189話目
機械の修理が完成してからどれくらいの月日が経ったかは分かりませんが、桜が咲いているので春になったようですね。アオイさんはそれを見て、今日を4月1日としたようです。カレンダーが無いけれど、これから機械は正確に日時を刻んでくれますね。探せばまだ動いている時計とかもありそうですが、今のところ見たことはありません。ハルカさんが太陽や星の位置で季節が分かるとかどうのこうのと言っていましたが、私にはよくわからないですね。
「カエデ!」
「どうしたんですか? アオイさん」
私が日課のハルカさんとの模擬戦をしていると、アオイさんが部屋へ飛び込んできました。
「これを試してくれ! カエデのナノマシンサンプルでは成功した。あとは結果を見るだけだ!」
「・・・それって、私で人体実験するってことではないでしょうか?」
「ああ、そうだ」
「「・・・・・・」」
アオイさんが臆面もなくそう言い放ったので、私とハルカさんはジト目でアオイさんを見ます。
「そうだな、まずは説明が必要だな。じゃあ、私の研究の最初から話そう」
「そう言えば、聞いたことがありませんでしたね。今度リナさんに会った時に教えてあげましょう」
リナさんはこういうのに興味がありそうなので。ちなみに、リナさんは今、現状を把握するために再び日本を渡り歩いています。ユカリさんが作成した植物で出来たバイクに乗って。バイクは、タイヤの代わりにキャタピラになっていて、だいぶ舗装がはげて粗いアスファルトでも問題なく走れます。
時速は20キロほどなので、私は自分で走った方が早いですが、リナさんは体力が無いのでちょうど良さそうです。
燃料は光と水で、超効率の光合成でエネルギーを作って走るので、実質ソーラーカーみたいなものですかね。ただ、夜間は走れませんが。日中に充電・・・? しておけば多少は走れますが、エネルギーが無くなりすぎると枯れるので注意が必要です。
で、アオイさんの話でしたね。
「私は治験者に様々なタイプのDNAを試して貰った。一つはマリアが飲んだ爬虫類及び両生類。一つはユカリ君が飲んだ植物全般。一つはアヤヒ君が飲んだ哺乳類。一つはアサミ君が飲むはずだった虫類。そして、ミカコ君が飲んだ魚類だ。アサミ君のものを結局カエデが飲んだのだな」
「そうですね。それで、私が本来飲むはずだったDNAは鳥類でしたっけ?」
「そうだ。よく覚えていたな。そして今、その鳥類のDNAが手に入ったのだ!」
「そんなもの、どこで手に入れたんですか?」
「瀬戸大橋に居たヴァリアントから抽出した。機械が作れたからこそできたことだな。また、思ったよりも中尾が研究者として使い物になったという事もある」
実は、あれから研究者の男はアオイさんの手伝いとして生かされています。最初は情報だけ貰ってポイするつもりだったのですが、さすが独学でエリの細胞からバイオ兵器を作っただけはあり、頭脳明晰だったようです。ちなみに元自衛隊の男である高木さんも残っています。
ハルカさんも元自衛隊という事で、なんか仲良くなったみたいなので。共通の話題があるというのは強いですね。それを除いても、サバイバルやその他の知識なんかも豊富で、意外と役に立つんですよね。
「で、それを私に飲めと?」
「そうだ。もともとカエデに合わせて作ったものだから、拒絶反応もないはずだ」
「でも、それって人間の時の話ですよね? 私は今、もう虫のDNAを取り込んだあとですよね?」
「だからサンプルで試したのだ。問題なかった」
「・・・本当に問題なかったんですよね? ちなみに、飲んだらどうなります?」
「恐らく、鳥類の力が手に入るはずだ」
「恐らくですか・・・」
「実際に飲む以外に確かめるすべはないからな。サンプルのナノマシンが拒絶反応を示さなかったのだから、カエデ本体も問題ない・・・と思う」
「そこは断言してほしいところなんですが」
「断言は無理だ。いくらシミュレートしても、実際にどうなるかは分からん」
「・・・分かりました。協力しますよ」
別に今更、鳥類の力が欲しいとは思いませんが・・・いえ、ちょっと飛んでみたいという欲はありますね。なので、飲んでみる事にしました。さすがに、死んだりはしないですよね?




