第十五話 第二迷宮
「わぁ…!」
ダンジョンの階段を下った先で思わず声が出てしまう。
「やっぱり驚くよね。迷宮の中にこんな景色が広がってるんだから…」
目の前には森が広がっていた。空は青く、降り注ぐ光で木漏れ日が地面を照らしている。
「ここ…地下ですよね?まるで外にいるみたいな景色ですけど…」
「タイシ…迷宮には色んなタイプがあってね?昨日の第四迷宮は【洞窟型】、今日の第二迷宮は【自然型】なの…自然型の迷宮は天井が高くてまるで外みたいに明るい光源があるんだよ…」
「そして、その迷宮のタイプによって出現するモンスターが違うんだ、今回狙ってるオークは自然型の迷宮によくいるからこの第二迷宮に来たってわけ。」
「なるほど…」
確かにいくら魔物でも自分に合った環境でないと生きていくのは難しい…のだろう。断言はできないが。
「ところで…この道の通りに進んでも大丈夫なんですかね…?」
階段の前で立ち止まる僕らの目の前には草の生えていない土の道がある。
「大丈夫、この道は今まで、数々の冒険者達が踏みしめて来たから出来た道だよ。この道に従って歩けば自然と次の階層に着いてるさ。」
そう言っていつの間にか歩き出していたトラジに急いでついて行った。
「そういやタイシ、エレナ、今日からは君達をメインに戦ってもらうよ?」
「えーと…どうしてですか?」
「だって、まだ僕の方が強いからね。僕ばっかり戦ってると君達のレベルが上がらないもの。」
…言われてみればそうだ。いつまでもキャリーされたままじゃ僕らの実力もステータスも上がらないだろう。
「分かりました…ちなみにピンチの時は助けてくれますか?」
「もちろん、大事な弟子だからね。絶対に守るよ。」
当たり前だと言う顔で彼はそう言ってくれた。
「タイシ、出てきたみたい…」
少し歩いたところで辺りの木の裏から魔物が出てくる。
エレナがいち早く気づいて剣を抜き、僕もそれに従う。
出てきたのは3体のオークだ、人型の体だが頭部は豚のような見た目。しかし、大きな牙が生えており、猪の様な恐ろしい顔をしている上、身長は2mほどもある…
でも、スケルトンキングよりは怖くない。
「タイシ、どう戦う?オークは数匹での連携が特徴の魔物だから…そのまま突っ込んでも勝つのは難しいよ?」
オーク達は皆、鉄の剣を持っている。僕が上手く隙を作りさえすればエレナの魔法で止めを差せるはずだ。
「エレナ、僕が切り込んで動きを止める。魔法をそれに合わせて撃って欲しい。」
「分かった…」
返事を聞き力強く踏み出す。前に並んだ二体の隙間を通り抜けながら斬撃を入れようとする。
しかし…ガキィン!という音がして攻撃が防がれる。
「くそっ…」
攻撃に合わせて片方のオークが道を遮る様に剣を出して攻撃を防ぐ、それによって逆に動きを止められてしまった。
そして、隙を見せてしまった僕の上からもう一体による斬撃が降ってくる。
必死に身をよじり避けようとするが避け切れず、オークの剣が肩に触れ…
「【ルシェンド】!」
エレナが魔法を使い、剣を振り下ろしていたオークを焼く。
オークはあまりの熱に一歩引いたが…もう一体のオークがエレナへ迫ってきている。
「うーん?悪くないと思ったんだけどなぁ…やっぱ厄介だね、オークは。」
エレナに迫るオークとの間に割って入ったトラジは振られたオークの剣を左手で受け止め,そのまま腰に付けた短剣を先程のオークに投げて動きを止める。
「タイシ!こっちはどうにかするからその2体をお願い!」
わかった、と返事をしてオークに向き直る。
左のオークは魔法と投擲を受けてすぐには動けないだろう。最初に僕を止めてきたオークを狙うべきだ!
