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検査結果は能力なし 〜能力なしで死んだ俺は、なぜか今日も死なせてもらえない〜  作者: 鬼喜怪快
オマケ

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34話 地球育ちの宇宙人



 

 防星省・第6支部――


 虎落は公休と有休を使い、

 体調不良を理由に3連休を取っていた。


 今日は4日ぶりの出勤となる。


 

「雷鳥副隊長。3連休もいただき、申し訳ございませんでした」


「大丈夫か?

 大した案件は無かったが、お前がいないと色々と不安だったよ。

 今日からよろしく頼む」


「かしこまりました!」


 

 一礼をし、下がろうとする笛に、

 雷鳥は声をかけた。


 

「虎落……」


「はい?」


「……いや、なんでもない。無理はするな」


「?」


 

 笛はトボトボと、

 自分の部署へ向かって歩いていた。


 すると――


 

「笛ちん!」


 

 木庭がやってきた。


 

「良かった!

 生きてて!」


 

 おそらく、

 半々の確率で死ぬかもしれないと思っていた顔だ。


 

「急に3日も休むからさ……

 何か面白いことでも――いやいや、

 大変なことでも起こったんじゃないかって

 心配してたのよ」


 

 笛は木庭をゆっくりと睨み上げ――


 

「残念ね……。

 なーんの変化もございませんわよ」


 

 そう告げて、木庭と別れた。


 木庭はそんな笛を見て……


 

「これは、何かあったわね……」


 

 友人の目は誤魔化せない。


 

 ――――――


 

「あいつ……俺に電流を流したり、冷凍したり、

 色々とやってくれた地球人だ。

 殺そう」


「ここでは喋らないで……

 仲間を傷つけるわけないでしょ……」


「なぜだ……お前も憎かろう。

 意見は合致している」


「仲間を殺すわけないでしょ……

 あなたの星じゃないのよ」


「しかしテレビというものを見ていると、

 地球人も、なかなか同族同士で

 殺し合っている印象を受けたが……」


「それは一部の悪い人がやってること。

 普通の地球人は、人間を殺したりしないわ」


「……ベーダー星では外に出ると、

 2つ3つの死体は転がっていたものだが……」


「だからここは地球だって、

 言ってるでしょ!」


「!」


 

 気がつけば、

 剛海副隊長が目の前に立っていた。


 

「どうした……

 機嫌が悪いね……

 彼氏と喧嘩でもしたかい?」


「……もっ、申し訳ございません。

 つい大きな声を……」


「体調不良だったんだろ……

 顔色が良くないな……大丈夫なのかい?」


「もうすっかり……

 この通り元気です!」


 

 一礼をし、

 その場を離れようとする笛を、

 剛海は呼び止めた。


 

「虎落……」


「……はい!」


「……少し、太ったかい?」


「はぁ!」


 

 また大きな声を出した。


 

「すまない……

 顔色が悪いのに、

 少しぽっちゃりした気がしてね……

 いや、気のせいだろう。

 お大事にね」


 

 剛海が去っていく。


 笛はベーダー星人を飲み込んでしまい、

 ひとつの身体で同居することになった。


 ただでさえ気が気ではない……。


 それなのに、太った――。


 今の一言に、

 笛はトドメを刺された気がした。


 笛は肩を落としながら、

 部署へ向かおうとすると、

 足が動かない。


 

「!」


 

 その上、

 勝手に首が左へ向いた。


「なに……なんなの?

 身体が!」


「上を見ろ」


「……うえ?」


 

 笛はブラッドに言われた通り、

 天井を見上げた。


 

「!」


「ぎゃあぁぁー!」


 

 天井には、

 1匹のゴキブリが見えた。


 

「あれを食べろ……

 貴重なタンパク源だ」


「ふざけるなぁ!」


「なぜだ……虫だぞ。

 殺し合って奪い合うくらいの食糧だ」


「どんな星よ!」


「取るのだ!」


「イヤァー!」


 その日を境に、

 虎落が変わったと、

 第6支部では有名になった。


 

 ――――――


 

「いいこと……

 勝手にわたしの身体を動かそうとしないこと!

