4話 希望が折れた
やはり、結果は能力なし――
それは風と周りの期待を、
大きく裏切るものだった。
「ただですね……」
検査員がタブレットを見ながら、
少し違和感がある、と言い出した。
「最近、能力者の方のエナジーを浴びたりしました?
若干のエナジー反応が見られるんですよ……」
「……昨日、治癒の人が俺の身体に触れたからでしょうか?」
「うーん……
マイナスエナジーではないんですよね。
プラスエナジーなので、攻撃されたとか?」
「いえ、ベアルガに襲われたくらいで、
能力者の人と接点はないです」
「そうですか……
何だろうな、この数値……
まぁ気にするほどの数値でもないんですけどね」
首を傾けながら、
検査員が部屋を出て行った。
「なんか……すみません」
風は立ち上がり、雷鳥と虎落に頭を下げた。
「いえ……
私の勝手でついてきただけですから」
そう言いながらも、
雷鳥が肩を落としているのは見てわかった。
「検査結果に間違いはなさそうですね……」
虎落がメガネを外し、
緑色のオーラに染まる目で風を見ていた。
「能力反応なしです。
ただし、先ほど検査員が言った微弱なプラスエナジー以外は見当たりません。
能力名も見当たらない……」
雷鳥は目を閉じた。
「ベアルガ……あなたはどうして倒せたのです?」
虎落の質問に、風は答えられなかった。
その時だ――
――ドーンッ!
市役所の外で、大きな爆発音が聞こえた。
続けて悲鳴――
そして、また爆発音。
市役所自体が揺れた。
みんなは3階の窓から、音のする方向を見た。
「!」
通りを挟んだ向かいのビルから、
煙と火が立ち上っている。
まもなくスマホに緊急避難警報が入る。
ナギはすかさずスマホに目をやった。
「ちょっ!
嘘でしょ! またこの辺に侵略者が出たって!」
雷鳥と虎落のスマホにも連絡が入ったようだ。
「侵略者反応が10体……多いな」
「目の前のあれのことでしょうね」
「だろうな……運がいいのか悪いのか……」
「昨日のベアルガが使ったワープゾーンが原因でしょうか?」
「それは民間のブレイカーが処理したと報告があったはずだ」
「イレギュラーが起こったのかも……」
通行人たちが悲鳴を上げながら逃げていく。
市役所内も避難誘導のアナウンスが流れた。
雷鳥は防星省に連絡を入れ、
緊急出動要請をかけている。
その時、虎落が叫んだ。
「ベーダー!
奴ら……あの侵略者はベーダー星人です、副隊長!」
「ベーダー星人だと!」
雷鳥は慌てて外を見た。
顔色が変わる。
10体の侵略者が、市役所に向かって歩いてきている。
「どうしてこっちに来てるの!?」
「俺のエナジーが原因だろう。
奴らは根っからの戦闘種族だ。
この辺りで最も強いエナジーを見つけて、そこから潰す……
奴らのやり方だ」
「そんな……」
「虎落……俺が奴らを引きつける。
その間に、できるだけ多くの人を避難させろ……」
「無茶です!
増援を待ちましょう!
10分も待てば……」
「10分も待てば……この町から人間が消えている。
忘れるな、奴らはベーダー星人だ」
「……」
「急げ!」
「了解です!」
虎落は雷鳥に一礼し、
市役所にいる人たちの誘導に向かった。
そして、雷鳥は風とナギに目を向けた。
「君たちも虎落について逃げなさい」
「ベーダーって、
まさか、あのベーダー星人ですか?」
「そうだ“星を狩る者たち”のベーダーだ。
奴らに見つかれば殺される。できるだけ遠くへ避難するんだ」
「ベーダー星人は兵隊クラスで、防星官3人相当の強さだって……」
「そうだ……だから逃げろ」
そう言うと、
雷鳥は窓から外に飛び降りた。
――その瞬間。
彼の全身に雷光が走り、筋肉が拡張した。
先ほどまでとは別人のような姿になった。
雷鳥 響の特殊能力。
――雷神。
雷のような速さと力で動き、敵を撃つ。
防星官最強と謳われる能力――
雷鳥は最初から本気だ。
迎え撃つのは10体のベーダー。
人間と同じように二足で歩き、
全身には鎧のようなプロテクターを纏っている。
顔を隠すように歪な兜を被っており、
表情はわからない。
ただ――
中学生の歴史の授業で習うベーダー星人は、
この日本に現れた侵略者の中で、
最も恐れられた存在として書かれている。
150年以上も昔、
奴らの侵略に日本国は対抗できず、
他国の力を借りて何とか追い返したと習った。
防星官3人で、
ようやく1体と渡り合える――
そう教わった。
それが目の前に10体……。
雷鳥1人で相手をすることになる。
勝てる訳がない。
そう思っていた。
ところが――
電光石火の衝撃が走る。
風が瞬きをした、その一瞬で――
3体のベーダー星人が倒れていた。
何が起こったのか見えなかった。
雷鳥は――
想像しているより遥かに強かった。
全身からスパーク音を鳴らし、
突っ込む。
残り7体のうち、4体が雷鳥に向かう。
後方の3体は動かない。
中央の黒いプロテクターを付けたベーダー星人。
あれがボスだろう。
左右の2体は護衛。
そんな分析をしている間に、
雷鳥は4体のベーダー星人も地に伏せさせていた。
電撃にて確実に敵の動きを封じながら仕留めている。
さすが防星官のエース――と、いったところだった。
「お兄ちゃん! いくよ!
早く逃げよ!」
「ナギ、心配いらないかも……
やっぱ雷鳥さん強いわ!
もう7体倒して、残り3体だ。
このまま1人で終わらせるんじゃ――」
――ゴリュッ!
聞き慣れない音が一帯に響いた。
何が起こったのか見えなかった。
護衛の2体が動き出し、
雷鳥の首を変な方向に曲げていた。
雷鳥の身体が、力なく崩れ落ちるのを――
風はただ眺めていた。