「ふっ!」
精一杯気合を入れて剣を振れば、オークは当然防いでくる。しかし、それに構わず攻撃し続ければオークの余裕が無くなっていく。フルスイングを防ぎ続けるのはやはり難しいようで、やがてオークの体勢が崩れ…
ズガッ!という音と共にオークの首が飛ぶ。
一対一でなら僕でも充分戦えるようだ。
「タイシ!しゃがんで!【トライアス】!」
急いでしゃがむと手のひら程の光線がすぐ近くを貫く。そこには短剣が刺さったままのオークが剣を振ろうとしている所だった。
「エレナ、ありがとう!」
再び魔法を受けたオークに僕は剣を突き出し…
「最初はまだオークの相手は早かったかと思ったけど…この分なら次は大丈夫そうだね。」
倒したオーク三匹を並べてトラジはそう口にする。
「一対一なら僕でも充分戦えそうなので…先に周りのオークを動けなくすれば良いんでしょうけど、どうやって動けなくすれば…」
…壁でも作って無理やりオークと一対一にすれば良いのだろうか。
「エレナ、テプロっていう魔法使える?」
エレナなら知っているだろうと聞いてみるが…答えは想定外のものだった。
「…なにそれ?」
「えーと…スケルトンキングの攻撃を防ぐのに僕が使ったやつ。」
「あー…たぶん出来るかな。壁を生やしてた魔法だよね?」
「そうそう!」
エレナは道の脇の開けた空間に手を向ける。
「【テプロ】」
茶色の岩の様な壁が生える。
まあ…エレナなら使えると思っていたけど…
「そーいやタイシ、君は一度見た魔法を簡単に再現できるのかい?」
「…どうしてですか?」
「えーとね…?この世界にはいろんな人が知ってる「汎用魔法」とそれを改良したりして少数、もしくは一人ぐらいしか知らない、言わば「専用魔法」があるんだよ。」
「もしかして…その魔法はトラジさんの作った魔法だったのに、タイシは見ただけで再現できちゃったんですか…?」
「そういうこと。僕は魔力が少ないからさ、メイズドの耐久性を低くして、さらに壁しか作れないように制限することで素早く、魔力の消費もさらに少なくしたのがテプロなんだよ。」
そこまで喋ってなぜだかトラジは俯いて黙ってしまった。
何か言った方が良いだろうか?でも何を?
そうやって迷っているとトラジは何もなかったようにこちらを見る。
「だから、それを再現できるタイシは、これから魔法も強くなるかも知れないね?ただの勘だけど…」
そうしてトラジは歩き出し…止まる。
「そうだ!解体しないといけないんだった!」
首の無くなったオークの亡骸だけが静かに佇んでいた。
「この前のゴブリンの解体は魔石を取るだけだったけど…今回はそれに含めて肉も取らなきゃいけないから雑に切って解体するわけにはいかない。さて、どこの部位だったか覚えてる?」
「確か…お腹の辺りの肉だったと思います。」
「つまり内臓とかは要らない訳か。簡単だね。」
トラジは見本を見せるようにオークを解体し始める。見よう見まねで解体していくと…
「なんか、ブロック肉みたいですね…」
圧力鍋に味付けして入れれば立派な角煮が出来上がりそうだ。
「確か20kgあればいいんだっけ?一匹から取れるのが1kgぐらいだから後17匹だね。」
「トラジさん…このお肉ってどうやって袋に入れるんですか…?このままだとせっかくの袋が汚れちゃう…」
「魔法を使えばいい。君の得意分野だろ?【メイズド】!」
トラジは創造魔法でラップのような膜を作りそれで肉を包む。
「め、【メイズド】!」
僕もラップを想像し魔法を使う。
「やっぱり君は魔法をイメージする力が優れてるね。あとでいろんな魔法を見せて再現できるか試してみようか。」
包んだ肉を袋に入れながらトラジはそう言う。
色んな魔法を見れば戦いの幅も広がるだろうしエレナのつらら飛ばしのように魔法を組み合わせることも出来るかもしれない…
そこまで考え疑問が浮かんだ。
「トラジさん、ルシェルとルシェンド、あとルシェレンドってそっくりなのに威力が全然違うのはなぜなんですか?」
エレナが戦ってるのを見たときに浮かんだ疑問だ。僕とエレナが使うルシェルの威力が違うだけなら魔力の差だと結論付けられるが…エレナが使ったルシェンドとルシェレンドは明らかに威力が違った。
「あー…下級、中級、上級魔法の違いか…タイシ、ルシェルに魔力をたくさん注いだ事はあるかい?」
「多めにぐらいならやりましたけど…確か威力が少し上がりましたね。」
