オープニング
この物語に幕が下りる時がきました。
忘れられない友達、ですか。
奇妙なことを聞きますね……
だって、女神様。
忘れてしまった友達のことは、
話すことはできないでしょう?
――ああ、でも。
忘れたことを覚えてる友達、でしたら。
たぶん、一人だけ。
どこの誰かも、名前も、顔も、
全然思い出すことはできないですけど。
忘れてしまったことは覚えてて。
あと、忠告。
蜘蛛の糸、っていう話がありまして――
本官は国語の教科書で読みました。
芥川龍之介って人が考えた物語です。
古都子みたいなどうしようもない人間でも、
一度くらいは善いことをしてみたらどうかって。
これだけは何とか思い出せたんですよねぇ。
はい、銀ちゃんの事件のときの話ですっ!
あの子はまだ子供でしたからねぇ。
本官も大人ぶって、背伸びしたい気持ちもあり……
うふふ。
☆☆☆
「裁かれないのって、不幸ですよ。銀ちゃんは人を殺したんです。でも、その罪がきちんと裁かれることがないのって……良くないと、本官は思います」
☆☆☆
そうそう。
よく思われたかったんです。
これでも本官は大人のレディですので。
他の友達には言えないことでしたけど……
だって、嫌われたくないし。
みんな、人を殺して困ってる子ばかりだもん。
でも、銀ちゃんならいいかなって。
――あんなの、本官のキャラじゃないですよね?
人の道とか、罪と罰を説くなんて。
銀ちゃんに殴られたとき、
なんとなく、もう死ぬんだぁって気がして。
血がどろどろ流れて、気が遠くなって。
そこで、急に思い出したんです。
ずっと前に言われてた忠告――
蜘蛛の糸のこと。
とんでもない悪人が、
気まぐれで蜘蛛を助けた話。
地獄に落ちたら、蜘蛛の糸が助けてくれる。
お釈迦様の慈悲ってやつです。
まぁ、その悪人は地獄に戻っちゃうんですけど。
ひょっとしたら……
死後に女神様と出会えて、
異世界に転生できたのも……
あのときの、
気まぐれのおかげだったのかもしれませんね。
良いことして、良かったです。