 約束を守って」


「動かしていないだろう」


「足を止めたでしょ」


「止めたのだ、

 動かしてはいない」


「首は動かしたじゃない!」


「細かいな地球人」


 

 笛のイライラは、

 止まりそうになかった。


 すると、

 緊急出動のサイレンが鳴った。


 ――緊急出動、緊急出動。


  

『月鷹市に侵略者出現。

 氷河小隊は直ちに急行せよ!』


 笛の所属する小隊への出動命令だ。


 出動に備えて、

 彼女は慌てて準備に入った。


 

 ――――――


 

 月鷹市のビル工事現場――


 そこに2m級のワープゾーンが発生。

 数体の侵略者の出現が確認されている。


 氷河を隊長とした、

 6名のチームで現地へ向かう。


 目撃者の情報から、

 侵略者はボンドロ星人。


 侵略者の中では危険性の低い者に当たる。


 しかし、

 地球人にとっては十分脅威だ。


 

「虎落、ワープゾーンの分析を頼む」


「ゾーンサイズ1.91m。

 過去の形状やサイズ、光り方と照らし合わせて、

 おそらくボンドロ星人で間違いありません」


「情報じゃ5体目撃されている。

 みんな気をつけろ!」


「はっ!」


 

 本部と連絡を取り、

 ボンドロ星人の足跡を追う。


 笛は分析が仕事だが、

 風に侵略者探しを手伝わされた時、

 数キロ先の違和感を目で追えたことがある。


 それがきっかけで、

 笛は分析能力を応用し、

 侵略者を目で追い始めた。


 分析係は後方支援が鉄則だ。


 だが笛は集中しすぎると、

 前へ出てしまう癖があった。


 

「おい!

 虎落、出てきすぎだっての!

 お前は後方で状況把握してろって!」


 

 氷河が笛を注意した、

 その時だった。


 笛の背後から、

 2体のボンドロ星人が飛び出してきたのだ。


 

「虎落! あぶねぇー!」


「えっ?」


 

 笛が後ろを振り向いた。


 目の前には、

 爪と牙を剥き出しにした侵略者――


 笛は声を上げる間もなく――


 

 ――ブチャッ! ズチャッ!


 

 2体のボンドロ星人は、

 袈裟斬りにされ崩れ落ちた。


 

「!」


「へっ?」


「なに!」


 

 笛はもちろん、

 氷河たちも絶句する。


 

「虎落! 無事なのか?」


「うっ、うん……」


 

 駆け寄る氷河に振り向く笛。


 その彼女の鼻から、

 光り輝く鼻水が伸びていた。


 

「虎落……怪我はないのか?

 お前、ビビりすぎて鼻水が出まくってるぞ!」


「あ……あはは、ごめん。

 ……鼻水とか、恥ずかしいなぁ」


 

 隊員たちが駆け寄ってくる。


 

「虎落、今のどうやって倒したんだ!」


「なんか、光の鞭みたいなのを出して、

 叩き切っていたよな!」


「お前、あんな能力持ってたのか?」


 

 みんなが驚いている。


 笛はこの時、

 驚くのと同時に、

 怒りが込み上げていた。


 ボンドロ星人が襲って来た時、

 倒したのは確かに笛だった……。


 だが正確には、

 笛の鼻水が倒したのだ。


 さらに正確にいうと、

 鼻から身体の一部を出して攻撃した、

 ブラッドが倒したのだった。


 側から見れば、

 超長い鼻水――

 否、鞭に見えたのかもしれない。


 みんなが驚きの声を上げる中、

 笛は小声で囁く――


 

「なぜ――鼻から出たの?」


「身体を勝手に動かすなと言ったのはお前だ」


「!」


「身体を動かせないなら、

 俺が動くしかない。

 さっきは俺が出られる穴が、

 鼻か耳しかなかった」


「……とんでもないところから出るんじゃないわよ」


「安心しろ……

 鼻水がとんでもなく長いくらいで、

 身体の中に俺がいるなど誰も思わない。

 誰も俺の存在に気付いていない……よかったな」


「良くないわぁ!」


 

 みんなの前で、

 笛は絶叫。


 仲間たちは、

 その様にかなり驚いていたようだ。

 

 家に帰ってから、

 ブラッドへは大説教が待っている。


 無事にボンドロ星人を駆除した後は、

 ワープゾーン破壊して任務完了となる。


 隊員たちは、

 笛へ違和感を抱きながらも帰路に着く。



 その後、第6支部では――

 “とんでもなく長い鼻水を垂らしていた”

 と、氷河に言いふらされることになる。



 ブラッドに命を救われた笛だが、

 前途は多難なようだ。





 

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