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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
オマケ

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43話 ふたりの行く道



 


「俺の望みはまっとうされた。

 感謝するぞ、地球人――」


 

 そう言うと、ブラッドは笛と入れ替わった。


 

「喋りすぎよ……

 喉乾いたし……」


 

 笛は不機嫌そうな態度を見せたが、

 満足そうなブラッドを感じ取り、彼女も少し落ち着いた様子を見せた。


 風も、何かがわかったわけではない。

 けれど、未知の存在のようで恐れていた自分自身を、

 ベーダー星人は“能力者が覚醒した異能の種”と呼んだ。

 

 宇宙規模で見れば、珍しくはあるが存在する希少種。


 自分がそれではないのか――

 “存在があってもおかしくない者”

 だとわかっただけで、満足のいく時間だった。


 

 しかし、ただ1人。

 この中で人生を崩壊しかねない女がいた。


 偽造パスカードの作成と貸与。

 監視官に対する傷害。

 留置室の拘束用椅子2台破損。

 そしてベーダー星人の拘束解除――


 すべての主犯・木庭……


 

「いやあぁぁー!

 わたしだけ犯罪者、いやあぁぁー!

 ベーダー星人も目の前にいるし、怖あぁー!」


 

 騒ぐ木庭に目もくれず、シャンが風へ話しかけてきた。


 

「ブラッド様がわたしたちに生きろとおっしゃった。

 今更抵抗などしない。

 わたしたちの命はお前たち次第だ。

 これからどうすればいい?」


「どうすればって……」


 

 拘束用の椅子がなくなっている。


 

「これを見れば、我々が脱走を試みたと地球人は思うだろう。

 さらに我々の立場は厳しくなると思うのだが――」


 

 残念ながら、風には何も思い浮かばなかった。


 

「木庭……」


「みんな共犯者ーっ!」


「木庭っ」


「そうだわ! ベーダー星人が脱走して、

 全部無茶苦茶にして逃げたってことにしたらいいのよ!」


「木庭っ!

 いい加減にして!」


「はっ!」


「落ち着いて……」


「わっ……わたしは一体……」


 

 笛の一喝が効いたのか、木庭が静かになった。


 

「これからのことを話し合いましょう」


「主犯……主犯は言い出しっぺの笛ちんだからね!

 わた、わたしは脅されてやったことだから!」


「違う……

 今後の彼らの安全を保障する方法を話すの」


「えっ?」


 

 ランブとシャンは、風たちの方を向き直した。


 

「我々は抵抗しない。

 こちらに危害を加えないのなら、地球人の力になろう……」


 

 笛は2体の前に立った。


 

「わかりました。

 それでは明日以降で防星官と面会があった際に、

 わたしと紡時さんに会いたいとおっしゃってください」


「?」


「あの戦いの最後を見ていたのは、紡時さんとわたしだけ……

 わたしたちに、あなたたちの王の最後を聞きたいと、

 その理由を伝えて、わたしたちを呼んでください」


「呼んでどうする?」


「わたしが色々な質問をします。

 それに、あなたたちは素直に答えてくれればいい」


「それで命の保障はされるのか?」


「あなたたちが真摯な態度でいるのなら、

 わたしは支援します……絶対に」


 

 2体は黙った。

 彼らは本当の戦士なのだろう。

 自分たちだけが生き残っていることに、罪の意識を感じている。


 しかし、本心では死にたくない。

 誰だってそうだ。


 死んでも生き返る風だって、

 本当は死にたくないのだから。


 

「会話のどこかで……

 知り得る宇宙の情報を教える――

 日本人の力になる――

 それを言いなさいよ……」


 

 木庭が寄ってきた。

 何か悪巧みをしている顔だ。


 

「上層部が欲しがっているのはその2点。

 あと、他国と繋がりのある侵略者情報を持っていれば完璧!」


 

 呆れた顔をして、笛が木庭を見る。


 

「あなた……

 それを侵略者に堂々と教えるってことは……」


「面会中、どうせその流れに話を持っていくつもりでしょう?

 わたしが前もって教えてあげてるだけ!」


「何を企んでいるの……?」


「だからベーダー星人様!

 今夜侵入してきたことや、椅子を壊したことは一切言わないで!」


「……やっぱり、そうきたか」


 

 そんな木庭に、風が指摘する。


 

「ベーダー星人は拘束し直せるかもしれないけど、

 椅子は直さないと誤魔化しようがないもんね」


「我々は拘束しようがされようが、暴れたりなどしないぞ」


「椅子がないことがヤバいのよ……

 予備の椅子があるから、それを代替に使って、

 監視カメラをいじくって……」


 

 あとのことは木庭に任せよう。

 なんだかんだで、

 木庭なら逃げ切るだろう――


 風と笛はそう思った。


 

 ――――――


 

 その後は、笛の計画通りに話が進んでいった。


 翌日の取調べで、ランブとシャンは風と笛に会いたいと告げる。


 2人との面会が実現すると、

 防星官が見守る中、

 彼らは素直に会話を続けてくれた。


 そして――

 ついに木庭から授かった魔法の言葉を放った。


 

「知り得る宇宙の情報を教える――

 日本人の力になる――

 他国と繋がりのある侵略者情報を提供する――」


 この日――

 日本国家は、日本単独で初めて侵略者と取引を行った。


 極めて健全な取引だった。

 

 こちらから人間や資源の提供はなし。

 ただ、彼らの命を保障するだけの取引。

 

 他国には報告せず、

 他国に知られることのない取引。


 日本は今後の有事の際に向けて、

 自国を守るための情報を急いで集めている。



 ベーダー星人と繋がりを持ったことは、

 国としての大きな転機となった。


 

 彼らの情報によると――


 地球は――

 世界は――


 日本が予想していたよりも、ずっと先に進み、

 汚れていた。

 

 風たち日本人は、防星官、ブレイカーを中心に、

 ベーダー星人の助言を受けながら、

 荒れた宇宙と地球の中を戦い抜いていく。


 

 そして、のちに世界は震撼することになる。


 

 日本には、

 

 異能の種であり、

 死ぬたびに強くなる紡時風と――


 星を狩る者と呼ばれる、

 ベーダー星人の王を取り込んだ虎落笛――



 彼ら2人の力を目の当たりにするのだから。





 

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