「うんうん、じゃあもっと威力を上げたくなったらどうする?」
「…もっと魔力を送る?」
「ある程度まではそれで良いんだけどね、魔法にある程度以上の魔力を込めると途中で威力が上がらなくなるんだよ。」
「そうなんですか?」
「そう、それで同じ属性でもっと威力を上げられるように作られたのが中級魔法と上級魔法だ。まあ…魔力をより多く込められる代わりに制御が少し難しくなるんだけどね…」
「なるほど…見分け方とかはあるんですか?」
「威力を見ればなんとなく分かるけど…やっぱり簡単なのは、無言で魔法を使える人は少ないから相手の言ってる魔法名をよく聞くことだね。」
「…よく聞いて、知らない魔法だったら?」
「簡単だよ。魔法名の文字数で上位魔法かは判断できる。例えば…岩属性の魔法は知らないよね?」
「はい、見たことも聞いたこともないですね…」
「じゃあ丁度良い。下級魔法から順に言えば…ガーロン、ガーロンズ、ガリロンドズだ。何か気づくかい?」
「4文字…5文字…6文字…文字数ってもしかして?」
「そう!下級魔法は4文字、中級魔法は5文字、上級魔法は6文字って文字数が決まってるんだよ!」
「じゃあ…メイロンドも中級魔法なんですか?」
打ち合い試験の時にシャールさんが使っていた水球に閉じ込める魔法、あれも5文字だったから中級魔法なのか気になった。
「あれは彼女の専用魔法だから中級魔法って括りにはならないかな…文字数はあくまで魔法の制御の難しさだからね。」
ある程度話し、なんとなく魔法について分かったところで、また道を進み始める。残りのオークを早く倒してさっさと依頼を達成してしまおう。
「【ガーロンズ】!」
さっき覚えたばかりの岩魔法で最後のオークの頭を潰す。
20匹目。依頼の20kgの肉がこれで集まるはずだ。
「タイシ…魔法の上達早いね…もっといろんな魔法教えとく?」
「僕もいくつか教えられるけど…あんまり教えすぎても使い切れないかな…?」
「いえ、お願いします!」
周りに敵がいないのを確認してから解体を始める。エレナとトラジは既にそうしていたようだ。
「それにしてもタイシは楽しそうに戦うね。冒険者になってもらったのは正解だったかな?」
「はい!自分に合ってる気がします!」
「…トラジさんも教える時…なんだか楽しそうに見えます。」
「エレナはよく見てるね。僕は人に教えるのが好きでね…弟子も何人か取ってるんだけど…こんな教えれば教えるほど吸収してくれる子はいなかったから…すごい楽しいんだよ。」
「ちなみに…『このくらい強い弟子を育てたい!』みたいな目標ってあるんですか?」
「うーん…理想でいいなら…僕とスカイのコンビを倒せるぐらい強い弟子が欲しいかな。」
トラジの言葉にエレナは驚く。
「…流石にそれは難しいんじゃ…?スカイさんも勇者だし…何より二人はそのコンビネーションが強さとして評価されてた…今、全盛期の二人に勝てる人は存在しないはず…」
「今は、だろ?」
エレナは首をかしげる、僕はまさか…と思いつつも次の言葉を待つ…
「僕は君らがそこまで強くなれると思ってるんだよ。君たちがこのまま強くなればきっとそのぐらい強くなれる。」
トラジはまっすぐに僕らを見つめる。
「そのぐらい強くなった君らと戦いたい。それが僕の夢なんだ。」
まるで子供のようなキラキラとした目で夢を語られ、
「…善処します、来年ぐらいには…」
そう言う事しか出来なかった。
「一年でそんなに成長出来たら敵なんていなくなっちゃうよ!」
でも、楽しそうにトラジは笑う、
(あの人があんなに笑っているのは、久しぶりです。あの人の心を癒せるのはタイシしか今はいないかもしれません。)
あの時のノアの話が本当か少し疑ってしまうくらいに。
「第二層とうちゃーく。タイシ、感想は?」
「えっ?えーと…さっきと雰囲気が随分変わりましたね。」
素直な感想を口にする。
さっきまでは地続きの森の様な場所だったのに、今目の前に広がる景色はまるで違った。言い表すなら…大きな山の標高の高い部分をこの階層にいくつか持ってきてそれらをつり橋で繋いだようだった。
下はどうなっているのか気になり覗き込む。
「…何も見えない。」
ドーム状の空はさっきと同じように明るいのにまるで底が見えない、とりあえず僕が落ちたら死ぬのは確実だ。
「タイシ、落ちないでね…さすがに助けられないよ…」
