↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふれんどしっぷ計画っ!~殺人犯の美少女としか友達になれない女刑事、ぼっち脱出のために罪を暴いて脅迫します~  作者: 秋野てくと
EpisodeⅢ『Unknown four』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/28

八百長問題編②~知ったこっちゃない死体~

 五日目の殺人でタギロンを使うことは決まっていた。

 すでに本物のゲームメイカーにより、三日目の時点で警察にタギロンが送りつけられていたからだ。

 その後のitoとボムバスターズについては、私が自力で辿り着いた年代進行説に従って選択し、購入して、警察にも同じものを送りつけていたのだ。

 結果的には、年代進行説は間違いだったらしいが……。


 新町は推理によって、私の犯行計画を明らかにしていく。


「ここで疑問となるのは、ギドラさんによって自分のゲームが乗っ取られたというのに、どうして本物のゲームメイカーが沈黙しているのか。これがボードゲームだとした場合、勝手に他のプレイヤーが自分のターンを進めたとしたら、たまったものではありませんよね?」


「…………」


「そこで考えられるのは”死人に口なし”。つまり、偽のゲームメイカーが出現した時点で、本物のゲームメイカーが死亡していた可能性です」


 ゲームメイカーの入れ替わりが起きたのは第四の事件。

 そこから導き出される答えは――


「第四の事件の被害者である下呂桃ちかる。彼女こそが本物のゲームメイカーです」


「……その根拠は?」


「ゲームメイカーによる連続殺人ゲームをボードゲームとして解釈した場合、その勝利条件について気になりませんか? たとえばスコットランドヤードなら、ミスター・エックスの勝利条件は全ラウンドを逃げきることです。今回のゲームの場合には、東京23区を舞台にしていることから全23ラウンドであることが想定されます。普通に考えれば、その殺人を遂行したなら勝ち――でも、実はゲームメイカーの勝利条件は異なりました」


 ゲームメイカーの勝利条件だと?


「全23ラウンドの連続殺人を完遂した上で、最後の事件のみは自殺する。それによって、23番目の犠牲者こそが犯人であると警察に教える――パーフェクト・ゲーム。これこそが今回のゲームにおいてゲームメイカーが設定した勝利条件だったのです」


 新町は青い装丁の化粧箱を取り出した。


 どうやら、なにかのボードゲームらしい。

 表紙には富士山のようなイラストが描かれている。


「これは街コロというゲームです。もう説明はしましたよね? あれ、してませんでしたっけ? まぁいっか。これが23ラウンド目に使用される予定のゲームでした。東京23区をあいうえお順に22回連続で殺人を実行した場合、最終ラウンドの舞台となるのは目黒区(meguro)です。目黒区で街コロを使用した場合、犠牲者となるのは――」



【第二十三の事件】

 現場:meguro+遺留品:machikoro

 =被害者:geromomochikaru



「下呂桃ちかる。第四の犠牲者となった人物が本物のゲームメイカーとなります」


「待て待て。その推理はおかしい。殺人に使用するゲームが警察に送られてくるのは、ゲームメイカーが事件を起こす前日のはずだ。それなのに、どうしてお前が最終ラウンドで用いられるゲームのことを知っているんだ?」


「聞きました。ゲームメイカー本人に」


「馬鹿な。なぜ、そんなことができる?」


「ゲームメイカーは本官の友達なんです」


 新町はコンクリートの壁を見つめると、粗末なベッドに腰かける。


「一日だけの、フレンドでしたけど」


「……説明しろ。何を言っているのかわからん」


「ふれんどしっぷ計画……」


 聞いたことのない意味不明の言葉で返された。


「説明しろと言っている! さては、お前はゲームメイカーの共犯なのか?」


「いいえ。初めて友達になったのは、本官が有給を取った四日目です。あの一日だけ、本官とちかるちゃんは友達でした。そのとき、ちかるちゃんから最終ラウンドに使う予定だったゲームのことも聞いていたんですよ」


「四日目にコンタクトを取った? もしかして」


 こいつの元にも、私と同じ連絡が来たのか?

