第7話 千の亡者の行列(後編)
【悲報】勇者が殺せない件 Part7
1:魔王 ◆VaLgRaVe
報告する。
前スレの案に従い、四天王の一角が率いる千の亡者をぶつけた。
勇者は押し倒され、追い詰められた。
だが覆いかぶさった亡者の頭蓋骨を布で拭くと、亡者は頭を下げ、光になって消えた。
それを見た残りの亡者が、剣を捨て、勇者の前に一列に並んだ。
勇者は夜明けまで、千の亡者を一体ずつ拭き続けた。全員、光になって消えた。
2:名無しさん
え
3:名無しさん
なにそれ
4:名無しさん
亡者が自分から並んだの?
5:魔王 ◆VaLgRaVe
>>4
並んだ。押し合うことも、争うこともなく。
順番を待つように。
あの亡者たちは、三百年前の戦で死に、地の底で呪いに縛られていた者たちだ。
6:名無しさん
ちょっと待って泣く
7:名無しさん
成仏の行列じゃん……
8:名無しさん
三百年待ってたのか
9:名無しさん
一体ずつ頭下げて消えていくの想像したら無理
10:名無しさん
このスレで泣くと思わなかった
11:名無しさん
夜明けまでって、千体だろ? 勇者、一晩中休まず拭いてたの?
12:魔王 ◆VaLgRaVe
>>11
そうだ。途中から工作員が隣に座り、何も言わずに布を渡し続けていた。
魔獣は、列の横でずっと見守っていた。
13:名無しさん
パーティーの絆が深まってる……
14:名無しさん
スパイちゃん完全に勇者側じゃん
15:魔王 ◆VaLgRaVe
>>14
戦いの最中、工作員は亡者に向けて魔法を撃っていた。勇者を守るために。
16:名無しさん
寝返った……
17:名無しさん
魔王さん、スパイちゃん処分するの?
18:魔王 ◆VaLgRaVe
>>17
しない。
19:名無しさん
即答
20:名無しさん
この魔王いいやつすぎる
21:名無しさん
で、四天王の人はどうなったの?
22:魔王 ◆VaLgRaVe
>>21
生きている。いや、元から死んでいるが。
最後に勇者の前に立ち、勇者は四天王にも布を差し出した。
四天王はそれを断り、「まだ拭われるわけにはいかない」と言って去った。
去り際に、勇者に一言だけ告げたそうだ。「あの国を信じるな」と。
23:名無しさん
え、急に不穏
24:名無しさん
あの国って勇者を召喚した国?
25:名無しさん
伏線きた
26:名無しさん
勇者を召喚する国が実は黒幕パターンか?
27:名無しさん
てか魔王さん、その四天王の過去知らないの?
28:魔王 ◆VaLgRaVe
>>27
三百年の付き合いだが、詳しくは知らん。
本人が語らないのでな。
ただ、あの国の名が出るたびに、様子が変わる。
29:名無しさん
絶対なんかあるやつ
30:名無しさん
話がでかくなってきた
31:名無しさん
いったん整理しようぜ。で、次どうするの?
勇者は戦うと周りが味方になる。
戦わせると負ける
32:名無しさん
>>31
じゃあ戦わせないで足止めしかない
地形で物理的に進めなくする。
沼地とか
33:名無しさん
瘴気の沼とかないの? 歩くだけで体力削られて、進むのに何週間もかかるようなやつ
34:魔王 ◆VaLgRaVe
>>33
ある。魔王城へ至る道の途中に、腐泥の大湿原が広がっている。
瘴気が濃く、我が軍ですら迂回する土地だ。
今は勇者の進路から外してあるが、道を塞いで、そちらへ誘導することはできる。
35:名無しさん
それだ。足止めして時間稼いでる間に、次の策を考えようぜ
36:名無しさん
なんか俺ら、魔王の参謀みたいになってきたな
37:名無しさん
参謀っていうか、もはやファンクラブ
38:魔王 ◆VaLgRaVe
瘴気の沼地の案を採用する。
皆、ありがとう。
39:名無しさん
急に素直で草
40:名無しさん
魔王さん、今日ちょっと元気ない?
41:魔王 ◆VaLgRaVe
>>40
そんなことはない。
ただ、少し考えている。
三百年前、あの平原で死んだ者たちのことを。
42:名無しさん
……次スレも待ってる
43:名無しさん
待ってる
◆ ◆ ◆
板を閉じた後、ヴァルグレイヴは執務室の書棚から、古い帳簿を一冊取り出した。
三百年前の戦の記録。
魔王に任じられて最初の年、自分の手で書いたものだ。
古戦場の平原。
魔王軍の戦死者、二百十三。聖王国軍の戦死者、千余り。
あの千の亡者は、その時の聖王国の兵たちだったのかもしれない。
いや、魔王軍の者も混じっていたのだろう。
どちらにせよ、三百年、地の底で。
「……あの国を、信じるな、か」
モルドが勇者に告げた言葉を、ヴァルグレイヴは繰り返した。
その時だった。
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【通知】魔王の閲覧権限外の情報へのアクセスを検知しました。
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ヴァルグレイヴは、帳簿から顔を上げた。
閲覧権限。自分で書いた帳簿を読むのに、そんなものが要るのか。
浮かんだ板は、それ以上何も告げずに、すうっと消えた。
魔王は、しばらくその空間を見つめていた。
それから、帳簿を閉じて、元の場所に戻した。
指先が、わずかに冷たくなっていた。