「ああ、大丈夫。ちょっと気になっただけ。」
「でも、案外落ちて死んじゃってる冒険者もいるから本当に気を付けるんだよ。」
トラジは地図を取り出し道順を確かめてから、三人ほどは並べる大きさのつり橋に一歩踏み出す。
僕らもそれに急いで続くと橋が揺れる。
「…わざとじゃないよね?」
「流石にそんな危ないことはしませんよ…」
「この階層に出るモンスターはね…さっきも見たオークと…」
つり橋の下から黒い影が飛び出す。サイズはそこまで大きくない。
「ヒトクイコウモリの二種類だ。つり橋の裏にいることが結構あって、刺激すると襲ってくるんだ。」
トラジはコウモリの突撃を避けつつ説明する。
「次はこっちか…」
コウモリはこちらに狙いを定めている。剣を抜いて待ち構え、タイミングに合わせ叩き落すように剣を振る。
「ぐっ…いてて…」
しかしコウモリは素早い動きで攻撃を避け噛み付いてきた。コウモリはすぐに離れて僕らの上をぐるぐると旋回し始める。
「【ザラビィ】!」
雷鳴と共にコウモリは橋の上に落ちる。
「タイシ…大丈夫?」
「たぶん大丈夫…そんなに深くもないし。」
とりあえず血を止めようとエルリラで傷を治す。エルリラを使うと痛みが無くなり血も止まったので魔法を止めると…
「…?やっぱり痛いな…」
治りきっていなかったようだ。もう一度魔法をかけて治しきる。
「タイシ…分かるよ…治りきったか分かりずらいよね…」
「回復魔法には痛み止めの効果もあるからね。…ところでお二方。上を見てくれないか?」
?…言われた通り上を向くと…
「うわっ!」「やば…」
そこにはさっきの雷鳴に反応したコウモリが大量に集まって旋回し、今にもこちらを襲って来ようとしていた。
「よーし、早く逃げるよ!道は憶えてるから付いてきて!」
僕らは揺れるつり橋も気にせずに走った。
「だ…第三層…着いた…」
エレナが息を切らしつつ階段を降り切る。コウモリ達もここまでは追ってこないようだ。
「さてと、第三層は鉱山みたいでしょ?」
「確かに…」
目の前には山をくり抜いて作ったような鉱山が広がっていた。くり抜かれた大きなくぼみは外側がぐるぐるとスロープのようになっており、間隔をあけていくつも穴が掘られている。
「ここでエルティナ鉱石が取れるんでしたっけ…」
「ああ、確か…このあたりの迷宮で一番、産出量が多いはずだよ。良さそうな場所に降りようか。」
スロープをしばらく下り、十数個の穴を通り過ぎた後エレナがピタリと止まる。
「エレナ?何かあった?」
「…ここにエルティナ鉱石がある気がする…」
「まあ…エレナなら分かるかもね、エルティナ鉱石は魔力を吸収して溜め込むから…君の眼なら映るかもしれない。行ってみようか。」
エレナを先頭に人がギリギリ二人通れるかというサイズの穴を進んでいく。明かりは無いが壁自体が少し発光しているのか視界は悪くない。
「あれ…魔物じゃない?」
進んでいくと奥に人影が見えた。最初は人かと思ったが…距離が近づくにつれて人にしてはおかしい点があった。
「ゴブリンだね…ここにもいるんだ…」
二人組のゴブリンはツルハシを持って壁を掘っている。まだ気づかれていない。
「【ルシェンド】!」
エレナを下がらせてから魔法を撃つ。魔力を増やした中級魔法だが制御に問題なく使うことができた。
火球が消えた後には魔石とツルハシだけが残っていた。
「ねえ、タイシ…あそこ、なんだかキラキラしてない?」
「本当だ…」
魔力視で見ると、さっき放った魔法から散らばった魔力が壁の一点へと吸い込まれていた。
「よいしょ…っと!」
拾い上げたツルハシで壁を掘ってみると水色のラピスラズリの様な石が出てくる。周りを大きめに削り、傷付けないように取り出してみる。
「これが…エルティナ鉱石?」
手のひら大に取り出した石は、トラジから貰った翻訳の指輪と違って一切金属の特徴がない。光沢なども無いようだ。似ても似つかない様に見える。
「まあまあタイシ君よ、魔力を流してごらん?」
剣にするのと同じように魔力を送る。
…魔力が吸われていくような不思議な感覚がする。循環させようと意識しても返ってくる魔力が極端に少ない。
「タイシ…石の見た目が…」
「うん…変わっていってるね。」
魔力を流し始めて少しすると見た目が変わる。金属のような光沢を持ち始め、最終的に指輪に使われている水色の金属にそっくりになった。