 メフィが四条河原を殺害した夜のことを思い出した。



☆☆☆


 スマートフォンに着ていた通知を確認する。

 この情報は――もしかしたら、使えるかもしれない。


☆☆☆



 あのとき、私の元にはゲームメイカーを名乗る人物から連絡があった。

 自首したい――という申し出である。

 私は藁にもすがる思いでコンタクトを取った。


 待ち合わせの場所に現れた人物こそが下呂桃ちかるだった。


 3人を殺した殺人犯とは思えない儚い美女で、驚いたのを覚えている。

 イタズラかと思ったが、次の殺人予告として警察に送られてきたゲーム――「タギロン」を持っていたことで犯人だと確定した。


 私は特命捜査権によって事件の捜査情報を握っている。

 ゲームメイカー事件の現場にボードゲームの遺留品が残されていること、それが犯人によるメッセージであることは一般には公開されていない。


 チャンスだと思った。


 ここで下呂桃ちかるを次の犠牲者にすれば、この私がゲームメイカー事件を乗っ取ることができると。


「ねぇ、ギドラさん」


 新町は、これまでにないような冷たい目を向ける。

 神経がぞわつく。誰だ、この女は。

 こいつ……こんな目をする刑事だったのか?


「おかしいとは思わなかったんですか? 自首するにしても、どうしてゲームメイカーはギドラさんを選んだのか? どうして、あなたの個人的な連絡先を知っていたのか? 本官が彼女に教えたんですよ。この人なら、きっと悪いようにはしないって。これでも本官は、ギドラさんを尊敬していたんです。相棒としての、警察官としてのギドラさんを。友達にはなれないけど……本官が友達になりたいって思う子は、みんなどこかおかしいから。ちかるちゃんがそうだったように。類は友を呼ぶってのはマジです。だからこそ、あなたに託そうと思った。なのに……第四の事件の犠牲者はちかるちゃんでした。本官はそのときから、殺人犯はギドラさん以外にはありえないと思っていたんです」


「どうしてそう言い切れる? お前が私の連絡先を下呂桃ちかるに教えていたとして、本当に私と会おうとしたとはかぎらない」


「かぎります。ちかるちゃんだって、あの時点で自首する警察官を選ぶなら、絶対にあなたにすると決めてたはずです。だって、ちかるちゃんが殺された現場に遺されていたタギロンは、本来はあなたのために用意されたゲームだったから」


「なんだって?」


「以前に聞いたことがあります。ギドラさんの住所は江戸川区の船堀ですよね?」



☆☆☆


 江戸川区。

 葛西臨海公園駅を下車すると、潮の匂いが風に混じった。


 このあたりなら、私にも土地勘がある。

 自宅マンションがある船堀から葛西までは、そう遠くはない。


☆☆☆



【第四の事件】

 現場:edogawa+遺留品:tagiron

 =被害者:tonegawagidora



 アナグラムの結果を見て、戦慄する。


「第四の事件の本来の犠牲者は……私!?」


「利根川《とねがわ》祈祷羅《ぎどら》。第三の事件の時点で法則性を見抜いた本官は、江戸川区在住で、タギロンと組み合わせることでアナグラムできる人物を区役所で探すことにしました。そうそう、ちかるちゃんがゲーム盤に東京23区を利用したのは、彼女の職業が都庁職員だからです。都民のデータベースを引き出せる立場にありましたからね。本官はまもなくあなたにたどり着きました。そこで有給を取り、あなたを尾行した――そこで、あなたを殺そうとするちかるちゃんを確保したんです」


「お前が休みをとっていたのは、そのためか……。では、第四の殺人と第五の殺人の捜査に居合わせなかったのはなぜだ?」


「犯人がギドラさんであるのはわかっていました。ですが、目的が不明です。そこであなたを油断させて、ボロを出すのを待つことにしたんです。葛飾区で発見された遺体が焼死体だと聞いて、きっと手がかりになると確信しましたけど」


