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第10話 拝啓、魔王様(後編)

【相談】勇者が殺せない件 Part10


1:魔王 ◆VaLgRaVe

報告と、相談がある。

前スレの案に従い、勇者を我が国の環境整備局の初代局長として迎えたいと、書状を送った。

断られた。

理由は二つ。一つ目は、現場の仕事が好きで、管理職になると胃を壊すから、だそうだ。

二つ目は、今の自分の仕事は「魔王に会うこと」だと考えている。

会って直接話を聞いてから、自分が何をすべきか決めたい、と。

勇者は今、話をするために、我が城へ向かっている。


2:名無しさん

管理職は胃を壊すwww


3:名無しさん

魔王に一番刺さる理由で断るな


4:名無しさん

勇者、魔王が胃弱なの知ってて書いてない?


5:魔王 ◆VaLgRaVe

>>4

知っている。書状の最後に「胃をお大事に」と書いてあった。


6:名無しさん

優しいwww


7:名無しさん

敵の大将の胃の心配する勇者


8:名無しさん

スパイちゃん絶対なんか喋っただろ


9:名無しさん

てか待って、二つ目の理由めちゃくちゃいい話じゃない?


10:名無しさん

>>9

それな。会って話したい、は完全に和解ルートの流れ


11:名無しさん

会えばいいじゃん


12:魔王 ◆VaLgRaVe

>>11

それが、相談したいことだ。

我には、三百年前に告げられた予言がある。

魔王は、勇者によって討たれる、と。

勇者にその気がなくても、勇者が城に来て我と会えば、予言が成就するかもしれない。

勇者自身も知らない力が、勇者の中にあるのだから。

会うべきだろうか。


13:名無しさん

急に重い相談きた


14:名無しさん

予言って誰が言ったの?


15:魔王 ◆VaLgRaVe

>>14

我を魔王に任じた存在だ。「システム」と呼んでいる。

我の前に板を浮かべ、文字で語りかけてくる。


16:名無しさん

システム? ゲームのシステムメッセージみたいなもん?


17:名無しさん

え、そいつ怪しくね?


18:名無しさん

そもそも、なんでそのシステムってやつは魔王に勇者を倒させたいの?


19:名無しさん

勇者を召喚してるのも、勇者が来るたびに通知してくるのも、そいつなんだろ? 

自分で勇者呼んで、自分で魔王に倒させてるの、マッチポンプじゃん


20:魔王 ◆VaLgRaVe

>>19

勇者を召喚しているのは、聖王国だ。システムではない。

……と、我は三百年、そう考えてきた。


21:名無しさん

今の「……」が全てを物語ってる


22:名無しさん

これ絶対黒幕システムだろ


23:名無しさん

>>22

落ち着いてください。まだ断定はできません。

横から失礼します。過去スレを最初から読ませていただきました。

そちらの世界で言うところの中間管理職、物流会社で課長をしている者です。

魔王さん。会うか会わないかを、今ここで決める必要はないと思います。

判断の材料が、まだ足りていないからです。システムとは何者なのか

勇者の力は何なのか。分からないことが多すぎます。

分からないまま決めた判断は、たいてい後で胃を痛めます。

まずは、情報を集めましょう。


24:名無しさん

俺は会うの賛成。予言とか知らん。

三百年殺し合いしてきて、初めて話し合おうって言ってくれた相手だぞ


25:名無しさん

俺は慎重派。勇者本人がいい人でも、勇者の力が勝手に発動する可能性はある。

会う場所とか方法は考えた方がいい


26:名無しさん

直接会うのが怖いなら、間に誰か挟めばいいんじゃね? スパイちゃんとか


27:魔王 ◆VaLgRaVe

>>23、>>24、>>25、>>26

皆、ありがとう。もう少し考えてみる。

――すまない。少し、席を外す。急な報告が入った。


28:名無しさん

どうした


29:名無しさん

なんか起きた?


30:魔王 ◆VaLgRaVe

戻った。

四天王の一人が、我の許可なく出撃した。炎を操る者だ。

勇者の勧誘の話を聞きつけたらしい。

「魔王は腑抜けた。勇者は俺が焼き尽くす」と言い残して、

配下の炎の軍勢を率いて、勇者のもとへ向かっている。


31:名無しさん

え


32:名無しさん

独断専行!?


33:名無しさん

止められないの?


34:魔王 ◆VaLgRaVe

>>33

念話で呼び戻した。応じない。あれは昔から、我の命令より己の炎を信じる男だ。


35:名無しさん

中間管理職の悲哀


36:名無しさん

部下が言うこと聞かないの、胃に悪すぎる


37:名無しさん

でも勇者なら大丈夫じゃね? 今までも何とかなってきたし


38:名無しさん

>>37

いや、炎はやばくね。

今までは呪いとか瘴気とか幻とか、なんか消せるやつだったけど、火は純粋な物理だろ

勇者、本人は強くないんだぞ


39:名無しさん

魔王さん、一つご提案です。

水晶玉で現地の様子を見られるのでしたら、戦いが始まったら、ここで実況していただけませんか。

何が起きたのかを、その場で記録しておく。それが、後で原因を分析する一番の材料になります。

これまでの作戦は、結果の報告だけで、途中で何が起きたのかが分かりませんでした。

私たちも、一緒に見ます。一人で見ているよりは、胃にも優しいはずです。


40:名無しさん

魔王さん、今、勇者に倒されてほしくないって思ってない?


41:魔王 ◆VaLgRaVe

>>39

分かった。戦いが始まったら、ここで実況しよう。

>>40

分からん。

だが、我の返事を待たずに、話をしに来る者を焼かせるわけにはいかない。

それだけは分かる。


42:名無しさん

かっこいい


43:名無しさん

魔王さん、がんばれ


44:名無しさん

勇者も、がんばれ


◆ ◆ ◆


ヴァルグレイヴは板を閉じ、立ち上がった。


「リリエラ。ネフィに念話を繋げ。それから、ガルムにもだ」

「承知しました」

「炎獄のイグニスが、勇者のもとへ向かっている。勇者に伝えさせろ。逃げろ、と」


リリエラの手が、一瞬だけ止まった。


「陛下。それは、四天王の作戦行動を、敵である勇者に漏らすということになります」

「分かっている」


魔王は、窓の外を見た。南の空が、夕焼けとは違う色に、赤く滲んでいた。


「勇者は、我に会いに来ると言った。剣ではなく、話をしに。

……その返事を、我はまだしていない」

リリエラは、静かに一礼した。


「すぐに、繋ぎます」


――――――――――


【警告】魔王の行動は、勇者への利敵行為と判定されます。

【警告】繰り返します。勇者は、魔王を討つ者です。


――――――――――

ヴァルグレイヴは、板を手で払った。

板は、消えなかった。

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