106話目
私の予定では、ワニの口の中へ飛び込んだ後、上の方をぶち抜いて倒す予定でした。
「嘘っ!?」
けれど、私の予想とは違ってワニは普通に口を閉じました。その噛む力は恐ろしく強く、私がとっさに振り上げた右腕と牙がぶつかり―――ワニの牙を砕きます。ワニの力よりも私の方が力が強いようで、私のそのまま喉奥へ突き込みました。
口内は、柔らかい肉ではなく、外同様に金属のように固く、バキバキという音が響きます。
「うぁぁぁぁっ!」
私はそのまま思い切り腕を振りぬき、ワニの口から脱出します。かちあげられたワニの巨体は、そのまま沈むと動かなくなりました。どうやら、倒せたようです。
「再生は・・・しないようですね」
「どうやら、再生力をすべて防御力に回していたようだ。それにしても無茶をしたなカエデ。まあ、おかげで助かったが」
「カエデ、大丈夫?!」
リナさんが慌てて近寄ってきました。アオイさんも、近寄ってきて私の右腕を確認しています。私の右腕はもう元の大きさに戻っていますが、エネルギーを高めすぎたのか、湯気を出しています。
「骨は無事のようだが、ナノマシンのエネルギーで細胞が焼けている。少し休めば治るだろうが……リナ、まずは服だ。これを着ていろ」
リナさんの服はワニに破られたため、アオイさんが予備の服を渡しました。そうしている間に、ワニの巨体は崩れていっています。
「ワニの巨体自体がナノマシンによって作られていたようだな。死んだ今、それが崩壊しているのかもしれん」
「あっ、何か落ちてますね。これって、アヤヒさんがつけていた腕輪じゃ・・・」
ワニの死体の横に、錆びた腕輪が落ちています。
「似たようなアクセサリーではなく、本当にアヤヒ君のものなのか?」
「年月が経ってボロボロでけど、私の記憶だと最後に見たのは数日前ぐらいなので、比較することができます。だから、これはアヤヒさんの物です」
「そうか・・・。そうすると、アヤヒ君もここでワニに襲われたということか」
「まさか、食べられちゃったのか?」
リナさんの無神経な言葉に、私とアオイさんは静かにリナさんを見つめます。
「・・・ごめんなさい」
「いえ、実際にどうなのか分かりませんから、少し調べていってもいいですか?」
「それは構わないよ。というか、私も手伝うから」
私達は、手分けしてこの辺を調べますが、他にまったく手掛かりはありません。
「さすがに、この広い琵琶湖を隅々まで調べるのは現実的じゃありませんよね」
「そうだな。そこに時間をかけるなら、先に大阪へ向かって情報を聞いた方がいいだろう。そこを訪れたという情報があれば、ここを調べる必要は無くなる。もし、ここを調べるにしても人手が要るだろう」
「そうですね。それじゃあ、先に大阪へ向かいましょう」
そういったところで、リナさんのお腹がグゥと鳴るのが聞こえました。ナノマシンの力を使ってエネルギーを使ったからでしょう。
「せっかくだから、ここで魚を捕まえてきていい?」
「そこのワニを食べたらどうですか?」
「え・・・それ本気で言ってる? というか、ワニって食べられるの?」
「さあ、それは知りませんけど」
「ワニ料理は日本でも食べらているところがあるから、恐らく食べることはできるだろうな」
「えぇ・・・けど、やめとく・・・」
リナさんは、さっきまで自分を襲っていたワニを食べる気にはならないようですね。




