1-19 試練 上
「はい! よろしくお願いします!」
浮かれる私に、祖父がジト目を向けてくるが気にしない。
「シヴィル、本当にいいの?」
「うん」
「狩りにも行けないわよ?」
「あ」
それは嫌だ。すっかり忘れていたが、どうしても行かなきゃいけなくなった時の条件を追加せねば。
「ギデオンお兄様、辺境伯家に入るにあたり、一つ条件を付けても構いませんか?」
「内容にもよるが、言ってみなさい」
「第3騎士団に入れてください」
「騎士団に? そなたがか?」
「はい」
少なくとも騎士見習いや従士であるうちは、結婚とか婚約が出来ないというルールがある。そんなものに現を抜かすくらいなら訓練しろということだ。
そのルールのせいで、騎士の叙任を待たずに従士で辞めちゃう人もいる。このルールを利用しない手はない。こちらは政略結婚などさせられてはたまらないのだ。
それは当然ギデオンお兄様も気づいたようで、眉間に皴を寄せて唸っている。
「正直、第3騎士団は、騎士団の中でも一番出動率が高いために、訓練も厳しい上に、かなりむさくるしいのだが……」
「私は5歳から毎日訓練しています。多少厳しいくらい、苦になりません!」
「一応そなたは聖女として……」
「実際には聖女じゃないですし、魔法も使えないので、教会でご指導いただく理由もありません。それならその時間を訓練に当てたいです」
「……どうしてもというなら、今日連れてきた騎士達全員に勝てば、認めてやらんこともない」
騎士に勝て? いや、それは流石に無茶では? しかも複数相手は、かなり厳しくないかい?
これは私を騎士団に入れる気は、さらさらないわね。
私が動揺したのを見て取り、ギデオンお兄様は好戦的な目を向ける。
「怖気づいたか? ならダメだ」
「や、やります!」
「真剣勝負だ」
「っ! 望むところです!」
し、真剣なんてズルい! 人相手に使ったことないよ!
でもやると言ってしまったし。くそう。
祖父が私の剣を取りに行ってくれている間に、訓練場に移動した。母と準男爵様、イザイア様が心配してくれている。私も心配だよ。大丈夫かな。
ついでと言ったらなんだけど、騎士は合計8人もいた。その8人全員に真剣で勝たなきゃいけない。こんな無茶苦茶な条件なので、騎士からも心配された。そりゃそうだ。
「お前たち、相手が少女だからと手加減するな。彼女はあの「剣鬼」ゴリンデル殿の孫娘だ。全力でやれ」
お兄様が酷い。私はお兄様に嫌われているのかな。
騎士達は戸惑いつつも、上官の命令に逆らうわけにもいかないので、戸惑いを振り切った目をして、スラリと鉄の剣を鞘から抜いた。
私も覚悟を決めて、強化マシマシで腰だめに構える。
「始め!」
ギデオンお兄様の合図で、試練が始まった。