 葛飾区の焼死体――四条河原京介こそが本命だと気づいていたのか。

 東都研での検視で身元を特定されたことで、私がメフィをかばうために事件を起こしたこと、第二のゲームメイカー事件全体の構造に気づかれてしまった。



☆☆☆


「ギドラさんもご存知の通り、殺人事件のほとんどは家族や友人・知人間のトラブルが原因です。通常の殺人事件なら、人間関係から辿れば犯人を検挙できます」


☆☆☆



 四条河原京介こそが、私たちにとってのアキレス腱だった。 


「一つ気になっていることがあります。どうして、大田区で罪園ゆかりを殺害したんですか?」


「…………」


「答えるつもりはないと。おそらく、四条河原京介の遺体から身元が割れないようにする事後工作と、人目を避けながらの葛飾区への運搬に時間がかかるため、時間稼ぎとして第五の殺人が必要だったんでしょうね。それに第四の殺人と第五の殺人の際に、末都メフィさんに完璧なアリバイがあれば、万が一捜査の手が及んでも潔白を証明できると。被害者に占い師の罪園ゆかりが選ばれたのは、繁華街で路上の商売をする彼女ならば、行きずりの殺人をするターゲットとして殺しやすいという程度の理由でしょう。このことは、メフィさんは了承済みだったんですか?」


「私は、何もしゃべらない」


 拷問しようと、無駄だ。

 私はメフィのためなら何でもすると決めた。

 そのためには死体の山が積み上がろうとかまわない。


 大事なのはあの子だけだ。

 地獄に落ちる覚悟は出来ている。


「はぁ。なんかガンギマリな感じで面倒ですねぇ。どうしよかな。このまま爪剥いだり指落としたり耳切ったり目抜いたり腱切ったり歯抜いたり穴開けたり膣壊したりしても、悪いのはきっと、本官になっちゃいますよね。末都メフィさん、めっちゃ愛されてるみたいでうらやましいです」


「……私はこれでも警察官だ。事件捜査中の警察官が行方不明になったんだ、いずれは本格的な捜査が始まることになるぞ」


「タイムリミットもあるわけですね」


 新町はスーツのままベッドに寝転がり、猫のように丸まった。


「ギドラさんに質問です。メフィさんって、あなたの友達だったんですか?」


「友達……」


 自分の想いが、そういうきれいなものであるものと信じていた。

 けど、今は違う。

 私のメフィに対する想いは愛欲だと自覚した。

 執着といってもいい。


 下呂桃ちかるも、罪園ゆかりも――

 この手で二人の人間の命を奪っても、何も感じなかった。


 私の世界にいる人間は、末都メフィただ一人なのだ。


「本官は思うんです。友達っていうのは、言ってみれば贔屓で。本当はみんなと仲良くするべき。誰にでも優しくするべき。でも、そうはならない。そうはしたくない。自分が友達になりたい相手を選ぶということは、同時に、友達になりたくない相手を選ぶのと同じなんです」


 たまたま居合わせたクラスメイトみたいに、と新町は続ける。


「選ぶ権利がないパターンも多いですけど。本官だって、絶対に友達になりたいと思っていても、相手はそうじゃなかったりすることばかりですし」


 無駄話か?

 こちらにとっても都合がいい。

 時間が経てば経つほど、不利になるのは新町の方だ。


「ちかるちゃんと仲良くなりたい人はあまりいないと思います。殺人鬼だし、変なゲームをするし。大した理由もなく殺しまくって、存在自体が大迷惑です。でも、実際に会ってみたら……本官は仲良くなりたいと思いました。だから、あの子と友達になることにしたんです。まぁ、殺人ゲームについては本官の勝ちでしたけど。うふふ。そうそう、一度でも予告殺人に失敗したら、ゲームに負けたってことで自首すると最初から決めてたみたいです」


 うーん、と新町はリラックスして伸びをする。


「話は変わりますが、ギドラさんは永山基準はご存知ですよね?」



☆☆☆


 被害者数が1人なら、無期以下。

 被害者数が3人ならば、死刑は確定。

 被害者数が2人の場合には、無期か死刑かの境界となる。


☆☆☆



「種田ちせ、小川彰、千葉泰山。すでに3人の命を奪っていたちかるちゃんは、この世界のルールでは死に値すると決まっています。自首しようが逮捕されようが、そこは変わることはありません。じゃあ、末都メフィさんはどうでしょう?」


「メフィ……なぜ、ここでその名前が出てくる?」


「ギドラさんがすやすやしてるあいだに、もう会ってきたんです。あなたがしたことを教えたら、びっくりしてました」


 私が寝ているあいだに、もう会っていただと?


