119話目
「そこで止まれ」
ミユちゃんから10メートル離れたくらいの場所でストップがかかる。私が止まると、ミユちゃんは鼻をクンクンとさせて匂いを嗅ぐ。
「確かにそのリュックから食い物の匂いがするな。ゆっくりとあたしに近づいてこい。他の奴は絶対に動くなよ」
私は言われた通り、ミユちゃんにゆっくりと近づく。アオイさんたちも言われた通り動かない。
「これでいいですか?」
私は目の前のミユちゃんにリュックを突き出す。
「今確かめるから動くなよ」
ミユちゃんは私からリュックをひったくると中を確認する。中にはリナさんとハルカさんの食料が入っている。
「本当に食料だ・・・。これだけの食料、一体どうやって手に入れた?」
「その前に、アヤヒさんについて先に教えてください。ここにアヤヒさんは居るんですか?」
「なぜそんな事を知りたがる? アヤ姉の知り合いか?」
「私の大事な友達です」
「アヤ姉の友達・・・? お前、いくつだよ」
「えっと・・・いくつでしょう?」
私自身も今何歳と言えばいいのか分からない。私の思っている年齢は13か14歳だけど、10年経っているなら普通に23歳くらいになってしまう。どう見ても私を見てその年齢を思い浮かべるのは無理だろう。ただでさえ成長していない私は幼く見える。
「・・・なめてんのか? いや、ああ、正確な年齢じゃなくていいぞ」
ミユちゃんは私が正確な月日が分からなくて年齢が分からないのだと勘違いしたみたいだ。
「多分、23歳?」
「学の無いあたしにだってさすがにそれは嘘だと分かるぞ」
「じゃあ、13です」
「じゃあってなんだよ。一気に変わりすぎだろ。それに、13ならアヤ姉と知り合う機会なんて無い年齢だ」
「でも、本当に友達なんです。ここにいるなら、顔を見れば分かるはずです」
「・・・ここにはいねぇよ。随分前に親戚の集まりで会ったのが最後だ」
「その力、アヤヒさんから貰ったんじゃないんですか?」
「あん? この力を得たのはたまたまだ」
ミユちゃんが言うには、ある日仲間が人面犬を捕まえて来たらしい。人面犬自体は殺すとミイラの様になったらしくて、その姿は見ていないが、その犬肉を使ったスープを食べることになった。
すると、ミユちゃん以外の人達は徐々に知性を無くし、今の様になってしまった。しばらくして、ミユちゃんはオオカミに変身する力を持っていることに気づいたらしい。そして、それはもう10年くらい前とのこと。ミユちゃんはそれから成長もしなくなったらしい。
知性を無くしたみんなのために、ミユちゃんが食料を主に集めなければなくなった事。年が経つにつれ、人が減り、だんだんと見つかる食料も無くなってきたことなどを聞いた。
「街へ行こうとは思わなかったんですか?」
「街は支配されていて、どう考えてもあたしにとっていい場所とは思えなかったし、何よりそこへ行ったらみんなが殺されてしまいそうだったし」
確かに、ヴァリアントと呼ばれるような人たちを連れていったら、すぐに殺されてしまうかもしれません。
「アヤヒさんが行きそうな場所って分かりますか?」
「アヤ姉は四国の出身だから、そこに向かったのかもしれねぇ」
「情報、ありがとうございます」
「・・・本当に、その食料は貰っていいのか? 今更だけど、お前みたいなやせた子供から食料を奪うのは気が引ける」
「私は食べる必要が無いので大丈夫ですよ。それに、大阪へ行けば食料を分けてもらえますし」
「そうだわ、私が種を作ってあげる」
私とミユちゃんが話しているところでユカリさんがパンと手を叩いてそう言った。
「お肉は無理だけど、野菜ならすぐに育つものを作れるわ。芋やカボチャみたいに日持ちしてどこでも育つものならどうかしら?」
「まあ、そればっかりはキツイけど、無いよりは全然マシだ」
ユカリさんはそれを聞いて、いくつかの種を作り、ミユちゃんへ渡しました。




