第4話 夢魔は三日で落とす(後編)
【悲報】勇者が殺せない件 Part4
1:魔王 ◆VaLgRaVe
報告する。
前スレの案に従い、我が軍の諜報部から、歴代勇者を何人も骨抜きにした夢魔族の工作員を送り込んだ。
仲間に潜り込むことには成功した。
だが魅了が一切効かず、寝首をかこうとした呪毒の短剣は、翌朝ぴかぴかに手入れされて返ってきた。
工作員は現在、勇者に揚げパンを買ってもらっている。
2:名無しさん
揚げパンwww
3:名無しさん
ハニトラ失敗どころか餌付けされてて草
4:名無しさん
短剣手入れして返すのイケメンすぎるだろ
5:名無しさん
勇者のスパダリ感がすごい
6:名無しさん
ちょっと待って、魅了が効かないってどういうこと? 夢魔の魅了って最強クラスじゃないの
7:魔王 ◆VaLgRaVe
>>6
最強クラスだ。並の男なら目が合っただけで落ちる。歴代勇者で耐えた者はいない。
だが今回の勇者は、肩にもたれかかられたらマントをかけ、
同じ部屋に誘われたら宿代が浮くと喜び、寝台で待っていたら窓の桟の埃を気にしていたそうだ。
8:名無しさん
窓の桟www
9:名無しさん
姑かよ
10:名無しさん
鈍感系主人公で草
11:名無しさん
なろう主人公あるあるの鈍感力がカンストしてる
12:名無しさん
精神耐性ガン積みビルドだな。毒耐性、呪い耐性、精神耐性。完全に状態異常無効構成
13:名無しさん
>>12
それだ。状態異常系は全部効かないと思ったほうがいい
14:名無しさん
いや、短剣の呪毒が「消えてた」のが気になる。耐性なら自分に効かないだけで、短剣の毒は残るはず
15:名無しさん
>>14
確かに。犬の瘴気も消えてたし、罠のルーンも消えてた。耐性じゃなくて「消す」能力っぽい
16:魔王 ◆VaLgRaVe
>>15
鋭い。我もそう考えている。勇者は、触れた呪いや毒を「消す」。
だが、どうやって消しているのかが分からん。詠唱もなく、魔力の動きもない。
17:名無しさん
聖属性の常時発動パッシブとか?
18:名無しさん
消す能力なら、触れなきゃいいって前スレで結論出てたじゃん。罠も触れられて終わったけど
19:名無しさん
じゃあ逆に考えようぜ
消す前に、勇者自身に呪いを背負わせればいい。自分で外せない呪いを、本人に装備させる
20:名無しさん
>>19
呪いの装備か! 外せないやつ
21:名無しさん
ゲームの定番だな。装備したら最後、外れない呪い
22:名無しさん
幸い、仲間にスパイいるじゃん。プレゼントとして渡させればいい
23:名無しさん
スパイからのプレゼントなら警戒されないしな
24:魔王 ◆VaLgRaVe
>>19、>>22
理にかなっている。呪いの装備は、身につけた者の生命力を少しずつ吸い取る。
消す暇も与えず、勇者自身を蝕む。
だが一つ懸念がある。工作員の様子が、少しおかしい。
25:名無しさん
おかしいって?
26:魔王 ◆VaLgRaVe
報告の最後に、揚げパンがおいしかったと呟いていた。
27:名無しさん
落ちてるのスパイの方じゃねーか
28:名無しさん
ミイラ取りがミイラになってて草
29:名無しさん
勇者の攻略スキル高すぎる
30:名無しさん
犬の次はスパイかよ。勇者パーティー、魔王軍から順調に人材流出してるな
31:魔王 ◆VaLgRaVe
>>30
やめろ。考えないようにしていたことを言うな。
32:名無しさん
図星で草
33:魔王 ◆VaLgRaVe
呪いの装備の案を採用する。宝物庫から、とびきりのものを用意しよう。
34:名無しさん
スパイがちゃんと渡してくれるといいね(棒)
35:名無しさん
次スレも待ってる
◆ ◆ ◆
板を閉じたヴァルグレイヴは、しばらく天井を見つめていた。
勇者は、触れたものの呪いや毒を消す。
掲示板の住人の言う通りだ。耐性ではない。消している。
ガルムの瘴気も、ドルガンのルーンも、ネフィの短剣の呪毒も。
「……リリエラ」
「はい、陛下」
「宝物庫の、『嘆きの腕輪』を出せ」
リリエラの手が、書類をめくる途中で止まった。
「……あれは、身につけた者の生命力を吸い続け、決して外れない呪具です。
先々代の勇者を、ひと月で衰弱死させた」
「知っている」
「ネフィに、渡させるのですか」
「そうだ」
リリエラは少し間を置いてから、静かに口を開いた。
「陛下。差し出がましいようですが、ネフィは念話で泣いておりました」
「窓の桟に負けたとか言っていたな」
「いえ。昨夜です。陛下との念話が切れた後、私のところに、もう一度」
ヴァルグレイヴは、秘書官の顔を見た。リリエラの表情は、いつもと変わらなかった。
「何と言っていた」
「……勇者さんが優しくて、苦しい、と」
執務室に、沈黙が落ちた。
「……腕輪は、出せ」
魔王は、低い声で言った。
「我は死にたくない。それに変わりはない」
「承知しました」
リリエラは一礼して下がった。
扉が閉まる音を聞きながら、ヴァルグレイヴは、胃のあたりを強く押さえた。
今日の痛みは、いつもと少し、場所が違う気がした。




