってはいかがでしょう。
攻撃のためではなく、理解のために。
40:魔王 ◆VaLgRaVe
>>39
……三百年、勇者を理解しようと思ったことは、一度もなかった。
その案を、採用する。
工作員に、勇者のことを、きちんと調べさせよう。
41:名無しさん
PDCAおじさん、レギュラー入りしてほしい
42:名無しさん
反省会スレ、これから毎回やろうぜ
43:◆PDCAおじさん
>>41、>>42
恐縮です。私でよろしければ、Checkのお手伝いをいたします。
魔王さん。最後に一つだけ。
胃が痛むのは、一人で抱えているからです。こうして周りに相談できるのは、立派なことですよ。
44:魔王 ◆VaLgRaVe
>>43
……礼を言う。
45:名無しさん
おじさん……
46:名無しさん
急に泣かせにくるのやめて
47:名無しさん
次スレも待ってる
◆ ◆ ◆
板を閉じたヴァルグレイヴは、しばらく、手元の羊皮紙に何かを書きつけていた。
リリエラが覗き込むと、そこには見慣れない文字が四つ、並んでいた。
P。D。C。A。
「陛下。それは」
「異界の、仕事の作法だそうだ」
魔王は、羊皮紙を机の端に、丁寧に置いた。
「ネフィに繋げ。勇者の手当ては済んだか、聞いてくれ。それから」
少し、言葉を選んでから。
「勇者のことを、教えてほしい、と伝えてくれ。
何者なのか。何を考えているのか。……攻撃のためではなく、と」
リリエラは、一礼した。
「承知しました。ネフィも、きっと喜びます」




