114話目
「模擬戦だから、弾はゴム弾に変えるわね。当たり所が悪ければ怪我をするかもしれないけど、どうする?」
「別に私は実弾でも構わないぞ? 銃弾程度の傷ならすぐに治るからな」
「でも、殺し合いじゃないからゴム弾にするわ」
戦う前に準備をしているハルカさん。ハルカさんは拳銃のマガジンをゴム弾に交換してから訓練場の真ん中へと進む。
「私の準備は終わったわよ」
そう言うと、ハルカさんは左手に拳銃、右手にトンファーを構える。
「ふむ。そんな戦い方は見たことないな」
「それはそうよ、私が考えた自分に合うスタイルなんだから」
「それじゃあ、私はそこにある木のナイフを借りようか」
アオイさんは置いてある武具のうち、木のナイフを2本借りて両手に持つ。
「私の準備も完了だ」
「では、私が開始の合図役を務めよう。お互い怪我はすぐに治ると考え、ある程度本気でやってくれて構わない。恐らく、致命傷を与えることは不可能だろうから、ある程度実力が判断出来るまでやってくれて構わない」
「分かった」
「了解しました」
「それでは、始め!」
オミさんの合図と同時に、ハルカさんは力を使い、顔が変化した。アオイさんはそれを見て跳ねる。アオイさんのジャンプは天井にも簡単に届くようで、上下にジグザグに跳んでハルカさんに近づいていく。
「そこっ!」
ハルカさんは、上下に動くアオイさんに向かって拳銃を発射した。けれど、それをアオイさんは回避する。ハルカさんは3発撃って、このままでは当たらないと思ったのか銃を撃つのをやめた。
アオイさんは、銃を撃つのをやめたハルカさんに向かって跳び、ナイフを振る。
「さすがに、強いわね」
「君もよく私のスピードについてこれる」
そのナイフをハルカさんは右手のトンファーで受けた。受ける時に少し引いて衝撃を和らげ、動きが少し止まったアオイさんにハルカさんは拳銃を撃つ。けれど、引き金を引くのを見てからアオイさんは顔を傾けて避け、トンファーを蹴って距離を取る。
「なるほど、ある程度の実力は分かった。それじゃあ、カエデもやってみるか?」
「えっ、私もですか?」
「そっちの子も? 私はいいわよ、仲間の実力は知っておきたいし」
ハルカさんはそう言うと、拳銃に弾を補充し始めた。
「そ、それじゃあ、お願いします?」
「では、始め!」
オミさんもとめることなく、そのまま試合は始まった。ハルカさんは普通に立っている私に拳銃を向けると引き金を引いた。
その弾は、私の眉間を正確に撃ち抜いた。
「あ、ご、ごめん! アオイちゃんみたいに避けるのかと思って!」
私の顔は少しだけ上を向くけど、それだけだ。
「大丈夫です。全く効いていませんから」
「そうなの? それじゃあ、続けるわね」
ハルカさんは遠慮なく私に拳銃を撃つ。それは正確に私の鳩尾、心臓、股間、肩を撃ち抜く。だけど、そのどれも私には全く効かない。弾を無視してハルカさんに近づくと、ハルカさんも撃つのをやめてトンファーを回し、打ち付けてきた。
「それも利きません」
私は素手でトンファーを受けると、手をパーにしてハルカさんの胸を押そうとする。けれど、ハルカさんはそれを回避してトンファーをくるりと回し、私の手首をひっかけて後ろへと投げた。
「わっ」
私は地面に倒され、その顔面にトンファーの先を突き付けられる。これが本当の闘いならそのまま継続するのだが、体術では私はハルカさんに勝てないと判断した。
「私の負けですね」
「まあ、私の攻撃も効いてないようだから引き分けかな」
ハルカさんは謙虚にそう言って拳銃を片付ける。
「カエデ、もういいのか?」
「はい。私じゃハルカさんに触れることができなさそうなので」
「そうか・・・? まあ、いいだろう。ハルカの実力は十分に分かった。よろしく頼む」
アオイさんもハルカさんを正式に仲間と認め、同行を許したのだった。




