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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
オマケ

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35/48

35話 侵略される日常


 

 笛の自宅マンション――


 

「いい加減にしてくれる……」


「何がだ?」


「鼻から出てくるの!」


「ならどうすれば良かった?

 放っておけば、お前は大ダメージを受け、

 俺の生命にまで実害を及ぼしただろう」


「でも鼻の穴はやめて!」


「わかった。

 では今度は耳の穴から飛び出すことにしよう」


「それも嫌よ!」


「難しいぞ、地球人」


「……」


「では目から出るのか……

 ただ、お前の能力に支障が出るだろう」


「あぁもう!

 2度と出てこなくていいわよ!

 あんなことにならないように、前線には出ないから!」


「……」


「わかった!?

 だから、わたしのことは放っておいて!」


「わかった……」


 

 笛の今までの日常は、

 少しずつ侵略され始めていた。


 有休を取った3日間――

 笛はブラッドとの生活を、

 あの手この手を使って回避しようと試みていた。


 しかし、その努力も報われず、

 現状を確認し合うに留まった。


 

 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚――

 5感は、ブラッドの意思で自由に共有ができた。

 切り離すことも可能。


 その上、ブラッドの意思で、

 笛の身体を多少操作できることがわかった。

 

 ただし、それは笛の力で強制的に反発できる程度の力だった。


 側から見れば、

 笛の身体は完全に乗っ取られたようにも見える。


 ところが――


 笛はブラッドにめっぽう強く、

 ブラッドも笛を支配しようとも思っていないようだった。


 この奇妙な噛み合わせのズレが、

 2人を想像とは違う形のバディへ変えていくことになる。


 

 ――――――


 

「虎落さん、OFFなのに来てくれたんだ」


「はい。

 駅前で新しいお店ができていたので、

 お土産を買ってきました」


 

 数日後、

 笛はOFFを利用して、実家の事務所に顔を出した。

 家族のフォローや、

 風の様子見を兼ねている。

 

 

「虎落さん、体調不良で休んでたんでしょ?

 それにしては……」


「それにしてはなんでしょう!?」


「あっ……うん!

 元気そうで一安心だよ!」


 

 風は思わず言いそうになった言葉を飲み込んだ。

 気の利く男だ。


 しかし――


 

「太ったよね?」


「顔が丸くなっちまったな。

 うまいもんの食い過ぎか?」


 

 狩と帝呼が、

 せっかくの風の気遣いもお構いなしに、

 言葉を刺してきた。


 笛は怒りの反論を見せる。

 


「太ってないわよ!

 訓練も毎日しているし、

 21時以降はなにも食べてないし、

 最近は特に食べる量を減らしてるのよ!」


 怒る笛を見ると、

 さらに揶揄う意地の悪い妹――


「まぁまぁ、そんなに太らないの――

 あっ、そんなに怒らないの――だったわ」


 

 ――ブチブチブチブチッ


 

 血管が切れる音が響く。


 

「帝呼ぉ!」


 

 その時、

 身体の内部で囁く声――


 

「あの男……俺を殺した地球人か」


「!」


 

 その一言に、

 笛が凍りついた。


 

「俺の能力を使い、

 俺を簡単に殺した地球人――

 残念だ。

 奴の身体を研究したかった」


 笛の怒りは、

 ブラッドのその言葉で消え去ってしまった。


 

「あれ?

 もう突っかかってこないの、

 笛ちゃん?」


「……わたしも暇じゃないのよ。

 今日は今から待ち合わせがあるから、

 これで帰るわ」


 そう言うと、

 笛は事務所を出て行った。


 

「なになに?

 本当に怒っちゃったの?」


「虎落さんも忙しいんだな……

 もう少し話したかったよ」


「もう……風くんにはわたしがいるんだから、

 そんなこと、言・わ・な・い・の」


 

 普段と様子の違う笛を気にしながら、

 風は帝呼に抱きしめられていた。


 

 ――――――


 

「なぜ、離れる?

 この後の予定などあるまい」


「自分を殺した相手と……

 一緒にいたくないでしょ?」


「!」


「急に復讐とか言い出して、

 わたしの身体を使って、

 紡時さんを襲ってもらっても困るから」


「バカなことを……」


「気を使ってあげたのに、

 何よその言い方!」


「殺そうとして返り討ちにあったのだ――

 無念ではあるが、恨みなどない」


「……」


「ベーダー星人は星を狩る者と言われている。

 嫌われた集団だ。

 たくさんの星を襲い、

 たくさんの異星人を殺してきた」


「……友好的にって考えがないの?

