208話目 カエデが居ない間の拠点で
カエデがアイ達と行動を共にしていたころ、拠点ではアオイが新たな研究の成果を上げていた。
「出来た。高木用に調整したナノマシンだ。だが、本当にいいのか? 私は男性用に調整したのはこれが初めてだぞ?」
「ああ、構わない。中尾のおっさんと違って俺は何の役にも立てないからな」
「まあ、私としては実験体が増えれば文句はないが。それに、これのDNAは一種類。ハルカ君から貰ったものだけだぞ?」
「分かっている。俺はそいつ以外に選ぶつもりは無い」
「ふむ・・・」
その言葉を聞いて、アオイの元に人間に変身しているミカコが小声で話しかける。
(所長、これって恋じゃないですか?)
(だろうな。私でも分かるほど分かりやすいな。使徒化した時には同じ種類の者同士しか子供が出来ないからな)
(でも、ハルカさんは好意に気が付いてなさそうですけど)
(まあ、本人は恋愛する気が全くなさそうだからな。私も人の事は言えんが)
(それで、成功率はどれくらいですか?)
(そうだな、70%くらいの確率でナノマシンは定着するだろう。ただ、DNAがなじむかどうかは正直30%程度しか無いと思っている)
(結構な賭けですね。伝えますか?)
(いや、きっともっと確率が低くても飲むというだろうからこのまま飲ませる)
「では、この液体を飲み干すのだ。少しでもこぼすと足りなくなるから、こぼすなよ?」
「ああ、分かった」
高木はアオイから試験管を受け取り、一気に口へ入れる。だが、思ったよりも飲みづらかったのか、眉間にしわが寄ってきた。けれども、ここでやめるわけにはいかず、ゆっくりと確実に飲み込んでいく。
「はぁっ、はぁっ、飲み干したぞ。これでいいんだな?」
「ああ。適合していれば、もうしばらくすればナノマシンによって体が変化するだろう」
「分かった」
しばらくすると、高木の体に変化が起きてきた。肌が緑色になり、爬虫類の姿となる。
「よかったな、成功だ」
「これが、ハルカと同じ力・・・」
「運のいいやつだ。よし、貴重なサンプルデータだ。体を調べさせて貰うぞ?」
「ああ、分かった。だが、その前にハルカに報告してきてもいいか?」
「駄目だ。データが先だ」
「・・・分かった」
成功したら成功したで、貴重なデータが欲しいアオイは、高木の恋心を知っていながらもハルカに会いに行く許可を出さなかった。それをミカコがジト目で見ていたが、研究優先の性格は分かっているので指摘はしない。
それから半日の間、徹底的にデータを取られ疲弊する高木だった。




