39話 捕獲された侵略者
防星省・第6支部――
毎週月曜日の定例ミーティングが行われた。
雷鳥が中心となって進められていく。
そこで先日回収した、ベーダー星人の遺体の
取り扱いに関してと――
捕獲に成功し、厳重な監視下に置かれている
3体のベーダー星人についての話になった。
「研究班班長、調野から報告を」
「はい。
現在回収した遺体からわかったことですが、
彼ら1体ずつから複数のDNAが検出されております。
これは彼ら自身が言っていた――
そもそも単一種として存在しない。
様々な星の生物を掛け合わせ生まれてきたもの――
を意味するものと思われます」
「それはどう考えたらいいのだろう?
1人の地球人に、日本人、アメリカ人、フランス人などの血が混ざっている――
といった考えに近いのか?」
「いえ。
地球人に、
動物、昆虫、植物などが混ざっている――
といった方が近いですね」
全員が息を飲む――
雷鳥は質問を続けた。
「神話などで出てくるキメラ……みたいなものか?」
「そうですね……
地球の科学では、絶対に混ざり合わせられないもの同士を、
混ぜ合わせて生物を作っているようです」
「恐ろしいな……」
調野は続けた。
「回収した兵隊に当たるベーダー星人からは、主に4から6種類のDNAを検出。
ボス個体のダクネスは15種類、ラバーニで13種類のDNAを検出しています……」
「……どんな実験をすれば、そんなものが作れるんだ?」
「ブラッド……
彼に関しては24種のDNAを検出しています」
――沈黙が落ちる。
そんな連中と、自分たちは戦っていた。
そう思うと、恐怖が心を包み込んでくる。
「捕獲した3体はどうしている?」
「1体は傷が深く回収した翌日に亡くなりました。
残る2体は健康状態に問題ありませんが、
一言も発さずです……」
「その2体は貴重な検体だ……
生かし、さまざまな情報を聞きとる。
絶対に死なせるな!」
「かしこまりました」
「あと、遺体の研究は続けるんだ。
わかったことがあればすぐに報告を――
地球の……
いや、この日本の貴重な力となるだろう」
「承知しました」
「……もう世界を信じ――
遅れをとったりなどしない。
この国は、この国で守る」
2回目のベーダー星人襲撃は、
日本を変え、世界の見方を変えるものとなっていった。
世界は認めてはいない。
各国から発表もされていないが、
ベーダー星人の話によると、
大国と呼ばれる国々は、
侵略者と想像以上に深い繋がりを持っているのだとか。
秘密裏に人身売買や資源取引を行い、
大きな力と情報を得ている。
日本は、完全に出遅れていた。
さまざまな侵略者を捕らえてはいるが、
日本の大きな利益になるような侵略者は、今までいなかった。
このベーダー星人が、
この国にとって初めての大きな変革をもたらす存在になる。
そう雷鳥は踏んでいた。
そのミーティングに参加している笛。
彼女の身体の中で、ブラッドが囁く。
「ベーダー星人の遺体を捕獲……初耳だ」
「話しかけないで……」
「遺体には興味がないが……
捕獲されている者に会いたい」
「無理よ……
わたし程度じゃ勝手に入れない場所で監視されてるもん」
「会いたい……」
「無理だって!」
「虎落、どうした?」
独り言を話していると思われたのか、
氷河が不思議そうに尋ねてきた。
「なっ、なんでもない……です」
「また腹でも減って不機嫌になってるのかと思ったぜ。
ファミレスでも行ってこいよ」
一同爆笑――
「あははーっ」
笛は笑顔を取り繕いながら、
ブラッドと氷河への殺意だけを募らせた。
――――――
「だから、仕事中は話しかけんなって言ってるでしょ!
ベーダー星人ってバカなの?」
「お前がいちいち反応しなければいいのだ。
バカなのはお前だ――」
「――カッチーン!」
「なんだその効果音は……
地球人は感情を音で表すのか……
面白い、覚えておこう」
「あぁ!
腹が立つ……どうしてこんなに腹が立つ者が存在するのよ!」
デスクに座りながら、苛立ちを隠せない笛。
みんなが変なものを見る目で去っていく。
「笛ちん」
「あぁん!」
「わたし……わたしだよ!」
横に木庭が立っていた。
彼女は笛とブラッドの秘密を知る、数少ない人物だ。
もし周りに知られたら、笛の人体実験は免れないだろう。
友人としても、それだけは避けたい。
その一心から、
笛のことは木庭と風の3人だけの秘密にしている。
ただ――
エターナルの取り出しを上官に未報告なうえ、紛失。
防星官の体内へのエターナル取り込みに関与。
明るみになると、木庭は一発解雇な上――
とんでもない賠償問題にまで発展する問題を抱えている。
そのため、自分を守るためにも笛を守らねばならないのだ。
何より笛の経過観察はどうしても続けたい。
友人でありながら、
笛が信用しきっていない女――
それが、木庭 奈留23歳だ。
「調野さんの報告書見たよ。
DNAのこと、わたしにも教えてくれなかったんだよ。
ひどい上司よ、まったく!」
「あなたも隠し事いっぱいあるから、責められないよね」
「それ言っちゃう?
まぁ、確かにそれはそうなんだけど……」
「で、何?」
「いやいや……呼んだの笛ちんだよ」
「そうだったわね……」
朝のミーティング後、
笛は木庭に連絡をとっていた。
その理由とは――
「うちの居候がね……
捕獲してるベーダー星人と、自分の遺体を見たいって……」
「えぇ!」
「なんとか会わせてもらえないかしら?」
「むっ無理よ……あそこ、すっごい厳重なんだよ!
わたしなんかの顔じゃ、通してもらえないよ!」
「友達でしょ……?
なんとかしてくれるよね?」
笛の目は据わっていた。
ブラッドが笛の身体の中で、
ずーっと会わせろと言っているためノイローゼ気味のようだ。
その顔を見た木庭は、
「……頑張ってみる」
とだけ呟いて、去っていった。




