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ゾンビにされた  作者: 斉藤一


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139話目

「とは言ったものの、私はほとんど何も知らないのだがな。その代わり、アヤヒ君にとっては10年前の記憶になっているが、私にとっては最近の記憶として残っている」

「それは、どういう事?」

「私とカエデは、最近になって目を覚ましたのだ。だから、その間に地上で起こったことは全く知らない」

「なるほどね。だから、あんな風に知らない人と行動出来たって事ね」

「知らない人じゃないですよ。少なくともリナさんに関しては、敵対していた上で私達と行動してるんです」

「はぁ? それって何があったの?」

「その前に、アヤヒさんの知ってることを教えて貰えませんか? ずっと気になっていたんですよ。10年前に何があったのか」

「ユカリさんも一緒に行動してたのなら、だいたい知ってるんじゃないの?」

「アヤヒちゃん、悪いけど私も10年前で何があったかほとんど知らないのよ。ただ、あの子が私達と相いれない存在だということは知ってるわ。けれど、全員が全員、あの子の思想に染まってるわけじゃないのよ」

「ユカリ君は、私が倒されるより先にマリアに気絶させられていたからな。まあ、そのあとに私も殺されかけ、色々あって10年間眠ることになったがな」

「そうなのね」


 アヤヒさんは、少し考えるように無言になりました。私達は、じっとアヤヒさんが話すのを待ちます。


「じゃあ、順番に話すわね。ナノマシンを取り込んだ後、しばらくしてから急にマリアが暴れだしたの」

「それは私も覚えてるわ。廊下で出会った瞬間、私は攻撃されたんだもの」

「そのあと、私も襲われたのよ。けど、私だってただやられるわけには行かないから、抵抗したわ。だけど、ほとんど同時期に力を得たはずなのに、彼女はまるで事前にそうなるのが分かっていたかのように力の扱い方を知っていたのよ。だから、私もあっさりやられちゃったわ。けど、気絶はしなかったからすぐに研究所から逃げ出したの」

「よく逃げ出せたな。研究所から出るには、複数の身分証が無ければ開かない扉があったはずだが」

「ええ。その時は無我夢中で何も考えずに飛び出したけど、不思議とその扉はすべて開かれていたの。研究所の外まで、すべての扉は開かれていたわ」

「なんだと? 誰が一体そんなことを・・・」

「それはいまだに分からないけどね。そのあとは、私は研究所の近くに隠れていたわ。ユカリさんもカエデちゃんも見捨てられなかったし。だけど、あいつが出てきたから逃げざるを得なかったわ。しばらくして、あいつが居なくなったことを確認してから研究所に行ったけど、入口がセメントで完全に封鎖されていたわ。見張りもいたし、一旦は諦めてここ、徳島に向かったわ」

「私は太陽の光を浴びて少し回復したから、デコイの種を撒いてその場を離れたわ。ただ、そのあと数年間は山の中でずっと眠っていたの。きっと体がまだ馴染んでいなかったのね」

「それは仕方ないかもしれないな。体の構造が人から離れるほど、眠りにつく時間が長くなるのだろう。アヤヒ君が取り込んだのは哺乳類のDNAをメインとしたナノマシンだから、一番体になじむのが早かったんだろうな」

「そういう休眠期間みたいなものがあるのね。だから、私に追手がかかるまで時間があったのかしら」


 アヤヒさん達の話から、10年前に何があったのか大体分かりました。

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