147話目 マリア
「わたくしの見立て通り、簡単に侵入できましたわね」
マリアは、某国の重要施設へと侵入していた。マリアの目には、敷地内に張り巡らされたセンサー類やカメラ類がどこにあるのかすぐに見える。さらに、赤外線センサーも判るため、誰にも気づかれることなく中枢まで侵入する事が出来た。
「こんにちわ」
「だ、誰だ! どうやってここまで侵入した!」
「おい、侵入者だ!」
その場にいた兵士が、すぐに腰につるしてあるホルスターから拳銃を抜きマリアへと向ける。
「かよわい女性にいきなり銃を向けるなんて、やはりこの国は野蛮ですわね」
「何の用だ! 抵抗しなければ、警察に突き出すだけで許してやる」
「あら、甘いですわね」
マリアは、撃つべきか撃たぬべきか迷っている兵士の一人に近づくと、素早くその腕に噛みつく。
「つッ! このやろう!」
兵士はすぐにマリアを殴りつけるが、マリアはするっと避けて距離を離す。
「がっ、いきが・・・」
兵士の顔が青ざめ、ゆっくりと地面へ倒れた。
「撃て! 敵だ!」
その時点で完全に敵だと判断した兵士たちが一斉にマリアへ拳銃を撃つ。胸、腹、足、腕、顔と全身にくまなく銃弾を撃ち込まれ、衝撃でマリアは壁に打ち付けられずるずると座り込む。
「よし、撃ち方やめ。目的は分からなかったが、侵入者は射殺した。おい、噛まれた兵士をすぐに医務室へ運ぶぞ!」
「初めて銃弾という物を食らいましたけど、この程度ですのね」
「なっ、馬鹿な! 確かに当たっていたはずだぞ!」
マリアのシスター服には確かに銃弾が当たった証拠として穴が開いており、その付近も血で赤くなっているが、肝心の傷跡は無くなっていた。
「でも、傷を治すとお腹が空きますのよね」
マリアはさっき倒れた兵士の傍へ座ると、おもむろに顔を近づける。
「何をする気だ! 離れろ!」
「食事ですわよ。邪魔しないでくださいね?」
マリアはそう言うと、兵士の腕へと噛みつき、肉を引きちぎって飲み込む。その異常な行動に、戦闘に慣れているはずの兵士ですら呼吸をするのも忘れるくらい見入ってしまう。
「ば、化け物だ! 殺せ、撃ち殺せ!」
兵士たちは再びマリアを拳銃で撃つ。しかし、さっきは確かに傷を負わせたはずの銃弾が、マリアの皮膚を貫けなくなっていた。
「ナノマシンの学習機能。自動的に受けた攻撃に有効な進化をしますわ」
「な、何を言って・・・」
マリアの表皮には鱗の様なものがびっしりと生えそろっていた。その鱗が銃弾をはじいていたのだ。
「さて。それでは食事を一時中断して、仕事を始めますわ。じゃないと、2人にあとで文句を言われてしまいますもの。―――皆殺しですわ」
マリアはシスター服を脱ぎ、パサリと地面へ落とす。その時にはすでにマリアの姿は異形へと変化していた。
「化け物、化け物だ!」
「それしか言えないんですの?」
マリアは一瞬で兵士に近づくと、腕を振る。それだけで兵士の上半身は吹き飛んだ。さらに、尻尾でもう一人の兵士も叩き潰した。十数人居た兵士達は、あっさりと全滅するのだった。




