7話 けれど敵扱い
黒いプロテクターを纏う
ボス個体のベーダー星人と向かい合う。
恐ろしい相手だとわかっているのに、
不思議と冷静でいられる。
そして――
今すぐにでも逃げ出したいのに、
心の奥底で、好戦的な何かが蠢いている。
「俺の能力って何です?」
「……!」
「その異端の能力ってどんなのか教えてください」
「そっ、それは……」
「……」
「よくわからないの!」
「へっ?」
「復活する時には、確かにエナジー値が動いていた。
能力発動の確認ができたの……
でも、今は全部消えてるんです」
と、いうことは――
現状、能力がないということ。
――ダメじゃないか!
風は思った。
しかし――
風の中で蠢く何かが、再び囁いてくる。
――戦え、その種を壊せ――
と。
風の身体が自然に前に出た。
先手をとるかのように、
黒いベーダー星人に向かって飛びかかった。
「早い!」
虎落が叫んだ。
――パンッ!
風の身体が空間で弾かれた。
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「痛ぇ! なんだ今の!?」
風はあまりダメージを受けていない。
黒いベーダー星人は手のひらを風に向ける。
先ほど上半身を破裂させた時と同じポーズだ。
風の身体が膨れ上がる――
「危ない! また破裂する!」
「――ゲフッ!」
ゲップをひとつ吐くと、腫れが治った。
「?」
黒いベーダー星人が首を傾げた。
風も、今の攻撃が効かなかったことに驚いている。
「死んでも生き返る能力……
だと思ってたんだけど違うのか?
一度食らった攻撃が、二度と効かなくなる能力とかかな……?」
虎落は、風の自己分析に答えられなかった。
不死の能力――
敵の攻撃を記憶する能力――
どちらも間違いではない。
――ただ、正解でもない。
虎落の目に映った、風の能力名。
時を紡ぐ者――
その効果は不明だ。
ただ、明らかに――
虎落の目には、風がさっきまでとは別人に見えた。
黒いベーダー星人の斥力に、
何度弾かれても食らいついている。
虎落は分析を続けた。
死んだのに生き返った。
敵の攻撃が効かなくなっている。
そして、
インパクト値とプロテクト値が、
10tから15tに跳ね上がっていた。
――進化している?
「時を紡ぐ……者? ……まさか」
虎落の目が光り、さらに分析に動く。
「時を紡ぐ……
見たもの、経験したものを紡ぎ合わせる能力……。
そんなこと……ありえるの?」
虎落は自分の分析に否定的であるが、
昨日からの風の証言と、出来事を整理すると――
「案外……わたしの仮説、
合ってたりして……」
虎落は、
何度吹き飛ばされても立ち上がる風に向かって
大声を出した。
「紡時さん!」
「!?」
「そのベーダー星人の斥力!
あなたも使えるかもしれない!」
「!」
「そいつのマネをして、使ってみせて!」
その隙を見て、黒いベーダー星人がハンマーを片手に、
風へ飛びかかった。
「マネって、何を!?」
風は咄嗟のことに理解できないまま、
飛びかかる敵に向かって手のひらを向けた。
――パンッ!
ベーダー星人を弾き飛ばせた。
「!」
「マジか! できた!」
風と虎落は同時に叫んだ。
風は胸を爆発させられた時のことを思い出す。
「……なんだか……できそうな気がする」
風は再び手のひらを黒いベーダー星人に向けた。
「まさか!?」
虎落が目を見張る。
黒いベーダー星人が何かを察して後退した。
だが遅かった。
先ほどの風と同様、
黒いベーダー星人の上半身が膨れ上がっていくのが見えた。
そして――
その時を迎える。
――ズッパーンッ!
黒いベーダー星人が弾けた。
それは、一瞬の出来事だった――
「あっ、あいつ……勝ったのか?」
「何があったの?
はっきりと見えなかったわ!」
状況を掴めない剛海と伊安。
しかし虎落は違った。
分析を進めるに従って見えてきた能力の跡。
一か八かの推測だったが――現実になった。
「かっ、勝った……勝ってしまった」
「……はい。
敵の生命反応が完全に絶たれました。
あなたの勝ちです」
「おぉぉ!
俺ってすげぇー!」
「確かに……想像以上にすごいです」
「能力ないのに勝ってしまった……」
「……おそらく。
それが、あなたの能力なのだと……思います」
「……えっ?
どっ、どれが?」
「……死んでも生き返って、
死ぬ前より強くなっていて、
死んだ原因となった事象に適応できて、
それなのに能力者反応がない……」
「アンデッドで……
バージョンアップできて……
スキルコピーまでできるのに、
無能力者……ってこと?」
虎落は首を振る。
「少し違います。
確証は持てませんが、おそらく死んだら発動する能力……」
「……死んだらって」
「輪廻……生まれ変わり、と呼ぶべきでしょうか……
今まで未確認の能力だと思います。
能力名――時を紡ぐ者、と書いてありましたし」
「能力名、ながっ……」
「問題はそこですか……?」
「それより能力無しってなんなんだよ……
こんな状況なのに、能力がないって扱いが怖いよ」
確かにそこは謎のままだった。
これほどの力を発揮して、エナジー値が見られない。
今のままでは完全に能力がない、という扱いになる。
「!」
虎落の目が一瞬、何かを感知した。
「なに? この反応……?」
虎落の目が、何かを感じた。
次の瞬間――
「虎落! 剛海! 伊安! 無事か!?」
――援軍。
空からふたりの防星官が降りてきた。
「氷河くん! 影井くん!」
「副隊長がやられただって?」
「今、回復に当たってる!
なんとかしてみせるわ!」
敵は撃破し、
残る心配は雷鳥の回復。
そして――風の能力の答え合わせ。
「?」
気が付くのが遅れた。
援軍に来た氷河、影井――
彼らは風を囲むように立ち、
敵と判断していた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
風の能力について、少しだけ正体が見えてきました。
そして黒いベーダー星人との戦いは決着。
……しかし、風の問題はむしろここからです。
「能力なし」のはずなのに強すぎる。
そんな存在を周囲がどう見るのか。
次話も楽しんでいただけると嬉しいです。
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