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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
オマケ

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40話 敗者の成れの果て



 

 木庭が遅番だったその日――

 それは決行された。


 早番だった笛は深夜に支部へ戻った。

 その笛の横には、風がいた。


 緊急事態に備えて、護衛を頼んだのだ。

 間違っても、防星官仲間にはお願いできない。


 

「わたしの風くんを深夜に連れ出すって、

 何を考えてるのよ!」


 

 帝呼はうるさかったが、

 あなたの風くんではないと一蹴してきた。


 この日のこの時間が1番警戒の薄い時間だった。

 ここしかないと木庭は判断した。


 2人の副隊長はおらず、研究員の遅番は木庭が担当。

 そして監視室の監視担当者が新人だった。


 

「今夜なら可能なのね?」


「……うん。

 監視室の当直が、わたしの後輩で着任したばかりの子だから

 簡単だと思う……」


「あなたのことだから、

 いろいろ心配で仕方ないんだけど……」


「1番心配なのはわたしだよ……

 バレたら始末書なんかで済まないよ、これ……」


 

 3人は監視室へ向かって歩いた。

 


「なんか懐かしいな……」


 

 風がぽつりと呟いた。

 

 以前、ダクネスを倒した時、

 風は危険人物として収監された記憶があった。


 

「あの時は本当にすみません。

 お母様にもお叱りを受けてしまいましたね」


「なんか、懐かしい気分だよ」


 

 そうこうするうちに、監視室の前へ着いた。


 

「紡時さん、これを」


 

 木庭がカードを渡した。


 

「これは?」


「偽造パスカードです。

 これがあれば、支部の中はだいたい動けます」


「あなた……

 これこそバレたら始末書なんかで済まなくない?」


 

 監視室へ入ると、事務室がある。


 

ながれくん」


「あっ、先輩!」


「中、開けてもらってもいい?」


「調野班長のパスカードはお持ちですか?

 かざしてもらえれば、監視所の扉が開きます」


「OKー!」


 

 木庭がパスカードをかざすと、

 奥の扉が開いた。


 

「僕も立ち会います。

 こんな時間の面会は本来は禁止なんですよ……」


「うんうん、ごめんねー」


「あと面会時間は5分です。

 ただ班長からの許可もあるようですし、

 先輩ですから多少の延長は目を瞑ります」


「君は本当にかわいいね。

 今度抱き締めてあげようね」


「……それは結構です」


 

 監視部の流を先頭に、

 3人は監視所へ入っていった。


 

「班長のパスカードって貸してもらえたんだ?」


「貸してもらえるわけないでしょ。

 偽造です……」


「あなた……

 もう引くに引けないことしてるんじゃ……」


「共犯ってことで……お願いね。

 笛ちん……」


 

 流が風へ声をかけてきた。


 

「失礼ですが、駆除班の方ですか?」


「え?」


「僕と同い年くらいなのに……

 強そうだ!」


「そんなこと……ないですよ」


 

 4人は最初に保管室へ入った。

 その部屋には数々の侵略者の遺体や、

 遺留物が保管されている。


 防星官でも滅多に入れる場所ではない。


 その部屋の最奥に、

 溶液の入った大型水槽があり、

 それに沈められた3つの遺体が目に映った。


 ブラッド、ラニーバ、ダクネスの遺体――


 ラニーバとダクネスの遺体は形を成していない部分があり、

 笛は目を背けてしまうほどだった。


 そしてブラッド――

 彼の遺体は頭と身体が風の蹴りによって切断されていたが、

 両方とも綺麗に保管されていた。


 笛と木庭は初めてブラッドの素顔を見ることになる。


 

「……めちゃくちゃ男前じゃない。

 惚れるわ」


 

 木庭が顔を赤めながら呟いた。


 ブラッドは涼しげな美男子といった顔をしている。

 

 風が、その顔で笑顔で来ていたら、

 友達になれたかもしれない。


 以前かけたこの言葉は嘘ではなかった。


 