「エルティナ鉱石は魔力を吸収して溜め込む能力があるんだけど、魔力が少ない時と多い時で見た目や性質が変わるんだよ。」
鉱石を袋に入れ、エレナに話しかける。
「一個は回収できたけど…どのくらい持っていけばいいんだっけ?」
「…書いてない。」
「え?」
「依頼書に書いてなかったの…」
…トラジの方を見つめる。
「…とりあえずたくさん持っていこうか。純度を高める時とかはたくさん鉱石がいるからいくらあっても困らないよ。魔力をさっきみたいにばら撒けば位置も簡単に分かるしね。」
…とりあえず全員の袋にある程度集めれば問題ないだろう。そう判断して坑道を進んでいく…
「…すっかり夕方になってしまった。」
「まあ…あの後手分けしてみんなで鉱石採掘してたし…当たり前かも…?」
金属の扉から外に出ると、僕らは夕焼けに出迎えられる。
「ん…あそこのお店、オーク肉の依頼の場所じゃない?」
「あ、ホントだ。結構大通りにあるし良い店なのかな?」
とりあえずギルドに戻っていた僕らは途中で依頼のお店を見つけた。
ドアを開けるとチリンチリン、というベルの音と店主の声が聞こえる。
「いらっしゃい!と、言いたいんだけどまだ準備中なんだ。また後で来てくれ!」
僕らを一般客だと思った店主は厨房からそう声をかける。
「依頼の件で来ました!冒険者のタイシです!」
「…もう取って来てくれたのか?分かった、近くの席で座って待っててくれ!」
少しして厨房から大柄の男の人が出てくる。
「オーク肉の依頼だったな、早くて助かった。いつもの仕入れ先が急に使えなくなったもんでな…大変だったろ?」
「いえいえ…こちら依頼の品です。」
袋から取り出した、薄い膜で包んだままのオーク肉をテーブルに置いていく。
「20キロともなるとすごい量だな…」
置ききった後、口から言葉がこぼれる。
「そう見えるだろ?店やってると案外この量でもすぐ無くなるもんだよ。ウチはオーク肉のステーキが一番人気のメニューなのもあるだろうが…そうだ!三人とも腹は減ってるか?」
「そういえば減ってきました」「減ってまーす」「確かに減ってきた…」
異口同音で答えると「ちょっと待ってな!」と言って厨房へと店主が戻っていく。
店主が料理し始めると、ジュゥゥ…といういい音と匂いが漂ってくる。
「タイシ、依頼だとこういう風にサービスしてくれる人もいるんだよ。…あ、本来の報酬はギルドで報告したらもらえるからね。」
「わかりました。」
しばらくすると、いつの間にか肉が焼ける音が聞こえなくなり、料理の乗ったカートを押して店主がテーブルに来る。
「ウチの一番人気、オークステーキだ。しっかり味わって食えよ?」
肉の乗った鉄板が置かれ、ライスが置かれ…
「お米あるの!?」
「た、タイシ?どうしたの大声出して?」
「あ…すみません…」
こっちに来てからというもの、パンばっかり食べてたから…凄い驚いてしまった。
「ハッハッハ!ウチは米にもこだわってるからな!さあ、食った食った!」
大きなステーキには塩コショウやハーブで味付けがされているようだ。フォークとナイフで一切れ取ってお米と一緒に口に入れる。
「お、美味しい…美味しいよぉ…」
気付けば泣いていた。オーク肉は今まで食べたどの肉とも違うけれど、ジューシーで臭みも無く食べやすい。お米も品種が違うのか少し味わいが異なる。でも、確かなお米のうまみを感じる。
「タイシ…ごめん…今度からお米の食べれるお店にするね…」
目線を上げると二人が申し訳なさそうな顔をしていた。
「い、いえ謝らないでください…パンも好きなんです。ただ…なんだか気持ちがあふれてしまって…」
「俺としてはここまで喜んでくれる客なんて料理人冥利に尽きるぜ…」
店主はとても嬉しそうにしている。
「そっか…じゃあ今度、お米も食べれるお店を探してみるよ。」
再び口に料理を運ぶとさすがに泣くことはなかったがやはり美味しい。塩コショウやハーブが本当にいい働きをしている…気がする。
「また来いよー!依頼でも客でもどっちでもいいからなー!」
「また来ます!ごちそうさまでした!」
食べきった僕らは店を後にした。
約8700文字…上手い区切りが見つからなくてこんな量になってしまった。…あと更新が大分遅くなってしまいました。ペース上げるのって難しいですね…
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