↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/48

8話 本当のひとでなし



 増援にきた2人の防星官――


 銀髪に綺麗な顔立ちの氷河と、

 黒髪短髪の勢い系の男前、影井。


 彼らは風を目の前に、能力を全開にしていた。


 

「氷河さん、影井さん!

 何をしているんです?

 彼は敵ではありませんよ!」


 

 2人は虎落の言葉に耳を貸さない。


 

「2人とも!」


「お前にはこいつが人間に見えるのかよ!?」


「!」


 

 時の流れが止まるような一言だった。


 

「お前の能力は、分析だろ!

 その目でこいつは人間に見えるのかよ!」


「……あなたたちは、一体なにを」


「俺の目には、侵略者にしか見えん!」


「!」


「とりあえず拘束する!」


 

 影井が動く――

 足元の影が人型になって起き上がり、

 風に飛びかかる。


 

「ちょっと待ってよ!

 俺は敵じゃないって!」


 

 聞く耳などない――


 人型の影が、体術で攻め込む。


 

「おいおい! やめてくれって!」


 ――ドゴッ!


 

 影の拳が腹に入る。


 条件反射で風が反撃してしまった。


 すると影は一旦飛散するが、液体のように集まり

 風の身体に纏わり付いた。

 

 

「いまだ、氷河!」


「あぁ!」


 

 影が纏わりついた風の身体は、固まったように動かない。


 

「なんだこの影!?

 気持ちワル!」


「2人ともやめて! 彼は敵ではない!

 彼がベーダー星人たちを倒してくれたんですよ!」


 

 氷河が地面に両手を置くと、

 風に向かって一直線に氷の道が走り――

 氷の柱に閉じ込めた。


 

「なんてことを!」


「虎落! 冷静になれ!

 あんな奴を放っておけるわけがないだろ!

 あれは人ではない」


「人です!

 彼は我々と同じ、能力ありの人です!」


「能力がどうとかの問題ではない……

 もしあれが人だというなら――」


 

 ――ガッシャーンッ!


 

 風を包み込んだ氷の柱が砕け落ちた。

 氷の奥に、風の影が見える。


 

「本当に勘弁してくれよ!

 俺、普通の人間だって!

 21年間、能力ないってことで苦労してきたんだよ!」


 

 斥力発動――

 

 それで氷柱を破壊した。


 

「もし人だというなら……

 ベーダー10体を倒すなど不可能だ。

 そして、

 この氷の柱からの脱出することも不可能だ……」


「……」


 

 氷河の考えは正しかった。


 能力がない人間が、ベーダーを10体倒すなど不可能。

 そして、氷河の氷の封印から脱出も不可能なのだ。


 

「うわっ! これは弾けないのかよ!」


「?」


 

 身体に纏わりついた影――

 それは斥力の力でも弾けなかった。


 

「……影だから、弾けない?」


「影は物質じゃないからか……?

 いろいろと細かいな……」


 

 風は力一杯身体を動かし、

 纏わりついている影を、力尽くで振り解いた。


 

「チッ! あいつ、俺の影固めなんて歯牙にもかけてない!」


 

 氷河は凍気を手に集め、構えをとっている。

 影井は2体の影を立体化させた。


 

「!」


 

 風を狙うふたりの前に、虎落が立ちはだかった。


 

「やめて……彼は命の恩人。

 彼がいなければ、わたしたちは全滅していた!」


「どけ! 虎落!」


「剛海さん! 伊安さん! 2人も見てましたよね!

 なんとか言ってください!」


 

 伊安は雷鳥の回復を行いながら、答えた。


 

「昨日、わたしは彼と直接会って話をしているわ。

 危険な感じはしなかったけど……」


 

 続いて剛海が口を開いた。


 

「あいつは虎落を守ったぞ……

 結果的にここにいる俺たち全員を助けたことになる……

 敵とは思えないが……」


 伊安と剛海の意見に、氷河は苛立ちを見せた。


 

「副隊長を倒し、剛海の腕を潰した奴らを

 こいつは1人で駆除したんだろ!?」


「……」


「能力者特有の雰囲気が見られない――

 人間が能力を使えば、必ずエナジー反応が出る。

 それがないってことは、人じゃないってことだ!」


 

 沈黙が落ちる。


 その時だ――


 

「彼は……敵ではない……」


 

 ぽつりと呟く声。

 その声の主は――


 副隊長の雷鳥だった。


 

「副隊長!」


 

 防星官たちが駆け寄った。


 

「わたしが不甲斐ないばかりに……すまなかった。

 しかし、彼は敵ではない……我々の……仲間だ」


「副隊長、まだ喋らないでください。

 回復途中ですから……」


 

 氷河と影井は納得いかない表情を見せた。


 しかし、副隊長の言葉に異論を唱えるわけにはいかない。


 彼らは渋々拳を収めることにした。


 

「副隊長からの指示だ。

 今日のところは引いてやる」


「だから、俺は敵じゃないって!

 信じてくださいよ!」


 

 そこに数人の防星官たちが到着した。

 報道機関や警察官、消防隊も到着。


 風も彼らも、これ以上騒ぎを大きくしたくなかった。


 

「いいか、俺たちはお前から目を離さない。

 お前はこれから、我々の監視対象に入る!」


「……なんで監視されなきゃいけないんだよ?」


「逃げても無駄だ。

 必ず化けの皮を剥がしてやる!

 ――忘れるな!」


 

 氷河はそう言うと、影井とともに報道機関の対応へと向かった。


 一旦、

 風に向けられた刃は払われたことになる。


 

「なんだよ……俺はなにも悪いことしてないのに、

 なんで敵扱いなんだよ――」


「ごめんなさい、紡時さん。

 彼らにはあとでわたしが説得しておきます」


「頼むよ……」


「疑わしき者は悪――

 それが、彼の防星官としての考えなんです」


 

 救急隊がこちらにやってきた。

 雷鳥を担架で運んでいく。

 伊安が回復を続けながら着いて行った。


 剛海の腕も深刻だったため、

 そのまま救急隊に連れて行かれた。


 そして虎落も――


 彼女は搬送される前に、風に声をかけた。

 

 

「あの……紡時さん、

 連絡先を教えていただけませんか?」


「えっ……あぁ、いいけど……」


「今日はゆっくりとお礼も言えません。

 これから事情聴取などあると思うので……」


「事情聴取?」


「何かあれば連絡ください。

 わたしも治療が終わり次第、

 証人として説明に向かいます……」


 

 これだけの騒動になったのだから、

 さすがにこれで解散というわけにはいかなかった。


 風はこれから、防星官か警察官に、

 事情聴取という名目で、連行されるようだ。


 

「?」


 

 こちらへ来ようとして、

 警察官に引き戻されている人の姿が見えた。


 

「お兄ちゃーん!」


「!」


 

 ――ナギを放ったらかしにしていたことを、

 完全に忘れていた。


 

「ナギ! ごめん! 忘れてた!」


「どういうことよ! 妹、忘れるって!」


「なんか、自分でも自分がよくわからないんだ……」


「……今のお兄ちゃんってさ。

 本当にわたしのお兄ちゃんなの……?」


 

 風が捕まえられているナギのもとへ向かうと、

 そのまま待ち構えていた報道陣に囲まれた。


 おびただしいカメラとマイクを向けられる2人。


 狼狽える風とナギを、

 救い出すような形で防星官が割って入り、

 緊急車両に乗せて2人を避難させた――


 ――いや、正しくは連行させた。

 

 

 風の1日は、まだ始まったばかりだった。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。