184話目
「リナさん、カエデが一人で行っちゃったんだけど、大丈夫なんですか?」
「大丈夫でしょ。カエデはなんだかんだ言ってこの中では一番強いし」
「えっ、そうなんですか? カエデの体育の成績、小学校低学年の時はともかく、高学年から中学の時は1か2でしたよ」
カエデは5年生から食事が満足に食べられなくなったため、基本的に体力を使わないようにしていたため、体育ではかなり手を抜いていたので成績が悪かった。運動神経が悪いというわけではなく、単純に体力温存である。それに、父親はカエデの学校の成績など全く見る事もなく、興味も無かったため、それが問題になることも無かった。
「へぇー。意外ね。ハルカさんとの訓練で慣れたのかしらね」
「カエデがやばそうなら、私も援護に行きますね」
「きっと必要ないと思うけど、こっちは私が見張ってるから大丈夫よ」
リナとアヤヒは、もうすでに観戦に決め込んでいた。ただし、男たちが逃げないようにきちんとそちらにも気をかけている。エリは現在のカエデの強さを知らないため、ハラハラとしながら熊との戦闘を見ていた。
「すごい。本当に戦えてる・・・」
「あれはもう、練習台にしてるわね。4本の腕を綺麗に受け流しているわね」
カエデは熊のヴァリアントを使ってハルカの訓練の復習をしていた。4本の腕の攻撃を瞬時に判断し、自分の体勢が崩れないように動き、弾く。逆に受け流し、ひっぱり、熊の体勢を崩す。まだ止めは刺さない。
中尾や高木も、小さなカエデが大きな熊の攻撃を耐えていることに驚いていた。見た目だけなら、一発でも食らえば死ぬようにしか見えない。
「もうそろそろ終わりそうね。熊が疲れからか攻撃が大振りになってきたし、体勢も大きく崩れてきてるわ」
「カエデの右腕、光ってません?」
「力を籠めるとああなるみたいだよ。ってことは、そろそろ止めね」
リナの予想通り、カエデは熊の攻撃を一段と強く弾くと、熊の鳩尾ががら空きになる。カエデは、そこに向かって右手を突き込む。熊は核を破壊され、ちりとなって消えた。カエデの右腕は、ひときわ大きく光ると、プシューッと蒸気のようなものを発した。
「ただいま!」
「おかえり。どうだった?」
「アヤヒさんの言ってた通り、硬くて普通の攻撃はあまり通じなかったので最後は右腕に頼ってしまいました」
「それもカエデの力なんだからいいんじゃない?」
「はい。それと、やっぱり倒した時に右手に何か違和感を感じたんですよね」
「それって大丈夫なの?」
「悪い感じはしないんですよ。ただ、不思議な感じです」
私の右手で止めを刺した瞬間、何かが流れ込んできたような感じがしました。これまでにも何度かあった事ですけど、それがいい事なのか悪い事なのかは分かりません。少なくとも、私に害があるという事はない気がします。だって、これが起きるたびに私は―――。




