137話目
私がハルカさんとアオイさんの間を通り抜けてヴァリアントに近づくと、蔓は私を攻撃するどころか、むしろ避けていきます。まさか、ユカリさんの意志がヴァリアントにもあるとか? けど、それだとユカリさんに攻撃するのはおかしいから違うかな。
「やっぱり、私に攻撃は来ません!」
「蔓はそうかもしれんが、本体は分からんぞ! 気をつけろ!」
「はい!」
私は本体の前で一度止まります。敵はビルの様に巨大であり、適当に攻撃してもおそらくすぐに再生するだけで効果は無いと思います。
私はぐるりと本体の周りを走り、何かないか探しました。ヴァリアントはユカリさんが吸収した眷属のヴァリアントと同様に人型をしていますが、顔のパーツは無く、体もカカシの様にのっぺりですが、どことなく女性っぽい作りです。
ヴァリアントは、私の動きに合わせて顔の様な部分を向けますが、目は無いので何か他の物で確認しているんでしょう。
「カエデ! 胸の部分だ! 胸の部分に他と違う色が見えた!」
「私とアオイが囮になる! 隙を見て攻撃してくれ!」
「分かりました!」
私は敵の体の絡み合った蔓を足場にしながら、胸の部分に近づきます。そこには、アオイさんが見つけたものがありました。バスケットボールくらいの、緑色の宝石の様な球体です。
「!! ヴァリアントが叫んでいるわ! くるな、くるなって!」
「ってことは、やっぱりそこが弱点なのね! カエデ、やっちゃって!」
「はあぁぁぁ!」
私はワニのヴァリアントを倒した時の様に、右手に力を集中させます。右腕は数倍に太くなり、少し赤熱したところで振り上げます。
一瞬、ヴァリアントが恐怖したような気配を感じました。それでも私に攻撃してこないヴァリアントに違和感を感じますが、私が倒さなければアヤヒさんを探すことも、後ろで戦っているアオイさんやハルカさんを助けることも出来ません。
「てりゃぁぁ!」
私は迷いを捨て、防ぎたくても防げないような挙動をする植物のヴァリアントの、核である緑色の宝石を殴ります。宝石が砕け散ると、ヴァリアントは全身を震わせたあと、緑色だった蔓が茶色く枯れていきました。
崩壊したヴァリアントの核の残骸は、まるで私の右腕に吸い込まれるように、微かな光の粒子となって消えていきました。
数十メートルはあった巨躯が、まるで砂の城のように音を立てて崩れ落ち、あたりに激しい砂煙と枯れ葉の嵐を巻き起こします。
「……やったか」
「あのデカいの一撃か……」
アオイさんがナイフを収め、ハルカさんも私の規格外の破壊力に驚いています。そういえば、ハルカさんの模擬戦では私は一切この力を使っていませんでしたね。
不思議な事に、私の右腕の熱はなかなか冷めず、まるで何かを「捕食」したかのような奇妙な満腹感が残りました。




