100話目
目を開けると、青空が見える。つまり、私は倒されたということだ。生きてはいるけど、体が重くて起き上がれそうにない。
「・・・・・・私、負けたんですね」
「あ? もう目が覚めたのか。呼吸をしてないから、てっきり殺しちまったかと思ったが、生きてたようだな」
「・・・・・・私、もともと呼吸をしていないので」
私はゆっくりと体を起こす。今の間にもナノマシンが体を治しているようで、徐々に体の痛みが引いていく。シズカさんを見ると、変身を解いたのか、綺麗な大柄の女性の姿だった。
「私、どれくらい寝ていたんですか?」
「寝ていたって程じゃねぇよ。まだ10分くらいしか経っていないぞ」
「そうですか」
私は手を開いたり閉じたりして体の調子を確認する。もう少しすればいつもの状態に戻ると思う。
「カエデがシズカお姉さまに殴り掛かった時、本当にびっくりしたんだから!」
「ごめんなさい。けど・・・」
私はアヤヒさんの方を見る。やはりアヤヒさんは倒れたままで起き上がる様子は無い。
「カエデが寝ている間に、あのアヤヒ君を確認したが、恐らく本人じゃないぞ」
「本当ですか!?」
私はアオイさんに詰め寄って確認する。アオイさんは続けて口を開いた。
「ああ。ほぼアヤヒ君に見えるが、この間の野犬と一緒だ。動物はどうやらナノマシンを取り込むと人間寄りの姿になるようだ。ただ、動物にも相性があるのか、こいつは見た目がほぼアヤヒ君だったというだけの様だ。おそらく、研究所から出てすぐに見た個体だろう」
「そうですか・・・。本人じゃないとしても、埋葬していいですか?」
「ああ、それは構わないだろう」
私はアヤヒさんの姿をした野犬のために穴を掘る。そこへ埋葬した後、シズカさんの元へ向かう。
「シズカさん、ごめんなさい。私の勘違いで攻撃してしまいました」
「気にするな、別にそれくらいで怒りやしないさ。ここへ来た目的はリナから聞いた。知り合いを探しているんだって?」
「はい。一人はさっきの野犬の姿と一緒のアヤヒさんで、もう一人はユカリさんと言う大人の女性です」
「あたしが知る限り、ここにはどっちも来てねぇな」
「そうですか・・・。他に見た方が居ないか、ここを治めている方に確認したいのですが」
「確認の必要はねぇよ。誰も見てないって」
「そんなの、分からないじゃないですか。ここの使徒様に会わせてください」
「だから、あたしがここの使徒だ」
「そうよ。シズカお姉さまは第一使徒で、神奈川を治めているんだから。もう、殺されても本当に文句は言えないわよ!」
シズカさんがここの一番偉い人だったみたい。姿を変えた時点で気が付くべきだったけど、頭に衝撃を受けたせいかボーッとしていたようだ。
「それにしても、強いんですね」
「こう見えても、あたしはプロレスラーだからな」
そういわれれば納得の姿だ。むしろ、納得しかない。
「私、自分の力を過信してたみたいです」
「いや、その力は誇っていいぞ。あたしがダメージを受けたのは初めてだからな」
「え。お姉さま、ダメージを受けてたんですか?」
「ああ。今はもう治っているが、恐らく内臓が破裂していたな。腕も片方にひびが入っていたと思う」
「それでも平気そうに見えたんですけど・・・」
「痛くても痛そうに見せないのがプロレスラーって職業だからな」
どうやら、私の攻撃が全く効いていなかったわけじゃなく、効いていたけど効いていないように見せていただけみたいだ。