「貴様ッ! あの子に何をした!?」


 新町はけろりとした顔で告げた。


「お話しただけです。ギドラさんがやったこと、全部。ただ、それだけ。でも、ほんとにショックだったみたいです。アレですねぇ、メフィさんったら、第四の殺人も第五の殺人も本物のゲームメイカーがやったと思ってたみたいで。それで、永山基準の話に戻るんですけど」


 被害者が3人ならば、死刑は確定。


「四条河原京介。下呂桃ちかる。罪園ゆかり。メフィさんが人殺しになったせいで、結果的には3人もの人間が命を落とすことになったんですけど。じゃあメフィさんの犯した罪って、死に値するんじゃないですか?」


「なっ……っ!?」


「って、話したら。えんえん泣き出しちゃって。本官、これでも一応は警察官ですから。人命第一主義なので。止めたんですよ? だけど、火事場の馬鹿力っていうんでしょうか。もう、止めようにも力がすごくって」


 やめろ。そんな話はやめろ。

 メフィは悪くない。

 あの子は何も知らなくていい。

 彼女が殺したのはたった1人だけだ。

 この世からいなくなっていいクズ男。

 悪くない。

 罪なんてない、そう私は言った――!


「そういうわけで、メフィさんは自分で命に始末をつけました」


「……は?」


「もう、この世にいないんです。走って走って、歩道橋から線路に飛び降りちゃいました。助けられなくて、ごめんなさい。というわけで、もうギドラさんが黙秘する必要はありません。後顧の憂いなく、自白してくれると本官は嬉しいです」


 何を、言っている?


 新町の言葉が、頭に入ってこない。

 どうしてだ。どうして、こうなった?


 メフィは永山基準を勘違いしている。


 永山基準はあくまで、殺人罪に対する死刑の適用基準でしかない。

 3人の死に加担したら死ななきゃいけないなんて、そんな意味では……



☆☆☆


「安心してくれ、メフィ。君は死刑にはならないよ」


☆☆☆



 ――あっ。


 違う。私が、彼女に教えたんだ。

 自分を責めるメフィを少しでも慰めたかった。

 そのために、彼女に歪んだルールを教えてしまった。


 ゲームの敗北条件を、この私が刷り込んでしまった……。


 全身の力が抜けて、私は椅子ごと床に倒れ込む。

 痛みを感じるほどの神経はもう無い。

 嗚咽。

 冷たいコンクリートの床に涙が流れた。


 一切の気力が喪失する。


 殺人ゲームなんかにかかわるべきじゃなかった。

 私は刑事のまま、彼女の罪を受け入れればよかったのに……。


 私は、すべてを間違えた。


「殺して……」


「いやです。証人がいなくなっちゃいますから」


 新町古都子はベッドに寝転んだまま、タブレットで漫画を読み始める。




「類は友を呼ぶって本当ですねぇ。泣き虫なのも、メフィさんそっくりです。うふふ。じゃあ、ひととおり泣くだけ泣いて満足したら、そっちの罪は認めてもらって、ちかるちゃんのゲームを彼女に返してあげてください。第四の殺人以降は事件に便乗した模倣犯であり、ゲームメイカーによる殺人事件ではないのだと世間に公表してください。これが本官なりの、本官の大事な友達に対する弔いになります。


 あなた方が殺した3人の……


 いや、

 あなたが殺したメフィさんを含めれば4(・)人(・)ですね。

 

 そんな殺人事件は、


 本官の知(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)で(・)は(・)あ(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)ので」




EpisodeⅢ『Unknown four』…END

Next EpisodeⅣ…『Be The One』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。