46話 帝呼の説得
翌日も、狩は心ここにあらずの状態だった。
ワープゾーンの処理に来ているのに集中できていない。
もし侵略者が奇襲をかけてくれば、狩は一溜まりもないだろう。
そんな時――
「パパッ! 危ない!」
身を潜めていたゴブリー星人5体が突如襲ってきた。
「!」
持っていた剣のような武器が一斉に狩を襲う。
「うわあぁーっ!」
――パーンッ!
風が咄嗟に斥力の力で、ゴブリー星人5体の攻撃を弾いた。
そして――
一瞬のうちに5体を駆除した。
「大丈夫ですか?
親方!」
「お……おうよ……」
強がった返事にしか聞こえない。
「なにボーッとしてんのよパパ!
風くんいなかったら死んでたよ!」
困ったことに、
今の親方は親方らしくなかった。
すると帝呼はいきなり核心を突く――。
「ちょっと!
鳴蔵って人と面会の話が出てから、おかしいんじゃない!?」
「――馬鹿野郎!
おかしくはねぇよ!
いつもの元気はつらつのパパだろうがよ……」
「どこがよ!」
「鳴ちゃ……鳴蔵は関係ねぇよ!
ほっとけよ、パパのことはよぉ!」
「迷惑なのよ!」
「!」
相手は社長。
家族にしか言えない強烈なダメ出しだ。
「タイコリン……
パパに向かってぇ!」
「パパのその体たらくでタイガードロップの評判が下がってもいいの!?」
「!」
「パパって、日本最高の民間ブレイカーになって、
最高の人材を育てあげて防星官を見返すって目標を昔持ってたよね?」
「……むう」
「笛ちゃんは、そんなパパが嫌で嫌で仕方なくて
防星官になったじゃない。
剛海さんもだし……華火って人も出て行った――」
帝呼はさらっと言っているが、
なかなか酷いことを言っている。
「でもわたしは……パパの目標のお手伝いができたらなって思って、
会社に残っているんだよ」
「……タイコリン」
「わたしはいつもパパの味方なんだよ……」
少し涙ぐむ狩――。
「俺はてっきり地下アイドルをしてるから、
時間の融通が利くんで実家を手伝っているんだとばかり……」
「それはショックだわ……」
――実のところ、狩は正解を言っている。
「風くんだってパパを支えたいと思って、
うちに居てくれてるんだよ!」
「!」
「そう。
わたしたちはタイガードロップ株式会社を最高の会社にするために
いるんだよ!」
「――グスッ!」
狩――男泣き。
「昨日のパパの焼けチョコしている姿、
見ていられなかった」
焼けチョコ?
聞き慣れない言葉に、風は疑問を持った。
「寝る前にあれだけチョコを食べてるんだもの、
胸焼けしないか心配だった」
甘いもの好きで酒の飲めない狩は、
焼け酒ができないからチョコを食べまくっていたようだ。
それで焼けチョコ――。
「……情けねぇ親父だぜ。
焼けチョコしている姿を娘に見られているなんてな……」
「気にしないで……パパ」
「さすが俺の娘!
やっぱタイコリンは最高の女だぜ!」
風はどうでもいい寸劇を見ている気分になった。
突然始まったこの劇場……なかなか見ているのが辛い。
「だからパパ――」
「?」
「鳴蔵に会って」
「……」
「……」
やはり任せる相手を間違えた。
風は――そう思った。
まったくもって、
帝呼の説得の内容が頭に残らない。
焼けチョコが辛い――
だから鳴蔵に会って――
意味がわからなかった。
やはり笛に頼むべきだったと風は後悔した。
その時――
「ありがとう!
タイコリン!
お前のおかげで決心がついたぜ!」
「?」
「俺は、鳴ちゃんに会いに行く!」
「はぁ!?」
風はさらに意味がわからなかった。
「俺の背中を押すまでになったか!
タイコリン!
立派になりやがって!」
「パパの娘だもん!」
「次の定休日に――
俺は……行くっ!」
帝呼が風を見て、
ウィンクしながら親指を立てた。
うまくいったよ!
の、合図だ……。
家族って色々な形があるんだなぁ……と、
風は思った。
「そうと決まれば、服だ服!
久しぶりに会うんだからよ、
ビシッとかまさねぇーとなぁ!」
「そういうのは帝呼にお任せよ!」
「がははっ!
頼んだぜ、タイコリン!」
事務所に帰ってから、
会いに行く時の服を決めるそうだ。
――――――
事務所――
「やっぱ、紋付袴よな!?」
「どうしてお見舞いに行くのに紋付袴なのよ!
無難にスーツでしょ!」
「スーツなんてオシャレ過ぎる物、
持ってるワケねーだろ!」
「社会人なら持ってなさい!」
「俺はノコギリ一本でやって来たんだ!」
「馬鹿じゃない!
あっ、スーツあるじゃない!」
「そりゃタキシードだ!」
「……逆になんでタキシードがあるのよ」
やはり笛に居てもらいたかった……
そう思う風だった。