 あなたたちって」


「ないな……

 兵器目的の実験で作られ、

 捨てられた連中の集まりだ。

 戦うことしか頭にない」


「なんだか……気の毒ね」


「だからこそだろうな。

 殺すことが当然な分、

 殺されることも当然と考えている。

 強いものが勝ち、弱いものは負ける」


「……極端な考え方ね」


「そうか……

 地球人に危機感が無いだけに思うが」


「……それは、

 当たってるかもね」


 

 その時だった――


 

「笛ちん!」


 

 声のする方を見ると、

 木庭が手を振って歩いてきた。


 彼女もOFFのようだが、

 ボロボロの研究着のままだった。


「木庭……

 あなた、いつもその格好なの?」


「えっ?

 これ、よそ行きの研究着よ。

 変かな?」


 

 笛は返す言葉が無かった。


 

「研究用の備品の買い出しなのよ。

 最近研究費が絞られてきて……

 欲しいものも好きに買えないの」


「あなたが求められているもの以外の研究ばかりしてるからでしょ」


「否定はしない」


 

 木庭の提案で、

 2人は近くのカフェに入ることにした。

 

 笛は予定がなくなり、

 時間ができてしまった。

 

 その時間潰しも兼ねている――

 

 木庭は、

 先日の件から笛に対して何かあると踏んでおり、

 今日の出会いはチャンスだと思っていた。


 店員に案内されて、2人は席に着いた。


 そして、

 すぐさま口を開いたのは木庭だった。


 もちろん、

 エターナルを飲んでからの変化について――

 のはずだったが、


 

「あなた、太った?」


「ぶっ飛ばすわよ」


 

 即答だった。


 

「ごめん……

 でもエターナルと関係あるんじゃないかって思うんだけど?」


「なんで変化が“太った”になるわけよ……

 エターナルが、

 そんなしょうもない影響を与えるわけないでしょ!」


「!」


「……何よ?」


「“そんなしょうもない影響を与えるわけないでしょ”

 って言ったわね?

 すると、

 何かもっと大きな影響があったと?」


「ななっ……ないわよ」


「あなた……

 嘘下手だもん。

 やっぱり何かあったわね?」


「……ないってば」


「言ってごらん、メリーゴーラン……」


 

 言えるわけが無い。


 身体に侵略者を宿す人間――

 防星官などいるわけがない。


 もし知られる存在になれば、

 研究材料として扱われる。


 それならまだしも、

 侵略者として扱われる恐れだってある。


 防星官の職は、

 間違いなく弾かれる。


 ――世界でも聞いたことのない例になる。


 だからこそ怖い。


 前例がないということは、

 誰にも正解がわからないということなのだ――

 

 もし前例があったとしても、

 みんなバレないように、

 ひっそりと生きているんだと思う。


 興味津々の目で、

 木庭は笛を見ている。


 笛は呼吸を整え、

 冷静に木庭へ伝えた。


 

「本当に何もな――」


 

 笛が口を開いた瞬間だった。


 ――ボボボボーンッ!


 

「ぎゃあぁあーっ!」


 

 大きな爆発音と共に、

 人々の叫び声が聞こえた。


 ただごとではないと感じ、

 笛と木庭が外へ出る。


 すると、

 駅の反対方向から人々が走って逃げてくるのが見えた。


 

「何かあったみたいだわ!」


「侵略者かな?

 やっぱり家で研究しとけばよかった!」


 

 2人のスマホに連絡が入る。


 

 《血洗市――

 オフィスビルに発生した80cmのワープゾーンより侵略者》


 

「笛ちん!

 80cmくらいなら、

 ブレイカーさんが出動してるよね?」


「イレギュラーがあったと見るべきだわ……

 処理中にブレイカーが襲われたとか」


 道の向こうから、

 大きな影がゆらめいて見えた。


 侵略者が、

 笛たちにゆっくりとその姿を現した。





オマケ話、勢い余って15話も作ってしまいました(笑)


もう少しだけお付き合いください!


残り14話は、約1週間で投稿予定です。


その後は、


『処刑された最強呪術師、魔法世界で唯一の禁忌となる ~鬼を従えし異端の転生者~』第二部


残り55話を、完結まで毎日投稿していきます!


最後までよろしくお願いいたします!

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