第6話 鏡の町は終わらない(後編)
【悲報】勇者が殺せない件 Part6
1:魔王 ◆VaLgRaVe
報告する。
前スレの案に従い、千年の幻術師に、幻の宿場町を作らせた。
町を出て半日歩くと、同じ町に戻ってくる仕掛けだ。
勇者は二度、同じ町に戻ってきた。気づいた様子はなかった。
だが、ループするたびに町が綺麗になっていった。
窓が光り、石畳が光り、噴水が澄み、幻の住人が台本にない台詞を喋り始めた。
三日目、勇者は町の核である大鏡を布で拭いた。
町が消えた。
2:名無しさん
ループのたびに町が綺麗になるの怖すぎるだろ
3:名無しさん
ホラーじゃん
4:名無しさん
幻の住人が台本にない台詞喋りだすの、普通にゾッとする
5:名無しさん
勇者、ループものの主人公の素質ありすぎ。周回するたびに環境改善していくタイプ
6:名無しさん
鏡拭いたら幻が消えたってことは、やっぱ布がキーアイテムじゃん
7:名無しさん
>>6
いや、核が鏡だったからたまたま拭いたんじゃね? 鏡が曇ってたら拭きたくなるのは分かる
8:名無しさん
分かるな
9:魔王 ◆VaLgRaVe
>>7
幻術師いわく、鏡には幻術そのものが霧のように張りついていたらしい。
普通の者には曇りに見えるはずだと。
勇者には、我らの魔術が「曇り」に見えているのかもしれん。
10:名無しさん
おっ、核心に近づいてきた
11:名無しさん
魔術を曇りとして認識して、拭くと消える……?
12:名無しさん
どういう能力だよそれ
13:名無しさん
勇者専用の「解呪の眼」みたいなパッシブと、布型の聖遺物のセット運用とか
14:名無しさん
うーん、一個一個は説明つくけど、全部まとめると意味不明なんだよな
15:名無しさん
このスレ、だんだん推理ゲーになってきてて楽しい
16:名無しさん
てか幻術師さん大丈夫?
千年の術を布で消されてメンタル死んでない?
17:魔王 ◆VaLgRaVe
>>16
戻ってきてから、自室にこもっている。
愛用の手鏡を、勇者に拾ってもらったらしい。
曇りが取れて、自分の顔がこれまでになくはっきり映るようになったと言って、ずっと眺めている。
18:名無しさん
メンタル死んでないどころか回復してて草
19:名無しさん
勇者のせいで魔王軍の幹部が次々と癒やされていく
20:名無しさん
ここまでの被害まとめ
・魔獣→ペット化
・工兵隊長→引退宣言
・スパイ→餌付け
・幻術師→自分の顔に見とれてる
21:名無しさん
被害なのかそれ
22:魔王 ◆VaLgRaVe
>>20
工兵隊長は何とか慰留した。来月の橋の架け替えがあるのでな。
23:名無しさん
橋の架け替え優先で草
24:名無しさん
この魔王、ちゃんと公共事業の心配してるの好き
25:名無しさん
まじめな話、小細工はもう全部通じないって考えた方がいいと思う
毒も罠も呪いも幻術も、勇者からすると「消せるもの」なんだろ
じゃあ消せないものをぶつけるしかない。純粋な数と力
26:名無しさん
そろそろ四天王出すべきでは?
27:名無しさん
それな。なんで幹部温存してんの
28:名無しさん
アンデッド系の四天王とかいない? アンデッドなら毒も呪いも関係ないし、数で押せる
29:魔王 ◆VaLgRaVe
>>28
いる。我が軍の四天王の一角、屍霊のモルドは、千の亡者の軍勢を率いている。
30:名無しさん
いるのかよ
31:名無しさん
千の亡者は強そう
32:名無しさん
アンデッドって浄化されたら終わりじゃね……?
33:名無しさん
>>32
しっ
34:魔王 ◆VaLgRaVe
四天王を出す。屍霊のモルドの案を採用する。
35:名無しさん
ついに四天王編か
36:名無しさん
次スレも待ってる
◆ ◆ ◆
板を閉じたヴァルグレイヴは、窓の外の夜空を見上げた。
勇者には、我らの魔術が「曇り」に見えているのかもしれない。
自分で書き込んでおきながら、その言葉が妙に引っかかっていた。
曇り。汚れ。それを拭い取る。
まさか、と思う。そんな単純な話のはずがない。
百年、誰一人として破れなかった魔王軍の術が、そんなもので。
「陛下」
リリエラが、湯気の立つ茶を机に置いた。
「ミラージュ殿から、伝言です」
「何と」
「『あの勇者を、次はちゃんと見てみたい』と」
ヴァルグレイヴは、茶に手を伸ばしかけて、止めた。
「……あれも、か」
「はい。あれも、です」
リリエラは淡々と答え、少し間を置いて付け加えた。
「陛下。モルド殿は、他の方々とは違います。あの方は、生きている者を誰も信じません」
「分かっている。だから選んだ」
魔王は、ようやく茶を口に運んだ。
いつもより、少しだけ苦い気がした。