「……こいつのせいで……わたしの安息の日々がぁ」


 

 どんなに美男子でも、

 その男に怒り狂っている女子もいた。


 

「敗者の成れの果て……」


 

 ブラッドが呟いた。


 戦争に負ければこうなる、

 彼が1番わかっていることだった。


 

「嫌よね」


 

 笛が声をかけた。


 

「勝者がすべてだ……

 勝てば、俺たちがお前たちにしていたことと同じだ。

 負ければこうなる……そういうものだ」


 

 木庭が耳打ちしてきた。


 

「あんな男前が身体の中にいるなんて羨ましい……」


「本当にぶっ飛ばすわよ」


 

 そこで風が流へ質問した。


 

「この遺体から、何がわかるんですか?」


「今回はDNA検査しかできていませんが、

 これからは彼らの記憶を除いていくみたいです。

 この生物の歩みを脳から読み取るんですよ。

 今までの侵略者とは格が違いますから、

 彼らの身体は宝箱ですよ」


「脳からそんなことがわかるんですね」


「そのあたりの仕事は先輩の範疇ですから。

 僕は、その実験体の保管管理をするだけなんで……」


 

 戦いに負ければ、

 風がこのようになっていた。


 そう考えると、背筋が冷えた。


 

「さぁ、監視室にいきましょう」


 

 3人は保管室を後にした。


 

 ――――――


 

 監視室へ向かう中。


 ブラッドが囁いた。


 

「生き残りの2体――

 おそらく、ランブとシャンだと思う」


「なんでわかるのよ……」


「あの2人は戦闘能力は低いが異能の種だ。

 おそらく地球人ごときが殺すことはできない」


「……異能の種?

 一体どんな能力を持ってるの?」


 

 監視室へ着いた。

   

 監視室へ入ると留置室が見下ろせる。

 前回の風がいた場所と同じで、かなり広い部屋だ。


 その部屋の中央の床から、

 兜と鎧をつけたまま、

 手枷、足枷に繋がれた椅子に座らされた

 ベーダー星人2体が出てきた。


 

「やはりランブとシャンか。

 随分と警戒して捉えたのだろうが……

 危機管理が甘いようだな」


「?」

 


 流がマイクをオンにして、

 ベーダー星人へ声をかけた。


 

「もしもーし。

 君たちに会いたいって人が来てるんだ。

 少しくらい話をしてくれないかな?」


「……」


 

 反応はない。


 

「ずっとこんな調子なんです。

 何も言わない、何も食べない、何も反応もしない……

 一応、一日一回の点滴で栄養は取らせてはいるんですけど、

 自死する可能性もあるので目が離せないんですよね」


 

 笛はブラッドとの付き合いがあるからだろうか、

 彼らの考えていることがわかる気がした。


 ――情報を決して自分から開示したりしない。

 

 死んでから、地球人が時間をかけて調べればいい。

 最後まで、戦士としてのプライドを守っている気がした。


 

「彼らが口を開いてくれれば、

 遺体の保管や解析作業の負担も軽減されて

 楽になるんですけどね……」


 

 流がぽつりと呟いた、

 次の瞬間だった――


 

「ランブとシャン、俺だ。ブラッドだ」


 

 マイクを奪い取り、

 笛の身体で、笛の声で、

 ブラッドが留置室の2人へ声をかけたのだ。


 

「!」


 

 固まる風と木庭――


 

「そんなに慌てなくても、

 お話できる時間は用意してますから……」


「黙れ地球人、殺すぞ……」


「へっ?」


 

 ブラッドはもう一度マイクへ口を近付けた。


 

「ブラッドだ――

 2人とも、よく耐えた」


 

 今まで何一つ反応しなかった2人が、

 同時に監視室を見上げた。


 囚われた日以来、

 2人のベーダー星人が初めて動きを見せた瞬間だった。




 

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